ビジネスシーンでもたまに使われる「心外」という言葉ですが、使い方や使う場面、相手を間違えてしまうと、失礼にあたることもあります。この記事では、心外の本来の意味や使い方を、例文もあわせてご紹介します。実際に使うときの参考にしてみてください。

  • 心外とはどういう意味? 基本的な意味や由来

    心外の意味を理解しましょう

心外の意味とは

「心外」は「しんがい」と読みます。はじめに基本的な意味や由来について解説します。

心外の意味は「予想に反して悪い結果になること」「思いもよらないこと」

心外には「思いもよらないこと」「思いがけないこと」という意味があります。「心の外」と書くので、文字通り「心の中にない=心に思っていなかったこと」という意味です。しかしこちらの意味で使われることはあまりありません。

どちらかといえば、思いがけない仕打ちを受けたり、予想に反した結果が出たりした場合に、腹立たしい感情や残念な気持ちをあらわすときに使います。

「こうなるべき」「こうなる予定」だったものがその通りにならず、不本意な結果になってしまったとき、「まさか」「どうしてこうなったのか」といった怒りや不満の感情が自然とわいてきた状態を心外と表現するのです。

目の前の人が怒りや不満を吐き出す様子は、傍から見ていて気持ちのいいものではありません。場合によってはその場の空気を壊したり、周囲に気まずい思いをさせたりしてしまいます。

怒りや不満のニュアンスを含む心外は、聞いた人を不快にさせてしまう可能性があるため、使う場面や相手を選んで使うように注意しましょう。

心外の意味【医療分野】

心外は医療の現場でも使われることがあります。「心外膜 (しんがいまく)」「心外導菅型手術 (しんがいどうかんがたしゅじゅつ)」など心臓に関わる専門用語に含まれていることが多いといえます。また、「心臓外科」や「心臓血管外科」など心臓に関連する診療科名を省略して「心外 (しんげ)」ということもあります。

心外の意味【仏教用語】

心外は仏教用語にもあります。仏教用語での心外は「しんげ」と読み、「心の外」という意味です。この場合は「思いもよらないこと」の意味はありません。

  • 心外とはどういう意味? 基本的な意味や由来

    心外は怒りや不満をあらわします

「心外」と「意外」「遺憾」「残念」の意味の違い

心外とよく似ている類語表現についてまとめました。意味はよく似ているけれど程度が異なったり、使える場面が限られたりするので注意しましょう。

「心外」と「意外」の意味の違い

心外と意外はどちらも「思いもよらない結果になったこと」を意味しますが、得られる結果に違いがあります。心外は主に思いもよらない残念な結果だったときに使用し、意外は思いもよらない結果がネガティブでもポジティブでも使うことができます。

例文で比較するとわかりやすいでしょう。

「大学受験が心外な結果に終わる(=準備したのにうまくいかなかった)」
「大学受験が意外な結果に終わる(=思ったよりうまくいった)」

心外を使った例文では、入念な準備をしたのにもかかわらず受験がうまくいかなかった、といった不満の意味が込められています。一方「意外」を使った例文は、それほど期待はしていなかったけれどうまくいった、といった驚きの意味が込められています。

心外は期待していたのにネガティブな結果になってしまったとき、「意外」は期待していなかったけれどポジティブな結果になったとき、と覚えるといいでしょう。例えば、下記の例文では心外を使えません。前提として料理に期待をしていないからです。

×「この洋食は心外に美味しい」
○「この洋食は意外に美味しい」

心外は結果によってネガティブな感情になったときのみに使えますが、「意外」はポジティブとネガティブどちらの場合でも使えます。下記の例文では、心外は「ネガティブになったとき」に使えます。一方「意外」はポジティブとネガティブ、どちらの意味でも通じるでしょう。

「あの人があんなことをいうとは心外だ」
=期待していた人ががっかりさせるような発言をした (ネガティブ)

「あの人があんなことをいうとは意外だった」
=期待していなかった人が驚くような発言をした (ポジティブ)
=期待していた人ががっかりさせるような発言をした (ネガティブ)

「心外」と「遺憾」の意味の違い

心外は「思いもよらない残念な結果になったこと」をいいますが、同様に「残念なこと」を意味する言葉が「遺憾」です。遺憾は特に「期待に添わない結果になって残念だ」という意味で使われます。

謝罪会見などで「遺憾の意を示す」「遺憾に思う」という表現で使われることが多いため、謝罪を意味する言葉と思う方もいるかもしれませんが、本来は謝罪の意味は含まれません。

「心外」と「残念」の意味の違い

心外は「思いもよらない結果で残念に思う」という意味であり、「残念」は心外をよりストレートにした表現です。心外は「思いもよらない結果」に対し驚きや怒りのニュアンスが含まれるのに対し、「残念」は「悔しい、無念」といった諦めきれない思いが含まれます。

  • 心外を目上の人に使うのはNG? 言い換え表現は?

