「旅は道連れ世は情け」は、人が助け合うことの大切さを意味することわざです。しかしきちんとした意味を理解できている人は少ないのではないでしょうか。

本記事では「旅は道連れ世は情け」の意味や由来をわかりやすく解説。「袖振り合うも他生の縁」との違いや、欲ある間違い、類語や英語表現も紹介します。

  • 「旅は道連れ世は情け」の意味は?

    「旅は道連れ世は情け」の意味や使い方、外国語の表現をご紹介します

「旅は道連れ世は情け」の意味と読み方とは

読み方は「たびはみちづれよはなさけ」です。

「旅をする時は、一緒に旅をする道連れ・同行者がいると心強いように、世の中を渡っていくには情けを持って仲良くやっていくことが大切」といった意味があります。

他人との関わりには、人情を持ち、お互い助け合うことが大切だということを伝えています。人と人との関わりが薄くなりがちな現代だからこそ、覚えておきたい言葉でしょう。

「旅は道連れ世は情け容赦なし」は誤り

「旅は道連れ世は情け容赦なし」という言葉を「旅は道連れ世は情け」と関連した言葉だと思っている方もいるかもしれません。しかし、「旅は道連れ世は情け容赦なし」は基本的には誤った使い方となります。

「旅は道連れ世は情け容赦なし」は、「旅は道連れ世は情け」の「情け」に「容赦なし」をつけて組み合わせて作られた言葉です。

「情け容赦なし」の「情け容赦」は「なさけようしゃ」と読みます。「情け容赦」の意味は「情をかけ許すこと、寛容にすること」となり、「情け容赦なし」となると「振る舞いや行いに情もなく人道的ではない」という意味になります。

助け合うことの大切さ、人の情を説いている「旅は道連れ世は情け」にまったく意味の違う「情け容赦なし」をつけることで、「世の中は思いやりがなくとても厳しい、無情だ」といった皮肉めいた意味合いとして使われているのです。

こうした皮肉表現は他にも、「昨日の敵は今日の友」が変化した「昨日の敵は今日も敵」、「渡る世間に鬼はなし」が変化した「渡る世間は鬼ばかり」などがあります。

由来は江戸時代の『東海道名所記』

このことわざの由来は、浅井了意(あさいりょうい)著の『東海道名所記(とうかいどうめいしょき)』にある記述です。

「東海道名所記」は江戸時代に書かれたものですが、この時代の旅は現代よりも旅先についての情報量が少ない状況で行くもので、電車など公共の交通機関もありませんでした。そういった状況での一人旅はとても不安で厳しいもので、同行者がいることは大きな心の支えになっていたのでしょう。

「旅は道連れ世は情け」は厳しい旅を経験する際に、助け合うことの大切さを説いた言葉なのです。

  • 「旅は道連れ世は情け」の意味は?

    「旅は道連れ世は情け」の意味や由来をしっかりと理解しましょう

「旅は道連れ世は情け」の使い方・例文

「旅は道連れ世は情け」は、2つのシーンで使用することができます。

一つ目は実際に旅先で使用するシーンです。

・「旅は道連れ世は情け」といいますから、ここからはご一緒しませんか?
・旅先で仲良くなれたのも何かのご縁。「旅は道連れ世は情け」で、ぜひ食事でもしましょう

「旅は道連れ」の意味そのままで、旅先で仲良くなれた相手に使うケースです。「見知らぬ同士が旅先でせっかく仲良くなれたのだから、このご縁を大切にしましょう」という意味合いで使います。

二つ目は日常の事柄に対して使う場合です。

・「旅は道連れ世は情け」というのだから、どんな相談でも受けるよ
・まさに「旅は道連れ世は情け」で、これからもずっと仲良くしよう

こちらは実際に旅に出ているわけではありませんが、旅を人生に例えていて、「人は助け合うことが大切、人情が重要」という意味で使っています。

また、「旅は道連れ世は情け」は「旅は道連れ」だけで使うこともできます。意味も、「旅は道連れ世は情け」と同じです。

  • 「旅は道連れ世は情け」の使い方・例文

    「旅は道連れ世は情け」の使い方をマスターしてください

「袖振り合うも多生(他生)の縁」との違い

「袖振り合うも多生(他生)の縁」という言葉は、「旅は道連れ世は情け」と似たような意味として理解している人もいるかもしれません。しかし、意味を知るとまったく違った言葉ということがわかります。

