インターネットイニシアティブ(IIJ)は1月18日~21日の4日間、インターネットの最新技術動向や、同社の最新情報などをエンジニア自身が語る講演会「IIJ Technical WEEK 2021」を開催した。今年も昨年と同様、全講演がオンライン配信というかたちでの実施となった。最終日となる21日の講演内容をダイジェストでご紹介しよう。

  • IIJ Technical WEEK 2021

IIJの新入社員はこうして鍛えられる!

最初のセッションは「IIJ Bootcamp 2021 ~IIJがNew Commerに伝えたいこと~」と題して、IIJ プロダクト本部の藤本椋也氏が講演を行った。

  • 普段はWebサービスを手掛けているというIIJ プロダクト本部 応用開発課の藤本椋也氏

Bootcampとは軍事用語で新兵教練のこと。つまり新入社員教育のことを指しているが、IIJでは2019年より、8~9月に、現役エンジニアを講師として、この名前で大規模なハンズオン研修を行なっている。これは「エンジニアたる者、手を動かしてナンボ」という思想のもと、「浅く広く」をテーマに、部署では触らないツールも含めてインフラからDB、サーバーアプリ、フロントエンド、セキュリティまで一通り触れるビギナー向けの研修となっている。

これまで3回実施されてきたBootcampだが、毎年内容が流行や必要性に合わせてアップデートしており、一通り受講すれば最前線に飛び込める内容となっている。全体として非常に興味深く、筆者もぜひ受講してみたいと思わせる内容だった。IT系は技術が多岐に渡るため、新入社員教育はどこも苦労しているのではないかと思うが、IIJ Bootcampの資料についてはGithubに公開されているので、ぜひ参考にしてみてほしい。

スペシャリストとジェネラリスト、どちらがいい?

第2セッションでは「IoTに関わるということを、人材の観点から語ってみる」と題して、IIJ プロダクト本部長 兼 IoTビジネス事業部 副事業部長 兼 アグリ事業推進室長の齋藤透氏が講演を行った。

  • IIJ プロダクト本部長 兼 IoTビジネス事業部 副事業部長 兼 アグリ事業推進室長と、3つもの肩書きを持つ齋藤透氏

齋藤氏はIIJではIoTおよび農業関連事業という、IIJにしてはちょっと変わったビジネスに取り組んでおり、さらに中部電力と共同でIoT関連のネコリコという会社の起ち上げにも関わっている。

齋藤氏は入社時、周囲にスゴいスペシャリストが多く、自分はそこには入れないと思ったという。一方でマネジメントやドキュメンテーション、企画立案やプレゼン、人脈作り、特定領域にフォーカスした業務知識などに幅を広げていった結果、現在のようなIIJの中でも他にないキャリアパスを得ることができたという。

特にIoT関連事業を進める上では、その機器が使われる特定業界の知識が必要になり、そこにIIJで培った経験やスキルを加えることで、スキルセットの面積を広げることができる。こうして生まれた「何でも知っている圧倒的なジェネラリスト」というキャリアパスもアリなのではないかと齋藤氏は唱えた。その後、IoTビジネス事業部の3人のスタッフから体験談などが紹介された。

  • IoTではさまざまな経験や知識を掛け合わせたジェネラリストが強みになると指摘

  • 上から、農業経験はIIJ随一と自負するIIJ IoTビジネス事業部 技術部 プロダクトソリューション課 課長代理 兼 アグリ事業推進室の花屋誠氏、美容師出身というIIJ IoTビジネス事業部 技術部 プロダクトソリューション課の寺井優太氏、新卒2年目ながらさまざまな現場に赴いているIIJ IoTビジネス事業部 営業部 営業課の森脇千裕氏

技術者はついスペシャリストになろうとしがちだが、一つの技術を狭く深く知るスペシャリストもいいが、さまざまなジャンルを広く浅く知るジェネラリストにも、スペシャリストに劣らない価値がある。そうしたことを再確認できるセッションだった。

  • IIJでは農業関係事業を「MITSUHA」というブランドで展開中だ

隣の芝は青い? IIJとサイボウズはどう違う?

最後のセッションは「スペシャルトーク Youは何しにIIJ/サイボウズへ?!」と題して、IIJ 基盤エンジニアリング本部 ネットワーク技術部 ネットワーク運用課 糟谷朋広氏と、サイボウズ 浅野貴大氏が対談形式でのトークを行った。

実はIIJとサイボウズは、社員に異なる組織経験をさせるため、相互にエンジニアを出向させる試みを行っている。現在の両氏におかれては、サイボウズ側から糟谷氏が、IIJ側から浅野氏がそれぞれ出向している状態となっている。

  • IIJ 基盤エンジニアリング本部 ネットワーク技術部 ネットワーク運用課 糟谷朋広氏と、サイボウズ 浅野貴大氏。浅野氏はIIJ 「バリーくん」の生みの親でもある

対談内容は互いの企業風土の違いなど多岐にわたっており、非常に興味深いので、ぜひ動画で見ていただくとして、こうした企業間の出向というのは、社員だけでなく組織としても刺激を受けるために、好ましいのではないかと思わせるものがある。相手を選ぶ必要はあると思うが、思い切って全く違う業界・業種も含めて、導入を検討してみる価値のある制度ではないだろうか。

IIJ Technical WEEKは、IT系エンジニアの方はもちろん、エンジニアを目指す学生やIT系技術に興味のある方、他業種の仕事ぶりを参考にしたい方などにおすすめしたいイベントだ。各セッションは録画でも確認できるので、ぜひチェックしていただきたい。