「憶測の域を出ない」「憶測でものをいう」といった表現を、聞いたことがあっても実際にどのように使えばよいかわからないという方もいるでしょう。

この記事では、「憶測」の意味や使い方について解説します。類語や、よく似た言葉「推測」との違い、英語表現などについても紹介しますので、参考にしてみてください。

  • 「憶測」の基本的な意味

    「憶測でものをいう」前に、「憶測」の意味や使い方を理解しましょう

憶測とは

憶測は「おくそく」と読みます。それではどのような意味なのでしょうか。

憶測の意味は「自分で勝手に推し量ること」

憶測には「自分で勝手に推し量ること」の意味があり、根拠なく、いい加減に推量することをいいます。「憶」と「測」の漢字の意味を確認しましょう。

  • 憶(臆): あれこれ思いを巡す、推し量る
  • 測: 予想する、推し量る

つまり「憶測」とは、似た意味の言葉から成り立っていることがわかります。

憶測でも臆測でもよい

憶測は「臆測」と書くこともできます。以前は憶測とするのが一般的でしたが、2010年に「臆」が常用漢字となったため、現在は「臆測」も「憶測」もどちらの表記も使うことができます。

  • 「憶測」と「臆測」に関するマメ知識

    「憶測」は「根拠がないのに推し量ること」をいいます

憶測・推測・予測の意味の違い

憶測と見た目も意味もよく似ている「推測」「予測」について解説します。どちらも憶測とは若干ニュアンスが異なるので、正しい意味を理解して使い分けられるようにしましょう。

憶測と推測の違いとは

まず、憶測と推測の意味を並べて比べてみましょう。

  • 憶測: 自分で勝手に推し量ること
  • 推測: 得た知識や情報をもとにして、推し量ること

憶測は「根拠なく、いい加減に」という意味があるのに対して、推測は「得た知識や情報をもとにして」という意味があります。つまり憶測と推測とは、根拠となるものがあるかないかで使い分けることができるというわけです。

以下、例文です。
「この空き地に何ができるのか、憶測が飛び交っている」
「彼はいつもスーツを着ていることから、営業職であると推測できる」

憶測と予測の違いとは

ここでもまず、憶測と予測の意味を見比べてみましょう。

  • 憶測: 自分で勝手に推し量ること
  • 予測: 得た知識や情報をもとに、将来の見通しを推し量ること

ここでも、根拠となるものがあるかないかで使い分けることができます。また、予測は予想などと違い、具体的なデータなどに基づいて使われることが多い言葉です。

以下、例文です。
「彼がいなくなってしまった以上、動機は憶測するほかない」
「過去10年の気象データから、台風の進路を予測する」

推論や推察も、根拠となる知識や情報があるときに使う

推測や予測に似た言葉に、推論や推察があります。これらも憶測と違い、「根拠となる知識や情報をもとに論じる、察する」という意味です。憶測とは意味合いが異なりますので覚えておきましょう。

  • 「憶測」の類語は意味によって変わる

    「憶測」と「推測」の違いは、「根拠があるかないか」です

憶測の使い方・例文

憶測の例文をいくつかご紹介します。下記に挙げるように、憶測は慣用的な表現で使われることが多くあります。

憶測が飛び交う

ある出来事に対して、その背景をまったく知らない人々があれやこれやと想像を巡らせることをいいます。「社長の退任について、さまざまな憶測が飛び交っている」などと使います。

憶測の域を出ない

ある出来事に対してあれこれと意見が挙がったとしても、確実な根拠がなくどれも信用できないという意味です。「事故原因について多くの意見が出ているが、どれも憶測の域を出ないものばかりだ」などと使います。

憶測でものをいう

根拠がないにもかかわらず、あれやこれやとまるで真実であるかのように話すことを言います。「憶測でものをいうのはやめなさい」などと使います。

憶測を生む・憶測を呼ぶ

ある出来事をきっかけに、根拠のない意見が多く出回ることを「憶測を生む」「憶測を呼ぶ」と言います。「彼の死はさまざまな憶測を生んだ」「その会社の倒産が、多くの憶測を呼んだ」などと使います。

  • 【例文】「憶測」の使い方

    例文を覚えて正しく使えるようにしましょう

憶測の類語・言い換え表現

憶測の類語は推測や予測のほかにもあります。いくつか見ていきましょう。

忖度(そんたく)

忖度とは「人の気持ちを推し量る」という意味の言葉です。忖度は2017年の流行語大賞に選ばれたこともあり、聞いたことがあるという人も多いでしょう。「根拠なくいろいろと思いめぐらす」という意味で、憶測と似た意味になります。

見做す(みなす)

見做すとは「そうでないものを、仮にそうだと決める」「こうであると判断して決める」という意味の言葉です。「返信のない方は、欠席だと見做します」のように使います。

当てずっぽう

当てずっぽうは「当て推量」が由来だとされています。この「当て」とは「将来の見通し、見込み」のことで、つまり当てずっぽうとは、「将来の見通しをいい加減に思いめぐらせること」という意味です。

揣摩憶測(しまおくそく)

あまり聞き慣れないかもしれませんが、「揣摩憶測」という言葉もあります。「揣摩」とは「他人の気持ちなどを推し量る」という意味です。勝手に想像し、あれこれ意見をいうことを「揣摩憶測が飛び交う」などと表現します。

憶測の対義語は、断定、熟考、吟味

憶測の対義語には、断定、熟考、吟味といった言葉が挙げられます。意味はそれぞれ、以下のとおりです。

  • 断定: 物事にはっきりと判断をくだすこと
  • 熟考: 念を入れてよく考えること
  • 吟味: 念入りに調べること、選ぶこと

これらの言葉は、「根拠があいまいなまま思いを巡らせる」という憶測とは、反対の意味の言葉だといえるでしょう。

  • 「憶測」とよく似た言葉

    「憶測」の類語と対義語について解説しました

憶測の英語表現

憶測は英語ではどのように表現するのでしょうか。

「speculation」

「speculation」には「確実な根拠がない思索、憶測」の意味があります。「speculation about(on)~」で、「~についての憶測」という意味になります。

・There are a lot of supeculation about his death.(彼の死については多くの憶測がある)
・What you said is pure speculation.(あなたの言ったことは単なる憶測に過ぎない)

「Don’t speak without proof.」

「Don’t speak without proof.」とは、「憶測でものを言うな」という意味です。憶測は「根拠がない」という意味なので、「without proof」という言葉で表現することができます。

  • 「憶測」を英語で表すと?

    「憶測」を意味するのは「speculation」です

憶測の意味を知って正しく知ろう

憶測とは「根拠がないなか勝手に推し量ること」という意味の言葉です。似た言葉に推測や予測などがありますが、根拠があるものには推測や予測を使うことができ、根拠がないものには憶測を使います。

憶測は「憶測が飛び交う」「憶測を生む」など、慣用的に使われることが一般的です。「憶測の域を出ない」などの表現も併せて、正しく理解しておきましょう。