俳優の松山ケンイチが主演を務める舞台『hana-1970、コザが燃えた日-』が9日に東京・東京芸術劇場プレイハウスにて開幕した。
同作は演出家・栗山民也が長年見つめてきた沖縄を題材に、こまつ座『母と暮せば』でもタッグを組み信頼を寄せている作家・畑澤聖悟に書き下ろしを託した新作。1970年12月20日未明、コザ騒動の裏側で起きた、ひとつの家族の物語を描く。
松山は約4年ぶり4作目の舞台出演となり、初の会話劇に挑む。事前に沖縄にて現地の方々の話を聞いて回り、稽古中も物語当時の資料を読み込みながら謙虚に真摯に作品と向き合っているという。またドラマや映画で個性的な存在感を放ち活躍目覚ましい岡山天音が、松山と血の繋がらない弟に。数多くの映像作品に出演、栗山作品への参加は約30年振りとなり「これが最後の舞台かもしれない」と語る余貴美子が、2人を拾い育てた母親を演じる。
ハルオ(松山ケンイチ)は終戦当時、戸籍がなく名前も年齢も分からない推定4歳の子どもであり、隣に住むアキオ(岡山天音)と同じくらいの年齢に見えたが少し身体が大きいからという理由で兄とされた。おかあ(余貴美子)は2人を拾い育て、配給や援助金をもらうために収容所にいたジラースー(神尾佑)に声をかけ、即席で4人家族ができる。それから月日が経ち、今やバラバラになっていた「偽の家族」が、久しぶりに家のあるバーに集まった。アメリカ軍施政下での圧力や人権侵害に翻弄され続けていた彼らは、さまざまな想いを胸に秘めていた。彼らの妹ナナコやおかあが匿っていた脱走兵ミケ、アキオがデモ帰りに連れてきた本土から来たルポライターらをきっかけに、家族は次々と本音をぶつけ合い向き合っていく。
東京公演は東京芸術劇場プレイハウスにて9日〜30日、大阪公演は大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて2月5日〜6日、宮城公演は宮城・多賀城市民会館にて2月10日〜11日。
松山ケンイチ コメント
本日、無事に初日を迎えることが出来て一安心です。ただそれに尽きます。無事に始まった舞台を無事に終わらせる。これが全ての望みです。これしか望んでいません。このまま、日々気を付けながら取り組んでいきたいと思います。
岡山天音 コメント
『hana-1970、コザが燃えた日-』は非常にビビットでありながら、素朴なメッセージが込められた作品だと思います。皆様がこの物語をどう受け止めてくださるのか、これから公演が進むに連れ、果たして自分がどこに漂着するのか、期待が高まります。今回、久し振りに舞台に携わり、舞台の刹那的な在り方と出会いました。劇場に足を運んで下さる皆様と、そこにしか芽吹かない「その瞬間」に全身を浸して行きたいです。
余貴美子 コメント
まさに今のこのコロナ禍のように、沖縄・日本・アメリカとの間で揺れ動くテーマの作品ですが、新しい年の始まりに力づけられる、勇気づけられるような物語になっていると思います。沖縄言葉には難儀しましたが、沖縄の明るさや底力というのはその言葉にもあると思っていて、私は沖縄の人ではないけれど、沖縄の言葉を口にすると元気になります。血のつながらない家族が苦難を乗り越えて再生していくという内容ですので、台詞を言う度に明るさと底力で乗り切っていこうという気持ちになります。皆さんにもぜひ、この"言葉との出会い"を楽しんで、元気になっていただけたらと思います。
演出・栗山民也 コメント
手を取り合って『hana』の初日の公演を終え自宅に戻るところなのですが、クイーンの「手を取り合って」が無性に聴きたくなって、車の中でかなりの音量で聴いています。カーテンコールで観客と一緒になって大きく拍手しながら、「人間の鎖」のことを考えていました。米軍基地を取り囲んだ沖縄の「人間の鎖」。小さな力かもしれない一人ひとりの力が、手を取り合うことで繋がれ、硬く口を閉ざした巨大な固まりをぐるりと包囲する。なんだか熱くいろんなことが、今、クイーンの音楽とともに頭の中を駆け巡っています。沖縄のみんなと酒場にいるような、熱くてとても柔らかな気分。
撮影:田中亜紀