Intelは米国時間の2022年1月4日に開催されたCES 2022の基調講演において、Alder Lake Mobileと、Alder Lake Desktop追加SKUを発表した。これについてまとめてご紹介したい。

Alder Lake Mobile

まずAlder Lake Mobileであるが、今回から45W枠のHシリーズと28WのPシリーズ、9/15WのUシリーズの3種類に整理されることになった。ハイエンドはHシリーズになるが、主な特徴はこちら(Photo02)。最大構成でP-Core×6+E-Core×8の14core/20Thread構成で、それに96EUのXe Graphicsが搭載される構成となる。ちなみにこのHシリーズのパッケージ(Photo03,04)やウェハ(Photo05)も公開された。ちなみにウェハの中心部を拡大したのがこちら(Photo06)だが、P-Core×6とE-Core×2のクラスタが2つで、これはDesktop向けのAlder Lakeとは明確に別ダイだと認識できる。

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    Photo01: P-Seriesは今回初登場。ただ今まではH-Seriesがベース35W/Configurable TDPで45Wに設定可能というややこしい構造だったのが整理されたともいえる。

  • Photo02: Hシリーズの特徴。概ねDesktop向けAlder Lakeのサブセットという格好である。

  • Photo03: CPUダイとPCHの距離が近いのが気になる。

  • Photo04: 結構な数のバイパスコンデンサが集積されているのが判る。

  • Photo05: ここから、Alder Lake-Hのダイサイズは概ね20.3mm×10.5mmといったところで、213.2平方mm程度と推定される。

  • Photo06: コアの中心(とRing Bus)の右にあるのがGPU、左がUncore部と思われる。

さて、そのHシリーズのハイエンドであるCore i9-12900HKの性能/消費電力の傾向がこちら(Photo07)。Core i9-11980HKはもとより、30W程度におけるRyzen 9 5900HXよりもずっと性能が高い、とする。ちなみに性能評価は下段にあるように、SPEC CPU 2017の結果である。Photo08がGaming Performanceでの比較で、モノによっては28%向上するとしている。こちら(Photo09)はRyzen 9 5900HXも混ぜてのものだ。

  • Photo07: 75W近くまで引っ張れるのは、例えばNUCなどには重宝されそうだが、Mobileにはどうだろう? あとApple M1 Maxを引き合いに出すのはどうかと思う。

  • Photo08: ただしGPUはGeForce RTX 3080なので、要するに描画が重いと殆ど性能差なし。描画が軽い時にはCPUネックに近くなるので性能差が出るというもの。

  • Photo09: ただ原稿執筆時点では動作環境がちゃんと確認できないのだが、また電源モードをBalancedか何かにしてるんじゃないかという気もする(この場合、Ryzenは立ち上がりが遅くなるのは既知の話である)。

新機能としては、内部のRing BusにQoSを掛けて、GPUの処理を優先することで描画性能を8%向上できる、という話があった(Photo10)。またHシリーズはワークステーション用途に使われる事を想定してか、Professional向けアプリケーションの対応も進めている様だ(Photo11)。Photo12・13がこうしたProfessional向けの性能評価であり、他の競合製品と比較しても十分高速だとしている。このHシリーズを搭載する製品は100製品以上を予定しているとの事。HシリーズのSKUはPhoto15の通りである。

  • Photo10: これはあくまでGame Title側で最適化を図れる、という話で一般ユーザーの側でどうこう出来るものではなさそうだが。

  • Photo11: ただこうしたProfessional向けのDisplay Driverまで出すのかどうかは不明であり、単にレンダリングとかエンコードが高速、というだけかもしれない。

  • Photo12: M1 Maxが出てくるあたりが流石ではあるが、直接的な競合はRyzen 9 5900HXとされる。

  • Photo13: こちらも同様の傾向。

  • Photo14: 「Intel史上最速の立ち上がり」だそうだ。

  • Photo15: 全部で8製品。トップエンドのみ倍率ロックオフのKになっている。流石にCore i3以下はラインナップされていない。定格は45Wだが、Max Turboだと95~115Wに。

