米労働省が2022年1月7日に発表した12月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数19.9万人増、(2)失業率3.9%、(3)平均時給31.31ドル(前月比+0.6%、前年比+4.7%)という内容であった。
(1)12月の米非農業部門雇用者数は前月比19.9万人増と市場予想(45.0万人増)を下回った。前月の修正値である24.9万人増から減速し、増加幅は2021年で最低となった。雇用情勢を基調的に見る上で重視される3カ月平均の増加幅も36.5万人と、前月の42.5万人から減速した。
(2)12月の米失業率は前月から0.3ポイント改善して3.9%となり、2020年2月以来の低水準を記録。市場予想は4.1%だった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は61.9%と、前月に続き2021年最高水準だったが、コロナ禍前の63%台を大きく下回っている。なお、フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は7.3%と、前月から0.4ポイント改善した。
(3)12月の米平均時給は31.32ドルとなり過去最高を更新。伸び率は前月比+0.6%、前年比+4.7%であった。(市場予想:+0.4%、+4.2%)。働き手不足の状態が続く中、企業による人員確保に向けた賃金引き上げの動きも続いている模様。
米12月雇用統計は、非農業部門雇用者数こそ予想を下回る伸びとなったものの、失業率が1年10カ月ぶりの水準に改善し、平均時給の高い伸びも継続した。労働参加率の低さからは、コロナ禍で労働市場から退出した人の復帰意欲が鈍い事が窺える。そうした中で企業が賃金を引き上げても労働者が集まらないため、雇用者の伸びが鈍いのだろう。これは、米経済が当面、インフレ圧力の強い状態が続く事を意味していよう。
米12月雇用統計を受けて、米国債利回りが上昇しており、債券市場は2022年中に4回の利上げを織り込み始めた。一方、利上げ観測の高まりで米国株が下落したため、ドル/円は115円台で上値の重い展開となっている。ドル/円が今月4日に付けた5年ぶり高値の116.35円前後を更新するためには、内外の株価が落ち着きを取り戻す必要がありそうだ。