    心外は「悔しい」「残念」に言い換えることができます

心外を目上の人に使うのはNG? ビジネスでの使い方

心外を使う場面は限定されており、特に目上の人に使うのはふさわしくないとされています。その理由や言い換え表現についてまとめました。

心外は怒りをあらわす言葉

心外はどちらかといえばネガティブな印象を与える言葉です。思いもよらない結果になって「腹が立つ」「裏切られた」といった怒りのニュアンスが含まれます。

思いもよらない結果によって気分を害したとき、腹立たしく感じた、裏切られたと感じるほど傷ついた、といった自分の感情を伝えるために使うのが適しているでしょう。

目上の人に使うのはNGではないが失礼

心外を目上の人に対して使うのは禁止されているわけではありません。しかし目上の人に対して使用し、「裏切られた」と怒りの感情を伝えることは、失礼にあたるでしょう。

特に心外は程度がひどい状態をあらわす表現なので、受け取った側も不快にさせてしまう可能性があります。心外はどうしても不満や怒りを伝えたいときにのみ使うのがベストです。

「心外」を言い換えるなら「残念」「悔しい」「不本意」

目上の人に伝えるとき、心外と似たような表現を使うのであれば「残念」「悔しい」といったストレートな表現が適切です。心外だと怒りや不満のニュアンスが伝わってしまいますが、「残念」と「悔しい」はどちらも広い意味で使える言葉なので、怒りや不満のニュアンスだけが伝わってしまう可能性は低くなります。

「残念」「悔しい」よりやらかい表現としては「不本意」もおすすめです。目上の人に対し怒りや不満の感情がわいてきたら、「不本意です」「不本意に感じます」といった表現でも心外と近い意味をソフトに伝えることができます。

  • 心外の例文

    目上の人には「心外です」より「不本意です」を使いましょう

心外の使い方・例文

心外を使った例文をまとめました。心外に含まれるニュアンスの違いも解説しているので、実際に使う場合の参考にしてみてください。

「技術試験が心外な結果に終わった」

目標の点数に向けて勉強を頑張ったはずなのに、目標の点数に達しなかったときに使える例文です。自分ではいい結果になると思っていたのに、思った通りの結果にならなかったというニュアンスを含みます。

「心外に感じるような出来事に遭遇した」

予想外のことが起きて驚いたとき、もしくは怒りを感じたときに使える例文です。他人に批判や悪口をいわれるなど、気分を害すことが起こったときに使えるでしょう。

「そのような言い方をされるのは心外極まりない」

特に怒りをあらわすときに使える例文です。外見や仕事の質、性格について不本意な評価を受けたときに使えるでしょう。「極まりない」は特に程度が高いことをあらわします。

「彼と一緒にされるのは心外ですよね」

「彼と一緒にされるのは気に食わない/うれしくない」と感じている人に、同情の意を示す表現になります。

  • 心外の例文

    怒りや不満を伝えたい場合には心外を使いましょう

心外の英語表現

心外に該当する英語表現は「regrettable」「unexpected」などです。「regrettable」は「遺憾な」「残念な」というニュアンスの心外に該当します。「unexpected」は「予期しない」「思いがけない」というニュアンスです。

また、「無法な」「ひどすぎる」などの予想外の結果に対し怒りを感じるような場合には「outrageous」、予想外の結果を受けて悲しい場合は「sad」、驚いた場合には「surprised」とシンプルに感情を表現する言い方もあります。

「心外」の意味を理解して、使い方に気をつけよう

本記事では心外の意味や使い方についてまとめました。

心外は基本的に思いもよらなかった結果に対し、怒りや不満を感じたときに使います。目上の人に使ってはいけないわけではありませんが、相手や場面によってはその場にいる人を不快にさせてしまう可能性もある言葉なので、使う場合には注意が必要です。

一方で、怒りや不満を正しく表現したい場合に的確に使用すると、効果を発揮する言葉です。ぜひ場面に応じて使いわけてみてくださいね。