「ご用命ください」「ご用命いただければ幸いです」など、ビジネスシーンでよく耳にする「ご用命」。正しい意味をご存知でしょうか。

ここでは、「ご用命」の正しい意味や適切な使い方を例文で解説します。さらに、「ご要望」「ご依頼」といった似た表現との違いや、類語も紹介しますので、参考にしてください。

  • ご用命の意味とは

    「ご用命」の意味を正しく理解しましょう

「ご用命」の意味とは

「ご用命」の読み方は「ごようめい」です。

「用命」という言葉には、「何かの用事をいいつける」「命令・注文をする」という意味があります。この「用命」に「ご」をつけて丁寧な言い回しにしたのが「ご用命」です。

「ご用命」と「ご要望」「ご依頼」との違い

・ご要望
「ご要望」とは、「物事を強く望んいる」という意味の「要望」の丁寧な表現です。「ご要望にお応えします」のように使用します。ただし、「ご用命」と同じく相手に敬意を払う言葉ですので、自分の行為に対して「ご要望します」とは使いません。

・ご依頼
「ご依頼」とは、「何かをしてくれるように人に頼む」という意味の「依頼」の丁寧な表現です。「ご用命」は「言いつける、命令する」という意味で、命令される側が「ご用命いただく」などと受け身で使用します。一方「ご依頼」は「ご依頼する」「ご依頼いただく」と、頼む側も頼まれる側も使うことができます。

ビジネスの場では、似た言葉を混同して誤った使い方をしないように気をつけましょう。

「ご用命」の使い方

ここでは、「ご用命」の使い方を解説します。

「ご用命」は目上に使う

「ご用命」は「ご用命いただく」のように、仕事や用事、依頼などを受ける際に使う言葉です。相手を立てる表現ですので、目上の人や社外の顧客、取引先などに対して使うことが多いでしょう。目下の人や同僚などに対しては使用しないため注意が必要です。

「ご用命」は自分に対しては使わない

「用命」という言葉には、立場が上の人が下の人に対して命令するという意味があります。そのため、自分の行為に対して「用命」を使うのは誤りです。

例えば「私がご用命いたします」といった表現は、一見すると丁寧な言葉遣いのように思えますが、相手を下に見て命じるという意味になってしまうため、失礼にあたります。この場合は正しくは「私がご依頼させていただきます」です。

「ご用命」は目下の人や同僚のみでなく、自分の行為に対しても使わない表現であるということを頭に入れておきましょう。

  • ご用命の使い方

    「ご用命」の適切な使い方を身につけていきましょう

「ご用命」を使うシーンと例文

「ご用命」は「ご用命いただく」のように、目上の人からの命令を受ける際に使う言葉です。ここでは、「ご用命」の適切な使い方をシーン別の例文で紹介します。

ビジネスシーンでの例文

ビジネスシーンで多用される「ご用命」の使い方を例文でみていきましょう。

  • 何なりとご用命ください。
  • ご用命賜りますようお願い申し上げます。
  • お客さまのご用命を心よりお待ち申し上げます。
  • もしお困りのことなどございましたら、私どもがいつでもご用命承ります。
  • 先ほどお伺いした件、ご用命を承りました。
  • ご用命いただきまして誠にありがとうございます。

「ご用命」は目上の人に対して使われる言葉ですので、当然言い回しも丁寧な表現となります。依頼などを受けるときに限らず、受けた後の感謝を伝える際にも使用できる言葉です。

日常会話での例文

「ご用命」はかしこまった表現でもあるため、日常会話ではそれほど頻繁に使われることはありません。そのため、日常シーンでは「ご用命」よりカジュアルな言い換え表現の「ご利用」や「ご注文」などを使用することが多いでしょう。

  • 必要であればいつでもご利用ください。
  • ご注文ありがとうございます。

メールでの例文

「ご用命」は口頭に限らず、文章上でも使用できる言葉です。

  • ウェブサイトから本サービスについてご用命を承りました。
  • このたびは当店へのご用命、誠にありがとうございます。
  • お問い合わせいただいた資料をお送り致しました。ご検討の上でぜひご用命賜りますようお願い申し上げます。

例文からもわかるように、「ご用命」は目上の人や顧客などに対して使う言葉ですので、全体の言い回しを丁寧な表現にするようにしましょう。

  • ご用命を正しく使いこなせるようになろう

    「ご用命」の使い方を例文で紹介しました

「ご用命」の類語・言い換え表現

「ご用命」にはいくつかの類語や言い換え表現があります。さっそくみていきましょう。

「仰せつける(おおせつける)」/「仰せつかる(おおせつかる)」

「仰せつける」は「立場が上の人が下の人に命令する」という意味の「言いつける」の丁寧な表現です。「ご用命ください」は「仰せつけください」と、置き換えることができます。

また、受け身表現の「ご用命いただく」は、「仰せつかる」となります。例えば「ご用命いただいた件につきまして」、「仰せつかりました件につきまして」などです。

「仰せつける」は「ご用命」に比べて少しかしこまった表現ですので、シーンを選んで使い分けるようにしましょう。

「ご下命(ごかめい)」

「ご下命」には「命令を下す」という意味があります。「ご用命」と意味が近く、言い換えができる表現のひとつです。

しかし、「ご下命」は「ご用命」よりも「より厳しく命令する、いいつける」といった強いニュアンスになります。こちらも、シーンを選んで使うようにしましょう。

「ご利用」

「ご利用」は「役立つように使う」という「利用」の丁寧な表現です。「相手に何かを使ってもらう」という意味になります。

「ご用命」が「(目上の人からの)命令を受ける」という意味が含まれるのに対し、「ご利用」は単に「使ってもらう」という意味。ビジネスで注文や依頼を受けた際には「ご用命」としたほうが、相手に敬意を払うことになります。

  • ご用命の言い換え表現

    「ご用命」の類語・言い換え表現を紹介しました

「ご用命」を正しく使いこなせるようになろう

「ご用命」は「目上の人からの命令を受ける」という意味の言葉です。目上の人や顧客、取引先などに対して用いる言葉であり、自分の行為に対して「ご用命いたします」などとは使いませんので注意しましょう。

ビジネスシーンで多用される「ご用命」を、正しく使いこなせるようになりましょう。