今年もいろいろな新型車が登場する予定だ。その中からひと足先に、フランス生まれの先行生産車に相次いで乗ることができた。トヨタ自動車「カローラ」やフォルクスワーゲン「ゴルフ」などと同じCセグメントに属する注目のフランス車を2回に分けてご紹介したい。まずはルノー「アルカナ」だ。
注目のフランス車に先乗り!
まだ始まって間もない2022年だが、すでにレクサス「LX」やトヨタ「ノア/ヴォクシー」といった注目のクルマが発売となっている。春にはホンダ「ステップワゴン」が登場予定だ。
輸入車では個人的に、トヨタ「カローラ」やフォルクスワーゲン「ゴルフ」などと同じCセグメントに属するフランス車が気になっている。具体的にいえばルノー「アルカナ」とシトロエン「C4」「E-C4エレクトリック」だ。
シトロエンの2車種はハッチバック、ルノーはクーペSUVとパッケージングは異なるものの同じCセグメントに属し、E-C4は電気自動車(EV)、アルカナはハイブリッド車(HV)と電動化にも対応している。
以前からフランス車を積極的に取材してきた筆者は、2021年秋から年末にかけて、これらニューモデルの先行生産車に試乗できた。デザインから走りまで、日本車やドイツ車とはひと味違うフレンチテイストにあふれたクルマたちだった。C4/E-C4は別稿で取り上げることとして、まずはアルカナについて見ていきたい。
プレミアム以外で初の輸入クーペSUV
アルカナのスタイルは、SUV人気が定着する中で生まれた新しいボディタイプ「クーペSUV」だ。ドイツのメルセデス・ベンツ、BMW、アウディが主役だったジャンルで、アルカナはプレミアムブランド以外では初のクーペSUVになる。
しかも、日本仕様のパワーユニットは「フルハイブリッド」(HV)。プラグイン(PHEV)でもマイルド(MHV)でもないハイブリッドを搭載するのは、輸入車では珍しい。
日本発売前なので欧州仕様の数字を出すと、ボディサイズは全長4,568mm、全幅1,821mm、全高1,576mm、ホイールベース2,720mm。日本車ではトヨタ自動車の「C-HR」と「ハリアー」の中間、フランス車ではプジョー「3008」に近い。
エクステリアではまず、クーペSUVらしいきれいなルーフラインに目が行く。最低地上高は200mmも取られているが、長めのホイールベースやワイドな幅のおかげで腰高には見えない。
インテリアにはカーボンパネルや赤いストライプが施され、シートは一部にアルカンターラを奢るなどスポーティーな仕立て。これは試乗車がルノースポールのエッセンスを盛り込んだ「R.S.ライン」だったからで、日本で発売されるグレードはこれになる可能性が高い。
感心したのはリアシートで、身長170cmの筆者が楽に座れる。座面を低くしたりしていないので自然な姿勢が取れるし、ルーフに頭が触れることもない。スタイリッシュなフォルムを持ちながら、実用性を犠牲にしないところがルノーらしい。
搭載するHVシステムは、F1のパワーユニットを参考に設計したとのこと。1.6リッター直列4気筒自然吸気エンジン、2つのモーター、エンジン4速+メインモーター2速で15通りのモードを持つトランスミッションからなる。欧州では電気自動車(EV)やPHEVも展開しているルノーだが、HVはディーゼル車の代わりとして開発したそうだ。
車両重量は1,435kgと、ひとまわり小柄なC-HRのHVと同等。対するパワーはシステム全体で143psなので、力は十分だ。しかもメカニカルなトランスミッションを使っているので、加速や変速などはダイレクト感にあふれる。一部のHVにあるファジーな感じはなく、走りを楽しめるHVになっていることに感心した。
乗り心地は、重さのおかげもあって落ち着いている。驚いたのはハンドリングで、腰高感はなく、ハッチバックに近い安定感とともに曲がっていける。このクラスのSUVとしてはホイールベースを長く、トレッドを広く取ったおかげだろう。
気になる燃費は現地のカタログ値でリッター20.8kmと、輸入車のSUVとしては異例のリッター20km超え。しかも、PHEVとは違い充電の必要はなく、走りはルノーならではの楽しさにあふれている。SUVシーンに一石を投じる存在になりそうだ。