「袖振り合うも多生 (他生) の縁」の読み方は「そでふりあうもたしょうのえん」です。「道でたまたま知らない人と袖が触れ合うようなことも、前世からの因縁である」という意味があります。この言葉は、仏教の「輪廻転生」という教えから生まれました。

「たしょうのえん」は、正しくは「多生の縁」と書きます。「他生」でも誤りではありませんが、こちらは俗語表現となるため、「多生」とした方がよいとされているようです。また、「多少の縁」と書くのは完全な誤りとなりますので注意しましょう。

「旅は道連れ世は情け」の類義語・言い換え表現

「旅は道連れ世は情け」にはいくつか似たような意味を持つ言葉がありますので、こちらも一緒に覚えておきたいです。

旅は情け人は心

読み方は「たびはなさけひとはこころ」。「旅をしている時は人の情けが何よりもありがたく感じられる。また、人は心の持ちようが何よりも大切である」という意味です。

「旅は情け人は心」と同じ意味のことわざには、「旅は心世は情け」「旅は人の情け」があり、いずれも同じ意味で使うことができます。

  • 「旅は道連れ世は情け」の類義語

    「旅は道連れ世は情け」の類義語は「旅は情け人は心」

「旅は道連れ世は情け」の対義語

反対の意味を持つ言葉も一緒に覚えると、さらに言葉の意味を理解できます。「旅は道連れ世は情け」の対義語となる言葉をみていきましょう。

孤立無援

読み方は「こりつむえん」。「仲間がいなくてひとりぼっち、頼るもの、助けのないさま」という意味です。「無援」には、「助けがないこと」という意味があります。

孤軍奮闘

読み方は「こぐんふんとう」。意味は「支援してくれるものがないなか、一人で一生懸命に努力すること。または、孤立した少数軍勢でよく戦うこと」です。「孤軍」に「孤立した少人数の軍勢」といった意味があります。

「旅は道連れ世は情け」が「人の情けの重要性」「一人ではなく誰かと一緒に協力することの大切さ」といった意味があるため、「孤立して誰の助けもない」という意味のある言葉が対義語になります。

  • 「旅は道連れ世は情け」の対義語

    「孤立無縁」「孤軍奮闘」が対義語

「旅は道連れ世は情け」の英語表現

「旅は道連れ世は情け」を英語で表す場合、そのまま直訳をしてもまったく違った意味になってしまいます。ここでは、似たような意味で使える英語のことわざを紹介します。

・An agreeable companion on the road is as good as a coach

「よい道連れは馬車も同然」という意味があります。仲間の大切さを意味するため、「旅は道連れ世は情け」と似たような意味といえるでしょう。

・When shared, joy is doubled and sorrow halved

意味は「分かち合えば喜びは倍増、悲しみは半減する」。分かち合える人、助け合える人がいれば、楽しみは倍増するし悲しみは半分で済む、という意味のことわざです。友情、仲間の大切さを説いている部分で、「旅は道連れ世は情け」と似たような意味だと考えることができます。

  • 「旅は道連れ世は情け」の英語表現

    「旅は道連れ世は情け」の英語表現も覚えておきたいです

「旅は道連れ世は情け」の意味を理解して使いこなそう

昔の旅は、情報があふれている現代の旅と比べ、知らない土地に行くというだけでとても不安なものでした。そういった背景から、同伴者のいる旅はとても心強いという意味の「旅は道連れ世は情け」ということわざが生まれました。

旅を人生に置き換えることで、人生において助け合いが大切だといった意味としても使うことができます。また、このことわざは「旅は道連れ」だけで使っても同じ意味として使えます。

ことわざの意味をしっかり理解して、「旅は道連れ世は情け」を使ってみてください。