ビジネスシーンでは、「みんなの主張が強すぎて、うまくまとまらない」というシチュエーションに陥りがちですが、「船頭多くして船山に上る」はそのような状況を表すことわざです。

本記事では、「船頭多くして船山に上る」の意味や由来、類語、ビジネスシーンでの使い方、外国語表現などについて詳しく解説していきます。

  • 「船頭多くして船山に上る」の意味や由来を紹介

    「船頭多くして船山に上る」ということわざについて理解を深めていきましょう

「船頭多くして船山に上る」とは

「船頭多くして船山に上る」ということわざに初めて触れる方や「見たことはあるけど意味は知らない」という方のために、意味や由来を紹介します。

「船頭多くして船山に上る」の意味

「船頭多くして船山に上る」(せんどうおおくしてふねやまにのぼる)」とは、「指示する人間が多いことにより統一が取れず、見当外れな方向に物事が進んでいくこと」という意味を持つことわざです。

チームのメンバーを仕切るリーダーは必要な存在ですが、複数人の人間がそれぞれが違う指示をしてしまうと、物事はうまくいかなくなると戒めています。

「船頭多くして船山に上る」の由来

「船頭」とは、船の中を取り仕切るリーダーのことで船の順路や操縦、整備など船を管理する責任があります。船を安全に目的地まで運航させられるかどうかは、船頭のリーダーシップにかかっていると言えるでしょう。

もしも、船の責任者である船頭が1つの船に複数人いたらどうなるでしょうか。それぞれの船頭が自分なりの航路や運営方針を船員に指示してしまったら、困るのは船員たちです。

指示系統がメチャクチャになると船員たちは混乱してしまい、船はどんどん見当違いの方向に進んでいくでしょう。そして、目的地にたどり着けないどころか、船ではありえない山に登ってしまうという状況にもなり得ることから生まれたことわざです。

  • 「船頭多くして船山に上る」の意味や由来を紹介

    指示をする人が多すぎると物事はスムーズに進行しないものです 

「船頭多くして船山に上る」の使い方・例文

ここでは「船頭多くして船山に上る」の例文を紹介します。日常で使用するときの参考にしてみてください。

  • 選りすぐりのメンバーが集まったけど、「船頭多くして船山に上る」のようにならないといいな

  • 会議の参加者が多すぎたため、「船頭多くして船山に上る」になり話がまとまらなかった

  • 息子の所属するサッカーチームはコーチが何人もいて、「船頭多くして船山に上る」になりがちで、指導方針が定まっていない

  • みんなが好き勝手に自己流の教え方をするので、「船頭多くして船山に上る」で新人が困っている

  • 「船頭多くして船山に上る」の例文

    「船頭多くして船山に上る」の状態は部下などの混乱を招きます

「船頭多くして船山に上る」の類語

「船頭多くして船山に上る」の類語を紹介します。

船頭多くして船動かず

船頭が多くいると、進む方向が決定できずに船が動けないという意味の言葉です。

家を道端に作れば三年成らず

人目につく道端に家を建てようとすると、さまざまな人が口を出してきて、意見に左右されて三年経っても家が建たない、という意味の言葉です。

役人多くして事絶えず

役人が多くいると仕事が複雑になり、かえって進行しなくなる、という意味の言葉です。

「船頭多くして船山に上る」の対義語

ここでは「船頭多くして船山に上る」の対義語を紹介します。

三人寄れば文殊の知恵

三人集まって相談すれば、凡人であっても素晴らしい知恵が出る、という意味の言葉です。

桶は桶屋

素人がむやみに口出しないで、専門家に任せるべきである、という意味の言葉です。

「船頭多くして船山に上る」と似た意味の四字熟語

「築室道謀」(ちくしつどうぼう)とは、余計な意見が多くてまとまらずに、物事がいつまでも完成しないことや、結局失敗に終わってしまうことを例えた四字熟語です。「築室」は家を建てるという意味で、「道謀」には道行く人に相談するという意味があります。

「船頭多くして船山に上る」と似た意味を持っている四字熟語だと言えるでしょう。

  • 「船頭多くして船山に上る」の類語や対義語の紹介

    「築室道謀」は「船頭多くして船山に上る」に近い意味を持つ四字熟語です

ビジネスシーンにおける「船頭多くして船山に上る」の状況

ここからは「船頭多くして船山に上る」をビジネスで使うシチュエーションを紹介します。あわせて「船頭多くして船山に上る」という状態になりにくい会議の適正な人数も考えてみましょう。

複数のリーダーは不要

プロジェクトの進行など、チームで行動をしなければならないときには「船頭多くして船山に上る」というシチュエーションに遭遇しがちです。

例えば、AさんとBさんという2人のリーダー的な存在がいるプロジェクトがあるとします。会社側としては、大切なプロジェクトなので有能な2人を選んだのです。

しかし、AさんもBさんも自分の考えに固執しがちで、それぞれが違った指示をメンバーに出してしまいます。するとプロジェクトの方向性が定まらず、AさんとBさんの下についているメンバーはどうしていいのかわからなくなり、プロジェクトが進行しません。

そのような状況を見て、上司が「これでは『船頭多くして船山に上る』じゃないか、別の者をリーダーにするから、君たちは別の仕事をしなさい」と言うようなシチュエーションがあるでしょう。

有意義な会議ができる人数とは

人数が多すぎる会議は「船頭多くして船山に上る」という状況になりがちで、人件費だけがかかり、生産的ではありません。会議の時間がいたずらに伸びるだけで、結論が出ないシチュエーションは少なくないでしょう。

有意義な会議ができる人数は4~6人だと考えられており、キーパーソンとなる人は1名に絞るのがよいようです。つまり、少人数で会議をする方が、最終決定までスムーズに進行するということでしょう。

  • 「船頭多くして船山に上る」のビジネスシーンの使い方

    会議の参加人数が多すぎると時間がかかるだけで結論が出ないこともあります

「船頭多くして船山に上る」の英語表現

「船頭多くして船山に上る」を英語で表現すると「too many captains will steer the ship up a mountain」が適当でしょう。また、「船頭多くして船山に上る」と同じ意味を持つイギリスのことわざ「料理人が多すぎるとスープがまずくなる」は、「too many cooks spoil the broth」と表現します。

  • 「船頭多くして船山に上る」の英語表現

    「too many cooks spoil the broth 」(料理人が多すぎるとスープがまずくなる)は「船頭多くして船山に上る」に似た意味があります

「船頭多くして船山に上る」の意味や由来、使い方を理解しておこう

ビジネスシーンでは主張の強いメンバーが集まると「船頭多くして船山に上る」のような状態になりがちです。状況によって、主張するばかりではなくリーダーを支える役回りになることも大切です。