次にPシリーズとUシリーズだが、今回はこちらに関する詳細な説明は無かった。ただSKU一覧は示されており、PシリーズはCore i7~Core i3までの6製品(Photo16)、UシリーズはTDP 15W(Photo17)とTDP 9W(Photo18)がそれぞれ7製品づつとなっている。

  • Photo16: TDPは28W/64W。E-Coreは8つで、P-Coreが2~6個となっている。

  • Photo17: TDPは15W/55W。Core i3以下にはvProは設定されない。

  • Photo18: TDPは9W/29W。流石にここは動作周波数がかなり低めである。

Alder Lake Desktop

ついでDesktopについて。2021年11月にはK/KF SKUが6製品のみであったが、今回一気に22製品が追加になった(Photo19)。IntelとしてはGPU統合のRyzen 7 5700Gあたりを競合と見なしているようで、Core i5-12600との性能比較(Photo20~23)がまず示された。ただ従来のRocket Lakeと比較しても十分に性能の伸びがある(Photo24,25)としている。

  • Photo19: TDPは65Wと35W。なのだが、Max Turbo時は65Wモデルが最大202W、35Wモデルも最大106W。そろそろTDPとの差をもう少し縮めてほしい気がするのだが...

  • Photo20: 性能差が一番大きいのがCrossMark、というあたりはちょっと微妙な感じ。ProcyonのOffice Productivityの方が実情に近い気がする。

  • Photo21: こちらはCore i9-12900も追加したもの。まぁCore i9-12900が最速なのは間違いないだろう。

  • hoto22: なぜかProcyonではなくPugetBenchを使っているあたりが良く判らない。

  • Photo23: こちらも最速はCore i9-12900となっている。

  • Photo24: Neroだと9%だから、有効スレッド数というかコアの数と考えると、今一つ伸びが足りない気もする。

  • Photo25: Game Benchmark。GeForce RTX 3080を使った場合の話で、まぁGPU性能が十分ならCPU性能がもろに反映されるのは当然ではある。

またチップセットして、新たにH670/B660/H610の各製品が追加で発表になった。まぁこれはZ690のサブセットという見方もできるのだが。またAMDのWealthクーラーに対抗(?)してか、新たにLaminarクーラーが発表された(Photo27)。

  • Photo26: チップセットはZ690も含めて全て14nmでの製造との事。

  • Photo27: "Available in-Box With 12th Gen Intel Core Desktop Processor"とあるように、CPUパッケージに同梱されることになるようだ。ただこれは65W製品のみらしい。

追加の話題としては、Desktop向けにもvProと組み合わせる形でProject Athenaベースの新しい取り組みが用意されるらしい(Photo28)。その取り組みの4つの柱がこちら(Photo29)で、今のvProをベースに、更に何か投入するという事らしい。このあたりは今後どんな話が出てくるのかを待ちたいところだ。既に140以上の企業がパートナーになっているという話で、具体的な成果物は近いうちに見えてくるのかもしれない。

  • Photo28: ただ「具体的に何?」という話が今一つ理解できない。

  • Photo29: これだけ見てるとビジネス向けPCに、vProの上にもう一層何か被せるだけな様に見えなくもない。

そのDesktop向け追加SKUであるが、TDP 65Wはこちらの13製品(Photo31)、TDP 35WのTシリーズはこちらの9製品(Photo32)となっている。

  • Photo30: ただこれ、単にvPro Essential/Enterpriseのパートナーとか対応ベンダーの数、という気もしなくはない。

  • Photo31: Desktop向け追加SKU、TDP 65Wまでの13製品。

  • Photo32: TDP 35WのTシリーズはこちらの9製品。

なお、この記事は基調講演開始前の事前資料を基にしているので、また実際の基調講演で新しい話があったら、追加レポートをお届けする予定だ。(2022年1月5日追記:デスクトップ向けAlder Lakeの高性能版、Intel Arc GPUの出荷情報に関する追加情報の記事を掲載しました)