「月並みですが……」などという言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。日常生活やビジネスシーンなどでも広く使われている言葉ですが、「月並み」という言葉には、実は複数の意味があります。どの意味で使われているのか、前後の文脈から適切な解釈をする必要があります。
本記事では月並みの意味や語源、そして正しい使い方を例文付きで紹介します。
月並みの意味とは?
月並みには複数の意味があるため、使用シーンや文脈などによって相手の意図を理解する、あるいは意味を考えたうえで使いこなすことが大切です。
ここでは月並みの意味や語源についてくわしく紹介します。
月並みのもともとの意味
月並みという言葉は古くから使われており、もともとは「月ごと」や「月に1度」といった意味を持っていました。月に1度、和歌などを詠む会のことを「月並みの会」と呼びます。
現在の月並みの意味
現在、月並みは「ありきたり」や「平凡」を意味する言葉として使われるのが一般的になっています。ほかと比較して新鮮味がない状態や、どこにでもあるつまらないものといった形で、ネガティブなニュアンスをしめしたり、謙遜したりする際に使われることも多い言葉です。
なぜ月並みが「ありきたり」「平凡」という意味になったのか
月並みという言葉が現在のようにありきたり、平凡といった意味で使われるようになったのは明治時代ごろといわれています。当時を代表する歌人の正岡子規が、ありきたりな俳諧に対して「月並調」という言葉で批判したことから、月並みがありきたりで平凡なものを指す言葉として使われるようになったとされています。
いずれも和歌や俳句の世界に由来していますが、明治時代以降はより広いシーンで使われる言葉となりました。
月並みの類語・置き換え表現
月並みは複数の意味を持ち、さまざまなシーンで使うことができる言葉です。 ここでは現在一般的に使われることが多い、ありふれた・平凡といった意味での「月並み」の類語や置き換え表現を紹介します。
人並み
人並みは「世間一般の人びとと同じ程度のこと」を指す言葉です。常識的や一般的といったニュアンスでも使われます。月並みをありふれたさま、考え方という意味で使う場合、人並みという言葉に置き換えることも可能です。
月並みとは違い、ポジティブな意味あいで使われることもあるため、より広いシーンで使えます。
ありふれた
ニュアンス的に現在の月並みと近い形で使われる表現です。「どこにでもありそうな」といった意味を持ち、月並みと同様にネガティブな意味あいで使われることも多い言葉です。
ありきたり
ありきたりにも「普通で注意をひかない」「めずらしくない」「特徴がなく例外的ではない」といった意味があります。前述のありふれたと近い使われ方がされ、月並みの置き換え表現としてそのまま使用できます。
平俗
平俗は「ありふれていて俗っぽい」「表現がくだけておりわかりやすい」といった意味を持つ言葉です。ネガティブな意味あいが強い言葉としても使われます。
月並みもネガティブなニュアンスで使われることが多いため、置き換え表現として使いやすいもののひとつといえます。
月並みの英語表現
月並みと同様の意味となる英語表現の代表的なものをピックアップして紹介します。
indifferent
「無関心」や「冷淡」という意味を持つ「indifferent」ですが、「可もなく不可もない」「平凡な」といった意味もあるため月並みの英語表現として使えます。
さらに「まずい」「劣った」という意味もあるためネガティブな表現でも使用できます。
just another
「just another」には「ありふれた」「ありきたり」といった意味があり、月並みの英語表現のひとつにあたります。たとえば「just another day」でありふれた一日という表現になります。
特別なことがなく、普通であるといった意味もあります。
normal
「normal」も月並みの英語表現のひとつです。「標準の」「正規の」「一般並みの」といった意味あいを持ちます。
月並みの正しい使い方を例文で紹介
月並みはいろいろなシーンで使うことができる言葉である一方で、正しく使用しなければ誤解を招いたり、場合によっては相手に対して失礼にあたったりする言葉でもあります。
ここでは具体的に例文をあげながら月並みという言葉の使い方を紹介します。
ビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンでも月並みはさまざまな形で使われます。
・月並みな努力ではあの地位にはつくことはできなかっただろう
・会議では月並みな意見しか出てこなかったため、あらためてアイデアを練り直す必要があります
・月並みな商品では今後売り上げを大きく伸ばすことはできないだろう
・月並みな表現ではありますが、正論に違いないと思います
このように、ビジネスシーンで月並みという言葉はややネガティブなニュアンスをこめて「ありふれた」「平凡な」という意味あいで使われます。そのため、人に対して使うときには注意が必要です。
日常会話での使い方
月並みという言葉はビジネスシーンのみでなく、日常会話の中でも使われます。それでは具体的に例文をあげていきます。
・君は月並みなことしか言わないが、正直なのでとても信用することができる
・月並みですが、最終的には真面目にコツコツと努力を積み重ねることが大切だ
・君が志望校に合格できたのは、君の月並みならぬ努力の成果だろう
・月並みな設定・脚本だったが役者の見事な演技によって素晴らしい映画になった
日常会話の中では結論などを述べる前に「月並みですが」といった形で、謙遜する前置きとして使われることも多いです。また、月並みではないといった形で打ち消すこともあります。
その他の使い方
月並みという言葉は広く知られている言葉なので、シーンを選ばず使用できます。
・月並みな感想で申し訳ないですが、あなたの演奏はとても素晴らしかったです
・月並みではあるものの、彼の意見はとても素直で正直なものだった
月並みの意味を正しく理解して使いこなそう
月並みはもともと、月に1度、毎月きまってといった意味の言葉でしたが、明治時代から現代にかけては「ありふれた平凡な様子」などを意味する表現として使われるのが一般的になりました。複数の意味があるので使い方や文脈などから正しく理解する必要があります。
月並みはいろんなシーンで使える言葉なので、類語や置き換え表現などを頭に入れておきましょう。例文を参考にして、普段の会話などにもうまく取り入れてみてください。