2022年4月より高校の家庭科の授業で資産形成に関する内容が扱われるようになります。また成年年齢も20歳から18歳に引き下げとなり、親の同意なく証券口座開設やローン契約、クレジットカード作成などができるようになります。若者のお金にまつわる自由度が上がるのです。

制度変更により若年層の金融取引の増加が期待されますが、一方で金融教育の推進や、わかりやすく使いやすい金融サービス提供など、教育機関並びに金融機関には課題も多くあります。

今回はこれから投資を始める世代の方々に向けて最初の準備として、投資を始める際の心構えについてお話ししたいと思います。

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まずは短期の目標を立ててみよう

授業では、投資の仕組みや始める意義などの知識を付けることができると思いますが、「言うは易く行うは難し」という言葉があるように、座学と実学は大きく異なります。実際に行動するには「なぜやるか」の理由が必要でしょう。

特に安定した収入がない学生にとって、貴重なお金を投資に回すというのは勇気がいる行動です。いまを楽しむために消費にお金を使いたいという気持ちもあると思います。

そこで、初心者には下記の3段階でのサイクルを回してみることを提案します。

(1)金額目標を立てる
(2)継続する
(3)投資で貯めたお金を使ってみる

目標と言っても数十年単位の長いものではなく、数年で達成可能なものをおすすめします。なぜなら、若いうちに投資を継続して目標を達成するという体験が重要だからです。

例えば大学生が「卒業旅行の資金を約3年間の毎月つみたて投資で貯める」という目標を立てて実行するといったケースを考えてみましょう。この場合は、旅行に必要な費用を算出し、それを実現するため毎月のつみたて額を決めて3年間実行、必要額が貯まったタイミングで一旦投資を終了するという流れが想定されます。

一見「3年間でやめてしまうのはもったいないのではないか?」と思うかもしれませんが、本来投資は何らかの目標に対する手段として行われるべきです。一般的には老後の資金を貯めるために、長期でコツコツとつみたてましょうと言われがちですが、そうすると、資産を現金化して投資成果を実感するタイミングが老後を迎えるまでなく、投資をしているという実感が得にくいのではないかと筆者は考えます。

この例のように3年間など短い期間の場合は、もちろん複利の効果も小さく、場合によっては元本割れとなって終わる可能性も考えられます。しかし、目標に対してつみたて投資をやり切った達成感や、投資をすると損益が発生するという実感が得られます。この経験を学生時代に体験することは、社会人になって以降、ライフイベントや老後の資金形成のための投資に前向きに向き合えるきっかけとなるのではないかと思います。

証券口座、選び方のポイントは?

投資を始めるには、証券口座が必要です。始める決心がついたら、証券口座を開設してみましょう。開設には必要項目を入力し、マイナンバーと本人確認ができる書類を登録する必要があるので、書類を用意しておきましょう。

いざ選ぶ段階になると「証券口座がいっぱいあって選ぶことができない!」となってしまいがちですが、証券口座にもそれぞれ特徴があります。先に述べたように、目標が明確になっていれば、自ずとどういったサービスが自分にあっているかもわかってくるでしょう。

証券口座を選ぶ際のポイントですが、ネット証券最大手の『SBI証券』、楽天経済圏でポイント運用にも力を入れている『楽天証券』など、知名度の高い証券会社から始めるのがスムーズかもしれません。ネットの証券会社はスマホやPCから簡単な手続きで証券口座開設ができるほか、大手の場合は取扱商品や機能も豊富であり、幅広いニーズに対応している強みがあります。

また最近では特徴的な機能を持ったサービスも続々と出てきています。LINEアプリから株取引ができ、少額から始められる『LINE証券』や、コミュニティ機能で投資家同士での意見交換ができ、従来型の取引手数料が無料の『STREAM』などが挙げられます。特に若年世代の方々には少額から始められる、手数料がかからないといった点は魅力に映るのではないでしょうか。

さらに、実際のお金で始める勇気がないという場合には、仮想の環境で株取引の練習ができる、『トレダビ』や『株たす』などのサービスでまずは遊びながら始めてみるというのも良いでしょう。

証券口座を開設すると情報も多く手に入るようになります。始めるタイミングは先だとしても証券口座の検討だけ先に進めておくと、知識習得の観点でプラスに働くかもしれません。

ニュースを見る+基礎知識の習得で好循環を

最後に、知識取得のポイントについてです。投資を始めてみると、日々の相場の値動きやニュースに関心が出てくるでしょう。これはとても良いことで、社会の動きへの関心が高まることは投資だけでなく、社会人としての行動にも良い影響を与えるでしょう。

日々の値動きは教科書通りとならないことがしばしばありますが、日々のニュースに対する価格の変動を理解するには、教科書的な仕組みを理解することがとても重要です。理論的にはこういう動きをするというのを把握した上で、実際にその通りになっているか、はたまた異なる動きをしているのかを考察することが重要だからです。つまりニュースを見るだけでなく基礎的な知識を習得も必要で、知識が蓄積すればするほど、長期的にニュースへの理解も深めることができます。

まずは始めてみる、じっくりと知識を付けてから始める、考え方は人それぞれでありますが、どちらにせよ基礎的な知識を日々アップデートしていくことは極めて重要です。社会人になってからだとなかなか時間が取れなくなってしまうため、比較的時間のある学生時代から基礎知識を身に着けることは"自己投資"の観点でもメリットが大きいと言るでしょう。

早くから投資を始める環境があるというのは、もう大人になった立場からすると羨ましく思います。このような制度変更をきっかけに投資のすそ野はますます広がっていくのではないでしょうか。