明暗を分けた開幕局
2021年のタイトル戦名勝負総決算、本日は第34期竜王戦七番勝負。豊島将之竜王に藤井聡太三冠が挑戦したシリーズです。昨年のタイトル戦における豊島―藤井戦はこの竜王戦が3度目でした。藤井はランキング戦2組で優勝(初参加の6組から2組まで、過去のランキング戦で敗北は一度もありません。このことがまず驚異的です)し、決勝トーナメント進出。これまでの4期では決勝トーナメントで敗戦の憂き目を見ていたわけですが、今期はこちらでも無敗のまま、挑戦権を獲得しました。
■辛抱が呼んだ逆転
七番勝負の第1局は藤井の先手で相掛かりに。中盤で藤井の疑問手に乗じた豊島が機敏な仕掛けを見せてリードを奪います。対して藤井は「苦しくなってからは粘れそうな順を選んでいたつもり」と振り返っています。この粘りが功を奏したか、豊島は局面に自信を持てずにいたようです。そうした状況で指された△7七飛成と角を取った手が失着になりました。飛車角交換の後に△8九飛成と敵陣に飛び込めて好調のようですが、飛車を渡したために▲7一飛が痛打となりました。以下も難しい局面は生じましたが、最後は藤井が辛勝。結果的にはこの第1局がシリーズの明暗を分けたように思います。
第2局は先後を入れ替えて、再度の相掛かり。豊島が9筋から行った端攻めを藤井が逆用する形で反撃を決めて勝利します。続く第3局は角換わりに。終盤での▲3一銀~▲2二角が話題を集めた攻め筋で、藤井が一気に3連勝を決めました。
■4連勝で藤井が竜王奪取
第4局は再びの角換わり。こちらは最終盤での超難解な二択が運命を分けました。108手目の△5五同角の局面、実戦の▲3五桂に代えて▲5五同銀ならばあるいは豊島が勝っていたかもしれません。ただ勝負にタラレバはなく、そして▲3五桂に敗着の烙印を押せたのも藤井の力があってこそです。
かくして藤井新竜王が誕生し、四冠となりました。そして五冠目を取りに、現在は王将戦で渡辺明王将に挑戦中。こちらでも2連勝スタートです。また第35期竜王戦は現在ランキング戦が進行中。1組の初戦でいきなり渡辺―豊島という好カードが実現し、持将棋指し直しの末に渡辺が勝っています。まだまだ先は長いですが、藤井竜王への挑戦権を獲得するのは誰になるのでしょうか。
相崎修司(将棋情報局)