所得控除の一つである「一般生命保険料控除」。対象の人は会社の年末調整で申請する必要があります。ただ、保険料を支払っていても控除を忘れてしまう人がいるかもしれません。また、上限や計算方法を把握しておらず損をしているケースもあるでしょう。
そこで今回は、一般生命保険料控除について詳しく解説します。
一般生命保険料控除とは
より安心して生活できるように各種保険に加入し、特に何らかの生命保険に加入しているという方も多いでしょう。しかし生命保険の保険料も決して安いとは言えず、悩みの種になっているという方もいるかもしれません。
生命保険料を支払うことによって、税制面での優遇を受けられる制度が一般生命保険料控除です。生命保険料控除にはいくつかの種類があり、それぞれ違いがあります。
ここではほかの保険料控除との違いなどについてご紹介します。
個人年金保険料控除との違い
個人年金保険とは、その名のとおり個人年金に関するものです。個人年金に関する保険料は控除の対象となります。ただし、控除の対象となるためには払込期間が10年以上あり、支払い開始年齢が60歳以上で年金支給年数が10年以上といった要件があるため注意が必要です。
控除の上限額に関しては一般生命保険料と同じです(平成24年1日1日以降締結)。
介護医療保険料控除との違い
平成24年の制度改正によって新設されたのが介護医療保険料控除です。医療保険で入院や通院の保障がある場合もこの区分にあたります。
以前は一般生命保険料控除と個人年金保険料控除のみでしたが、新たに介護医療保険料控除も追加されることで、制度全体の控除限度額が上がりました。まだ旧制度で申告を行っている方は確認してみましょう。
一般生命保険料控除の対象
一般生命保険料控除といっても、すべての生命保険が控除の対象となるわけではありません。ここでは一般生命保険料控除の対象となる保険について詳しくご紹介します。
対象となる保険商品
生存、死亡により一定額の保険金が支払われる保険が対象となり、定期保険、終身保険、収入保障保険、学資保険等があります。
対象になる保険の範囲
一般生命保険控除の対象となるのは、保険金受取人が契約者または配偶者、そして親族である保険の保険料にあたります。
生命保険であっても一部の特約などに発生する保険料は控除の対象とならないケースが多いので注意が必要です。
5年未満の貯蓄保険は対象外
貯蓄型の生命保険も控除の対象になりますが、例外として保険期間が5年未満の貯蓄保険は控除の対象にはなりません。また、財形保険や団体信用生命保険なども対象にならないため事前に確認しておきましょう。
一般生命保険料控除の上限
一般生命保険料控除の額は保険料によって上下します。基本的には保険料が高くなればその分だけ控除額も大きくなります。しかし、控除額には上限が設けられており、それを越えると一律になります。ここでは一般生命保険料控除の上限額について詳しく紹介します。
新旧における上限の比較
一般生命保険料控除には、旧制度と平成24年に改正された新制度の2種類があります。それぞれ上限が異なるので比較していきましょう。
旧制度では一般生命保険料控除の上限額は所得税が5万円、住民税が3万5,000円でした。それに対して新制度では一般生命保険料控除の上限額は所得税で4万円、住民税が2万8,000円です。
このように一般生命保険料控除のみに注目すると新制度になって控除額の上限が下がっているように思えるかもしれません。しかし、生命保険料控除の総額で考えると、新制度では護保険料控除が新設されたため、全体の上限額は少し上がっています。
保険の種類によっては上限額変更の恩恵を受けることができないので、自身が加入している保険をしっかりと確認したうえで申告するようにしましょう。
一般生命保険料控除の計算方法
一般生命保険料控除の仕組みがわかると、金額が気になるという方も多いでしょう。ここでは一般生命保険料控除の計算方法を紹介します。
旧制度の計算方法
旧制度における所得税の控除額計算方法は以下のとおりです。
年間の保険料 | 控除額 |
---|---|
2万5,000円以下 | 年間の保険料全額 |
2万5,000円超~5万円以下 | 年間の保険料×1/2+1万2,500円 |
5万円超~10万円以下 | 年間の保険料×1/4+2万5,000円 |
10万円超 | 一律5万円 |
旧制度における住民税の控除額計算方法は以下のとおりです。
年間の保険料 | 控除額 |
---|---|
1万5,000円以下 | 年間の保険料全額 |
1万5,000円超~4万円以下 | 年間の保険料×1/2+7,500円 |
4万円超~7万円以下 | 年間の保険料×1/4+1万7,500円 |
7万円 | 一律3万5,000円 |
年間の保険料によって計算方法は異なるため、しっかりと確認したうえで計算するようにしましょう。
新制度の計算方法
続いて新制度の計算方法について紹介します。
新制度における所得税の控除額計算方法は以下のとおりです。
年間の保険料 | 控除額 |
---|---|
2万円以下 | 年間の保険料全額 |
2万円超~4万円以下 | 年間の保険料×1/2+1万円 |
4万円超~8万円以下 | 年間の保険料×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
新制度における住民税の控除額計算方法は以下のとおりです。
年間の保険料 | 控除額 |
---|---|
1万2,000円以下 | 年間の保険料全額 |
1万2,000円超~3万2,000円 | 年間の保険料×1/2+6,000円 |
3万2,000円超~5万6,000円 | 年間の保険料×1/4+1万4,000円 |
5万6,000円超 | 一律2万8,000円 |
新制度では上限のみでなく、計算方法も変わっているのでしっかりと確認することが大切です。
一般生命保険料控除は年末調整で申請
一般生命保険料控除を受けるには、申告する必要があります。ここでは一般生命保険料控除の申告について紹介します。
一般生命保険料控除証明書などを会社に提出
サラリーマンの場合、一般生命保険料控除を受けるためには生命保険会社から届く「保険料控除証明書」を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付して年末調整時に勤め先に申告する必要があります。
申告のための書類をそろえる必要があることを考えて、早めに控除の対象になる保険などを確認しておきましょう。
生命保険料控除の申請方法
会社に所属している給与所得者の場合「給与所得者の保険料控除申告書」を記入して、保険会社から届いた控除証明書と一緒に提出しましょう。あとの手続きは基本的に勤務先で行われます。
もし、控除の申告を忘れてしまった場合、翌年に確定申告を行う必要があります。
一般生命保険料控除について正しく理解しておこう
一般生命保険料控除はご加入の生命保険の保険料が所得控除の対象になり、優遇措置を受けられます。
制度の概要を理解し、税制面で有利になるように前もって確認しましょう。