女性が毎月悩まされる「生理」。生理の辛さは個人や状況によって大きく違い、普段は軽くても「今回は動けないほどおなかが痛い」となることもあります。
生理の期間中に仕事をすることが難しいほど辛い場合に取得できるのが「生理休暇」です。この生理休暇は労働基準法で定められたものですが、「存在そのものを知らない」あるいは「存在は知っているけれども『ずるい』と思われそうで使えない」という人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、生理休暇についてどのような制度なのか、有給か無給か、取得できる日数や取得上の注意点などについて解説します。
生理休暇とは
生理休暇とは、生理が重く、働くことすら難しい状態のときに女性が利用できる休暇のこと。「生理休暇」という名前だと利用しづらい・対象が狭いとして「母性保護休暇」などに名称変更している企業もあります。
労働基準法に定められているため、会社の就業規則になくともどの会社でも利用できますし、もし会社側が生理休暇を拒否するようであれば罰労基法違反となります。
労働基準法の適用外となる公務員にも、同内容の制度が定められています。
有給か無給か
生理休暇そのものは定められていますが、有給か無給かについての規定はありません。そのため、生理休暇を有給にするか無給にするかは企業によって異なります。
厚生労働省が行った2015年の調査によると、生理休暇を有給としている会社の割合は25.5%、そしてそのうち70.6%が全期間全額支給です。
全期間支給でない場合は、「最初の2日間のみ支給」などと、支給する日数に上限を設けるのが一般的。全額支給にしないことで、不正に利用されないようにしているのです。
生理休暇の取得率
多くの働く女性が利用できる生理休暇ですが、厚生労働省が2015年に調査したデータによると、女性が在籍している事業所において、1年間に生理休暇を請求した女性の割合は0.9%でした。事業所の割合でいうと2.2%になります。
つまり、多くの人が対象になっているにも関わらず、実際に利用している人は1割にも満たない数なのです。
2007年に実施された全国労働組合総連合女性部の調査によると、「人員の不足や仕事の多忙で職場の雰囲気として取りにくい」「苦痛でないので必要ない」「恥ずかしい、生理であることを知られたくない」が生理休暇を取得していない理由として高ポイントとなっています。
生理が辛いとしても、生理であることをいいにくい、忙しくて休みを取りにくいなどの理由から我慢して働いている女性が多くいることが分かります。
生理休暇の取得方法
働く女性の権利として認められている生理休暇ですが、実際に利用したことのある人は少数。「使いたいけれども、実際にどのように使えるのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。
生理休暇の対象となる範囲や、使い方について知っておきましょう。
正社員でなくても生理休暇は取れる
生理休暇の対象となる社員は、雇用形態に関係ありません。
そのため、正社員でなくとも、パートや契約社員、派遣社員などどのような契約でも利用が可能です。
申請は当日でOK
生理は突然来てしまうこともあります。また、来ると予想ができていてもその重さは実際に来るまでわからないもの。
そのため、生理休暇は普通の休暇のように事前申請制ではなく、口頭での当日申請もOKとされています。
PMSも「生理休暇」の対象になることも
生理が辛いのは、生理当日だけではありません。中には、生理が来る前に起こる月経前症候群(PMS)や月経前不機嫌症候群(PMDD)による痛み、精神的な症状の方が辛い、という人もいます。
厚生労働省では、生理休暇を生理当日のみ対象とするかどうかは定めていません。 会社の判断に委ねられているため、会社によっては月経前症候群などの症状であっても生理休暇として扱われる場合もあります。
「生理当日は大丈夫だが、その前の症状が辛い」という人は、一度会社に「どこまでが生理休暇として認められるか」を確認しておくといいでしょう。
時間単位で取得できる
生理休暇は「生理で業務に支障が出る時」に取得可能。つまり、1日単位でなくとも午前や午後、時間単位でも休めます。
体調や業務に合わせて、数時間だけ休んだり、少し軽くなってから出勤したりなど柔軟に休暇を取れるようになっているのです。
取得日数に制限はない
生理は人によって長さが違いますし、また生理不順の人や生理周期が短い人などは月に2回来ることもあります。そのため、生理休暇は「月に◯日」などの定めなく、社員が求めるだけ付与されるようになっています。
ただし、生理休暇のうちどれだけが有給になるかはまた別の話ですので、混同しないようにしましょう。
生理休暇を取得する際の注意点とは
「生理が辛いから休みたい」と思った時、あるいは部下などから「生理休暇を取りたい」と相談された際には、どのような点に注意すればいいのでしょうか。
以下では、生理休暇を取る上での注意点を解説します。
診断書は必要ない
生理痛があまりにもひどい時には病院に行くべきですが、病院に行ったからといって必ずしもすぐ楽になるとは限りません。また、その時によって生理の重さも異なります。
そのため、通院や投薬治療をしていなくとも生理休暇は取得できます。「仕事ができないほど辛い」状況で病院に行くのも負担が大きいため、診断書も必要ありません。
「本当に辛いのか」と疑わしく思うこともあるかもしれませんが、生理について根掘り葉掘り聞くことはセクシャルハラスメントになってしまうため注意しましょう。
どうしてもという際には、同僚の証言などがあれば十分とされています。
不正取得は絶対NG
生理休暇は「仕事ができないほど生理が辛い」人のためのもの。生理だからといっていつでも誰でも取得できるわけではありません。
過去の判例では、生理休暇を取得した夜に遠出をし、不正取得とみなされ懲戒として休職処分されたケースでは、3カ月程度であれば有効と判断された事件もあります。生理休暇を取る社員全体への信頼を低下させてしまうので、どうしても仕事ができないほど辛いときにのみ、最低限使用するようにしましょう。
有給などに影響がある場合も
年次有給休暇を得るための条件として、「全労働日の8割以上を出勤している」という基準があります。
生理休暇は労働基準法で規定された権利ではありますが、休暇を取った際に出勤扱いとすることを定めているわけではありません。企業の就業規則によって、生理休暇を出勤扱いとするかどうかは異なるのです。
そのため、生理休暇を欠勤扱いにする企業の場合、生理休暇を取りすぎてしまうと次の年の有給休暇がなくなってしまう可能性があります。
欠勤扱いですので、会社によってはその他精勤手当や皆勤手当にも影響が出てくるでしょう。生理休暇を取る前には、就業規則を確認して、どのような扱いになっているかを確認しておきましょう。
海外には「生理休暇」はない?
生理休暇を英語にすると「menstrual leave」になりますが、そもそもヨーロッパに生理休暇は存在せず、日本をはじめとした韓国や台湾などアジア圏を中心とした制度となっています。
2017年にはイタリアでも生理休暇の制定について審議されましたが、結局制定には至りませんでした。
生理休暇については、ヨーロッパでも「女性を弱者として取り扱うことになる」あるいは「女性優遇である」などの議論があります。
イタリアでは2017年に生理休暇の制定について議論されました
正しく使えば強い味方になる生理休暇
生理が辛くても、「生理で休みたいなんていいにくい」「『ずるい』と思われそう」と頑張って仕事をしている女性は多いでしょう。 しかし、無理をして出勤しても結局仕事が全くできなかったり、痛みや貧血で倒れてしまったりするようではかえって一緒に働く皆に迷惑をかけてしまいます。
どうしても生理が重くて仕事ができない、という人は、就業規則などを確認した上で生理休暇を利用すれば、より健康で元気に働く助けになるでしょう。