自玉の安全を確保して勝ち切る
2021年のタイトル戦名勝負総決算、本日は第69期王座戦五番勝負。永瀬拓矢王座に木村一基九段が挑戦したシリーズです。藤井聡太竜王の活躍を筆頭に、若手優位を言われる現在の将棋界ですが、王座戦のベスト4に残った棋士のうち、3名が40代以上。挑戦者決定戦は佐藤康光九段―木村九段戦という重厚なカードでした。
五番勝負の第一局は永瀬王座の先手で、角換わりに進みました。序中盤では永瀬王座が押していましたが、終盤で致命的な見落としがあり逆転、木村九段が先勝します。
■早逃げが好手順で流れをつかむ
続く第2局は木村九段の先手で、相掛かりとなりました。優劣不明の戦いから終盤となり、お互い敵陣に成り駒を作っています。そうして迎えた80手目の局面、後手はと金で先手の金を取ることができますが、取れる金を取らずに△4二玉としたのが「玉の早逃げ八手の得あり」の格言通りの好判断でした。以下▲7三歩成△3四歩▲7二と△3三玉の進行は後手が逆に金を一枚取られていますが、こうなると後手玉が全く安全になっています。そして先手陣の金はいつでも取ることができるので、後手が攻めに困ることはありません。80手目の局面で金取りを急ぐ△7八とは▲7三歩成が厳しく、そこで△4二玉と早逃げしても▲5二飛と強引に引き戻す順があって詰まされてしまいます。これは3筋の脱出口がまだ開いていないのが大きいのです。
△3三玉の局面は、形勢はまだ難しいようですが、木村九段はこの時点で悲観していたそうです。対して永瀬王座は攻めに転じてから、着実に押し切りました。前局の悪い負け方をここで払拭できたのが大きかったのではないでしょうか。第3局は木村九段が優位に進めましたが、終盤の入り口で疑問手があり、それを悲観し過ぎたせいか以降の局面で粘りを欠き、永瀬王座の逆転勝利となりました。そして第4局も永瀬王座が勝利して、防衛。王座戦は3連覇となりました。
永瀬王座は虎の子のタイトルを守ったあと、棋王戦で挑戦権を獲得し、2月6日から始まる渡辺明棋王との五番勝負へ臨みます。そして節目の70期を迎える新たな王座戦は現在二次予選が進行中。16名で争われる本戦トーナメントは4月下旬あるいは5月上旬に始まりそうです。前期のようにベテランが奮闘するか、それとも新星が活躍するか、注目です。
相崎修司(将棋情報局)