コロナ禍での就活で最も大きな変化の1つが面接のオンライン化でしょう。照明や背景画像などオンラインならではの環境づくりや自己PR動画での演出の工夫は必要かなど、就活生が疑問に思っていることも多いはず。

オンライン面接での失敗例や留意したいポイントについて、就活のリアルな事情に詳しい大学ジャーナリストの石渡嶺司さんに聞きました。

■オンライン面接で環境をつくる役割は学生側

……オンライン面接での残念な事例を教えてください。

光の当たり方を全然考慮しないでオンライン面接に臨んだ場合、それだけでちょっと印象が良くありません。丸型のいわゆる「女優ライト」がいいと思いますが、ネーミングのせいか男子学生の一部で避けられる傾向があります。

実際、画面で見ると全然明るさが違うので、暗く見えることだけで不利になるとつまらないので、使った方がいいでしょう。いずれにしても画面の高さなど自分の映り方を実際に確認して、調整したほうがいいです。

背景は白が無難ですが、サークル活動を頑張った場合であればユニフォームなどをさりげなく配置してもいいと思います。

……スマートフォンでも問題ないですか?

スマートフォン単体でのやり取りはお勧めしません。万が一、電池切れなどのトラブルで落ちてしまった場合、他に連絡の取りようがなくなってしまいます。

ノートパソコンで面接に臨み、万が一回線の状態が悪いといった時にはスマートフォンや携帯電話で指示を仰ぐのがいいと思います。

  • オンライン面接ではスマートフォン単体でのやり取りは危険。ノートパソコンで面接に臨み、万が一回線の状態が悪いといった時にはスマートフォンや携帯電話で指示を仰ごう

……ネットカフェで面接を受けてもいいですか?

いわゆる大手チェーンのカフェや個室対応できていないカフェはNGです。そもそも他のお客さんに迷惑ですし、暗かったり他の騒音が混じったりと弊害が大きすぎるのでお勧めできません。

オンライン選考では、企業が場所・環境を用意するのではなく、学生の側が自分で環境を作ることが求められる。そこが対面との大きな違いです。最近はネットカフェでも光や防音などオンライン会議対応した環境が整ってきたので、そういったところであれば問題ありません。

■自己PR動画では演出はあくまで内容の補完的役割

……自己PR動画で笑いを取りにいくのはありですか?

ほぼ確実にすべる可能性が高いのでお勧めしません。

笑いというのは演じる側と見る側に一定の共通言語・認識があって成立しますが、学生と採用担当者の間ではそれが難しいケースが多いので、結果何が笑いのポイントがわからないまま終わる可能性が高いです。

また、自虐ネタに走る人もいますが、これは名前の知れた芸人なら別ですが、知らない学生がやっても自己PRどころか自己非難動画になってしまいます。

……何か演出効果をプラスするとしたら?

自分の自己PR材料というのを丁寧に伝えていくことが、結果的にはより良い自己PR動画になります。単に文章読むだけでもいいのですが、動画なので内容を補完できること、サークルで活躍したのであればその時の写真を見せるなどですね。

動く絵でどういったものを見せれば見ず知らずの採用担当者にも理解してもらえるかと考えて作っていくと、より良い自己PR動画になります。

ただし、採用担当は編集技術を見ているのではなく、学生の自己PRを見たいというのが本質なので、作り込んだ自己PR動画が有利というわけではありません。

企業によっては、一度自己PR動画の選考を入れたのに、編集ソフトでものすごく作り込んでくる動画が多くて、逆に自己PRポイントが見えづらいということでやめてしまったという事例もあります。

■最終役員面接では企業情報チェックをぬかりなく

……最終選考で「最近気になるニュースは?」と聞かれたら?

最終選考段階で役員からあえて「最近気になるニュースは?」と聞かれるケースがよくあります。

この質問が最終段階で出た場合は、大方の「ほめてほしい」という文脈を含んでいます。例えば最終面接のタイミングの前後にその企業についてのポジティブなニュースがメディアで流れていた場合、その役員も程度の差こそあれ、浮かれているはずです。

というわけで学生にもそういう質問を投げたくなるわけです。ですから、「もちろん、その記事を拝見しました。すごいですね」という回答を期待しています。ところが、

「ヤクルトスワローズが優勝したことです」

「私の好きなアイドルが引退しました」

「特にありません」

といった回答をしてしまう学生が少なくありません。少なくとも面接前日には企業名検索で企業のニュースがないかチェックするようにしましょう。

■夏のインターンシップ不参加=負け組ではない

……ここ1~2年での就職活動の変化と学生が留意したいポイントを教えてください。

オンラインよりも対面を重視する「対面至上主義」的な学生が増えているというのが最近の印象です。

実際には企業側は初期のセミナーや選考は、自分たちの出張の負荷や地方学生の交通費などのことも考えてオンラインで、ここぞという時には対面でというふうに使い分けています。

ですから学生の側もオンラインか対面かの二元論ではなく、両方を使い分けてアピールできるようにしておくというのが一番目です。

二番目の潮流としては就活時期の多様化があります。

2021年12月に経団連が「新卒一括採用」の割合を減らし、中途採用や通年採用を拡大する方向で見直すよう会員企業に提案する方針であるとの報道がありました。

一括採用は実は結構崩壊しかかっていて、選考の時期を何回かに分割するという企業が非常に増えています。多様化が進んだ結果、どのタイミングでも就活生は自分がどんどん遅れてるんじゃないかと不安になってしまいます。

SNSやTwitterなどで、そういった話題が上ることも多いのですが、実態としては多様化、分散化しています。ですから、夏のインターンシップに参加できなかったから人生負け組みだとか、勝手に思い込んで就活を断念してしまうことはしないでいただきたい。

まとめますと、対面とオンラインの使い分け、就活時期の多様化。この2つがコロナショック以降気を付けたほうが良いポイントです。粘り強く頑張ってください。