A級順位戦は佳境に。本日の結果によっては斎藤八段の挑戦が確定

渡辺明名人への挑戦権を争う第80期順位戦、(主催、朝日新聞社・毎日新聞社)は、1月11日にA級の豊島将之九段(3勝3敗)―山崎隆之八段(1勝5敗)戦と、広瀬章人八段(3勝3敗)―菅井竜也八段(2勝4敗)戦が東西の将棋会館で行われました。

豊島―山崎戦は山崎八段の先手番で、相掛かりとなります。中盤は9筋の端攻めから駒得に成功した豊島九段がリードしましたが、敵玉に両サイドから迫った山崎八段の反撃も強烈で、難しい形勢が続きます。

■豊島九段が難解なねじり合いを制す

終盤の入り口で打たれた59手目の▲3三歩。これは金取りですが、この瞬間、先手陣に一瞬のスキが生じました。豊島九段の△3五香がそれを見逃さない一着です。直前に打った歩がたたり、先手は香車を歩で受けることが出来ません。勢い▲3二歩成△3七香成という取り合いになりますが、成り駒が敵玉に近い分、後手に分がある進行です。最後は豊島九段が押し切って、90手で勝利しました。

広瀬―菅井戦は後手の菅井八段が三間飛車に振っての対抗形となりました。長い中盤が続きましたが、終盤の入り口では広瀬八段がリードしていたようです。ですが菅井八段は丁寧な頑張りで決め手を与えません。いつしか広瀬八段の攻めが細くなっていきます。

■菅井八段は持ち前の粘り強さを見せて貴重な3勝目

そして打たれた134手目の△8二香が攻防の決め手となりました。自玉の脅威となっている8三の成桂を追い払おうという手。安い駒で済ませるなら△8二歩もありそうですが、香を打つことで先手が攻めをつなごうとする▲8四歩に対して△同金▲同成桂△同香と、盤上の攻め駒を一掃できるのです。しかも残った8四の香車は攻めにも利いています。最後は刀折れ矢尽きる形で広瀬八段が投了しました。

この結果、豊島九段が4勝3敗、広瀬八段と菅井八段が3勝4敗、山崎八段が1勝6敗となり、山崎八段の降級が決まりました。降級のあと1枠は現時点で4勝以上の斎藤慎太郎八段、豊島九段、糸谷哲郎八段を除く6名にまだ可能性があります。中でも現在2勝5敗の羽生善治九段は、次節の永瀬拓矢王座との一戦で敗れると、最終局を待たずに降級が決まってしまいます。

残る7回戦の2局は、本日に佐藤康光九段―糸谷八段戦が行われており、もし唯一の2敗である糸谷八段が敗れると、2戦を残して斎藤八段の挑戦が決まります。また明日は永瀬王座―佐藤天彦九段が予定されています。死闘が続く順位戦ですが、最後に笑うのは果たして誰なのでしょうか

相崎修司(将棋情報局)

ねじり合いを制した豊島九段(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの)(提供:日本将棋連盟)
ねじり合いを制した豊島九段(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの)(提供:日本将棋連盟)