「差し支えなければ」という言葉は、家族や友人などとの普段の会話ではあまり使われない表現です。一方、ビジネスシーンでは多用されるだけに、正確な意味や使い方がわからず困った経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
今回は「差し支えなければ」の意味や読み方、会話の中での適切な使い方を例文付きでくわしくご紹介します。
「差し支えなければ」の意味と読み方
「差し支えなければ」という言葉はビジネスシーンで使われることが多い表現ですが、その意味を深く考えたことはないという方も多いでしょう。
相手に何かをお願いする際に頭につける言葉程度に考えてしまいがちですが、正しい意味を理解せずに使用してしまうと誤解を与えたり、こちらの意図が正しく伝わらなかったりする可能性もあります。
まずは、「差し支えなければ」の意味や読み方についてくわしく解説します。
「差し支えなければ」の意味
「差し支えなければ」は、相手へ依頼するときの前置きとして「都合が悪くなければ」と丁寧に伝える意味があり、何かお願いするときに表現を柔らかくするクッションとして使います。
「差し支えなければ」は、相手の都合や予定などを配慮しながらお願いするといったニュアンスで使われることが多い表現です。こちらの依頼をそのまま押しつけるのではなく、相手に選択の余地を残すという意味合いもあります。
このように「差し支えなければ」は、お願いしたいけれど断られても仕方ないといった依頼ごとをする際に使うようにしましょう。
「差し支えなければ」が使えない場面
前述の通り「差し支えなければ」という言葉には相手に選択の余地を残しながらお願いをするという意味合いがあるため、「ぜひともお願いしたい」というシーンで用いるのは適切ではありません。
「差し支えなければ」は断られたとしても、別の方法で解決できる可能性が高い場合に使う言葉として覚えておきましょう。
「差し支えなければ」の読み方
「差し支えなければ」は「さしつかえなければ」と読みます。「支え」は「ささえ」とも読むことができますが「さしささえなければ」は誤りです。
この言葉は口に出して使うことが多く、文字になったときに読み誤ってしまうケースも考えられますので注意しましょう。
「差し支えなければ」は敬語?
すでに説明した通り「差し支えなければ」は、何かをお願いする際に相手に選択肢を残す配慮の表現です。丁寧な表現であることから敬語のように思われがちですが、敬語ではありません。
そのため、社外の人や上司など目上の方に対して使用する場合は、その後の表現をしっかりと敬語にする必要があります。
具体的には目上の方に何かを依頼するときに「差し支えなければお願いします」ではなく「差し支えなければお願いいたします(お願いしてよろしいでしょうか)」といった形で、続く言葉を敬体に変換することが大切です。
「差し支えなければ」を使う際の注意点
「差し支えなければ」という言葉は、「都合が良ければ」といった意味合いで使用されます。ビジネスシーンをはじめさまざまな場面で使える言葉ですが、いくつかの注意点があります。
依頼ごととセットで使う
言葉の意味からもわかる通り、「差し支えなければ」は依頼ごととセットで使用するのが一般的です。依頼ごと以外の形であれば、招待するといった場面で使われることもあります。
いずれにしても、相手に対して何らかのアクションをお願いする際に、表現を柔らかくするためのクッション言葉として使いましょう。
依頼する内容を考えて使うことが大切
「差し支えなければ」は依頼や招待などと一緒に使われる表現です。そのため、依頼の内容を考えて使うようにしましょう。
先ほども触れましたが「差し支えなければ」という言葉には、「相手に選択肢を与える」または「無理であれば断られてもかまわない」といったニュアンスがあります。
「断られたら困る」あるいは「受けてもらえることを前提とした依頼」では、使わないようにしましょう。
相手に配慮ができる表現
「差し支えなければ」は相手に配慮する言い回しです。前述の通り敬語ではありませんが、社外や目上の方に対しても使用可能です。配慮しなければならない場面での依頼でも、非常に使いやすい表現ですので頭に入れておきましょう。
「差し支えなければ」への返答
「差し支えなければ」を用いた依頼に対する返答には、明確なルールはありません。選択肢を与えられた依頼ですので、場合によっては断ることができます。
しかし、相手が配慮して依頼してくれているため、もし断るのであればこちらも丁寧な表現で返答するようにしましょう。
「差し支えなければ」の言い換え表現
「差し支えなければ」の言い換えを頭に入れておくことで、さらに表現の幅が広がります。
「よろしければ」「もし良ければ」
「差し支えなければ」のもっとも言い換えやすいクッション表現として挙げられるのが、「よろしければ」や「もし良ければ」です。ほぼ同じ意味で使える置き換え表現ですので覚えておきましょう。
「可能であれば」
依頼ごとに「可能であれば」を付け加えることで、相手に選択肢を与える表現になります。そのため、「差し支えなければ」と同じニュアンスで使用可能です。
「可能であれば」は口頭のみでなく、メールなどの文面でも使いやすい言葉のひとつといえます。
「差し支えなければ」の英語表現
「差し支えなければ」の英語表現には、全く同じ意味合いの言葉はありません。ここでは、似た意味合いで使える英語表現をご紹介します。
・If you don't mind
・If I may ask
・If you are OK,
「If you don't mind」には「あなたが気にならないなら」といった意味があり、日本語における「差し支えなければ」と似た表現として使えます。質問に対して使うのであれば、「質問してよろしければ」を意味する「If I may ask」、「もしあなたが大丈夫なら」であれば「If you are OK,」がそれぞれ使用可能です。
「差し支えなければ」の使い方と例文
「差し支えなければ」はいろいろなシーンで使える言葉ですが、正しい使い方ができなければコミュニケーションに誤解を生む可能性があります。
ここでは、シーン別に具体的な例文を挙げながら正しい使い方を説明します。
ビジネスシーンでの使い方
まずはビジネスシーンにおける「差し支えなければ」の適切な使い方を例文でご紹介します。
・差し支えなければ、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。
・差し支えなければ、このあと食事をご一緒しませんか。
・差し支えなければ、こちらにお名前と住所をご記入ください。
「差し支えなければ」は依頼するときや何かを尋ねるときなどに、印象を柔らかくするクッション言葉として使うようにしましょう。
日常会話で目上の方に対する使い方
前述の通り「差し支えなければ」は敬語ではありませんが、丁寧な表現ですので目上の方に対しても問題なく使える表現です。
・差し支えなければ、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。
・差し支えなければ、先日のご提案の詳細をお聞かせ願えますか。
・差し支えなければ、先日の件についてご教示いただけますでしょうか。
目上の方に対して使用する場合、「差し支えなければ」という表現そのものは敬語ではないため、続く言葉を敬体にするようにしましょう。
メールでの使い方
「差し支えなければ」は口頭で使われることの多い言葉のひとつですが、メールなどの文面でも使用できます。
・差し支えなければ、後日面談のお時間をいただけませんでしょうか。
・差し支えなければ、添付の資料を次回の会議までにご確認ください。
・差し支えなければ、当社までお越しいただけませんでしょうか。
メールの場合も、基本的に会話と同じような形で使用します。
「差し支えなければ」を正しく理解しよう
「差し支えなければ」は相手への依頼ごとなどとセットで使われる言葉で、表現を柔らかくしたり、相手に選択肢を与えたりするというニュアンスがあります。相手に対して配慮する言い回しでもあるため、ビジネスシーンや目上の方に対して使いやすい言葉です。
今回ご紹介した「差し支えなければ」の正しい使い方や注意点などを頭に入れてコミュニケーションに役立ててみましょう。