「ICT × eスポーツ」を通じた取り組みを行うNTTe-Sportsは12月16日、高齢者のレクリエーションと健康増進、そして新しい娯楽の提供を目指し、タイトー「EGRETII mini(イーグレットツー ミニ)」を使用したゲーミングレクリエーションを実施した。NTTe-Sportsと、ゲーミングレクリエーションを実施した介護付きホームを運営するSOMPOケアにその狙いを伺うとともに、参加者の感想を聞いてみよう。
SOMPOケアの介護付きホームに「EGRETII mini」を用意
今回、ゲーミングレクリエーションのトライアルが行われたのは、埼玉県所沢市にある介護付きホーム「SOMPOケア ラヴィーレ東所沢」だ。
レクリエーションに用いられたゲーム機は、タイトーから2022年3月2日に発売される予定の「EGRETII mini(イーグレットツー ミニ)」。「スペースインベーダー」や「奇々怪界」、「影の伝説」「ダライアス外伝」など、オールドゲーマー垂涎のタイトルが40種類収録されている。ディスプレイを内蔵した小型筐体で、本体だけで遊べるだけでなく、HDMI出力も可能。さらにコントローラーを追加して対戦・協力プレイもできる。
入居者も白熱したゲーミングレクリエーション
会場となる食堂スペースには、NTTe-Sportsが用意したゲーム機とコントローラー、大型モニターを設置。午後2時からゲーミングレクリエーションがスタートした。内容は、パズルゲーム「パズルボブル2X」の対戦プレイとなる。
始めに身体をほぐす体操を約10分間実施。その後、プレイする6名の入居者がくじ引きで2つのチームに分けられた。なお、この6名は当日の午前中までに同タイトルを一度プレイしているそうだ。
遊び方の説明、そしてイベントスタッフによるテストプレイを終えると、実際に対戦がスタート。プレイした高齢者の方々は、最初は「どうやるの?」「難しいね」などと口にしながら遊んでいたが、徐々に口数も減ってプレイに集中し始め、ゲームを終えると笑い声を上げたり、ちょっと悔しげな表情を浮かべていたのが印象的だった。
また、今回プレイしなかったみなさんも、勝敗が決すると歓声を挙げ、拍手で祝福していた。ゲームを終えた後は再びストレッチで凝った身体をほぐす。これで30分強のレクリエーションは終了だ。
ゲームを実際にプレイした大島稔之佑さん(90)は、ゲーミングレクリエーションの感想を次のように話す。
「こういうゲームを見たことはあったけど、操作したのは初めてです。孫たちが遊んでいると思うのですが、若者向けだと思いこれまで関心がなかったんですよね。実際やってみると頭も手も使います。私は頭ばかりが先行して、手がおろそかになってしまいました(笑)」(大島さん)。
そして、本番ではついつい力が入り練習時のようにできなかったと笑って話しつつも、ぜひ続けて遊んでみたいと話してくれた。
「やり始めるとすぐに時間が経っちゃうので、やり込むよりもさらっと遊ぶくらいがいいのかもしれませんね。ホームのみなさんも上手に遊ばれていましたから、最初のコツさえ覚えればお年寄りでも楽しめるなと感じました。『EGRETII mini』は事務所に置いておくと聞いたので、また触ってみたいと思います」(大島さん)。
高齢者の人生にもう一度彩りを
こうして盛況のうちに終わったゲーミングレクリエーション。だがホームに入居しているみなさんは、ゲームを当たり前に遊んできた世代と異なりゲームに馴染みがない。「実施するまでが大変だった」とSOMPOケア ラヴィーレ東所沢 ホーム長の石澤彰吾氏は語る。
「実際にデモプレイ機をお借りして、『一緒にやりましょう!』と声をかけて、ようやく今日にこぎ着けました。やはり、苦手なことへのチャレンジや負けることへの抵抗感があった方が多い印象です」(SOMPOケア 石澤氏)。
だが、実際にレクリエーションを実施して、その反応にほっと胸をなで下ろしているという。
「想像以上に楽しんでもらえました。プレイされた方は継続的に遊びたくなっていると思うので、まずはこのラヴィーレ東所沢の中でゲームを根付かせることが重要かなと感じます。これがうまくいったら、SOMPOケアの中でも広めていきたいですね」(SOMPOケア 石澤氏)。
コロナ禍で人と人との接触が減ったため、SOMPOケア内ではZoomやFaceTimeなどのツールを活用したコミュニケーションを実施したホームもあったという。この延長として、ゲームをオンラインで楽しめるような環境を作っていきたいと石澤氏は話す。
「SOMPOケアでは、『もう一度人生に彩りを』をコンセプトに、入居者のみなさんの『できること探し』をお手伝いしています。お家で過ごすのも良いのですが、食事をするにもお風呂に入るにも大変で、誰かを頼らなくてはならないでしょう。入居者が『できること』を尊重しつつ、『したいこと』を考え、実現する……今回のトライアルもその一環だと考えています」(SOMPOケア 石澤氏)。
eスポーツは優秀なコミュニケーションツール
NTTe-Sportsの金 基憲氏は「レクリエーション自体はQOLの向上、健康維持増進などに活用されていますが、そこにeスポーツを活用する意味はふたつあると思っています」と述べ、その理由を説明する。
「ひとつ目は、レクリエーションのマンネリ化を防ぐことです。繰り返すと飽きてしまうレクリエーションに対して、eスポーツは練習して上達していくこと自体が楽しいものです。また、対戦ゲームであれば競争相手がいて、長い間打ち込むことができます。ふたつ目は、新しいメニューを考えたり運営したりといった、レクリエーションを行う現場の負担軽減です。NTTe-Sportsでは、機材・講師・進行役をセットで提供するプランを考えています」(NTTe-Sports 金氏)。
ゲーミングレクリエーションを実施するにあたっては、ゲームセンターにあるモグラ叩きやクレーンキャッチャーなども検討。しかし、実際にこの「SOMPOケア ラヴィーレ東所沢」を見学し、年齢層や身体負担を考えた結果、テレビゲームに決まったそうだ。
ゲームタイトルとして「パズルボブル2X」が選ばれた理由は、「ルールが単純であること」「見た目がわかりやすいこと」「操作が簡単であること」、そして「色彩や音声が華やかで、ギャラリーも楽しめること」だったという。
「NTT東日本グループとしてゲーミングレクリエーションに取り組むことで、楽しさはもちろんのこと、安心・安全なものを、広く必要とされる方に届けられる体制を作っていきたいと思います。今後はデイサービスや自治体のコミュニティなど、さまざまな場に提供していきたいですね」(NTTe-Sports 金氏)。
金氏は、最後にNTTe-Sportsが目指す方向性について、次のように述べた。
「NTTe-Sportsは、eスポーツを単なる競技ではなくて、年代や性別などの壁を越えられる優秀なコミュニケーションツールだと考え、さまざまな分野に応用を進めています。例えば最近は、企業のレクリエーション向けに『eスポーツ×社内レクパッケージ』をリリースしました。オンラインで繋がれることもeスポーツの良い点ですので、離れて暮らすご家族と遊んでもらったり、施設間を繋げて大会を開き、それをご家族がインターネットから応援したり、といった形にまで広げていきたいです」(NTTe-Sports 金氏)。