フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、16日に放送された『結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~ 前編』。結婚相談所に入会して婚活を始めた30歳の女性・ミナミさんを追った作品だ。

恋愛経験のない彼女は、敏腕婚活アドバイザー・植草美幸さんの指南のもと、自分と向き合い、様々な壁とぶつかる中で、外見だけでなく内面も大きく変化。「専業主婦になりたい」という願いをかなえる40代の資産家と、初めて恋心を抱いた30代の介護士という2人の男性の間で揺れ動く姿が映し出され、23日放送の「後編」でその決断が描かれる。

取材したのは、八木里美ディレクター(バンエイト)。「婚活」という人間の本質を映し出すテーマを通して感じたことは何か。“応援者”として密着した立場から見たミナミさんの成長や、強さについても語ってくれた――。

  • お見合いをするミナミさん (C)フジテレビ

    お見合いをするミナミさん (C)フジテレビ

■超個人的な話から世の中が見えてくる

今回の舞台である結婚相談所「マリーミー」を、フジテレビのニュース番組『Live News イット!』の企画コーナーで、シリーズとして取材してきた八木D。「結婚相談所は、カウンセリングルームの中で超個人的な話をしているのに、世の中が見えてくるというのがすごく面白いところだと思いました」と約3年取材してきたが、コロナ禍になったタイミングでそれが終了となった。

そこで、「コロナ禍という人類史上初めてのことを経験する中で、きっと人の気持ちや心のあり方が変わってくるというのを感じていたのですが、それを暗い話題で表現したくないと思っていたんです。何かポジティブなテーマで、コロナ禍で人間がどう変わっていったのかを表現したいと考えていたときに、“婚活”というのを思いつき、『ザ・ノンフィクション』で提案させていただきました」と、今回の放送につながった。

それを象徴した取材対象が、前編の冒頭に登場した、大手人材紹介会社のキャリアアドバイザー・あゆみさん(31)。コロナ前は中国の現地法人で人と関わる仕事にやりがいを持っていたが、帰国直後にコロナ禍になると、テレワークで3食を仕事机で食べ、人と会わない生活が続き、ついに体に異変が。それまで「おひとりさま上等」という生き方だったが、「やっぱり人がいないとダメだな」と婚活を始めた。

八木Dは「まさにコロナ禍での社会現象だと思い、最初にお見せしなければという気持ちで、この構成にしました。コロナというのは、本当に全てを変えてしまったのだと、改めて思わされました」と語る。

■婚活が進むにつれて驚きの変化

婚活は、相手選び、お見合い、デートと楽しいことばかりではない。自分が歩んできた人生を見つめ直し、自分の内面ととことん向き合う作業から始まるため、番組が密着するとその人の本質がどんどんさらけ出されていく。さらに、家庭環境、仕事内容、給料といったことまで明かされる取材だ。

それでも今回、半年以上にわたる長期密着を受けたミナミさん。八木Dは「最初は、いつ『取材は嫌です』と言われてもおかしくないと思っていたので、途中でダメになっても仕方ないなという覚悟を持ってやっていました」というが、婚活が進むにつれて「すごく深いところまでインタビューに答えてくれるようになったんです」と変化があった。

その背景を「1人で植草さんにいろいろ言われて、うまくいかなかったり、自分で抱えきれないところがあったりして、誰かに今の気持ちを言いたいのかもしれないと思いました」と分析し、「私が第三者として居ることが、婚活に関しては精神衛生上で実は良かったのかな…というのを、取材しながら最後のほうになって思いました」と感触を語る。

  • 結婚相談所で出会った男性とお台場デートへ (C)フジテレビ

そんなミナミさんに対し、「成婚・退会まで撮影しようという意気込みで、自分の30歳の頃を思い出しながら励ましたり、“あーでもない、こーでもない”と2人で話したりして、一緒に走っているような取材でした」と、“応援者”のような気持ちで密着。

「出会ったときはとても純粋で素朴で、ある意味で世間知らずの面もあったりして、すごく興味深い取材対象だったのですが、それが植草さんからの指導を受けてどんどん変わっていったんです。ここまで成長を遂げていくのは、私の中でもすごく驚きでした」と振り返った。