「年だから」と容認してしまいがちなぽっこりお腹。しかし、メタボリックシンドロームは健康を損なう危険信号でもあるのです。お腹まわりをスッキリさせるために自転車がどのように有効なのか? 忙しくて運動習慣のない人こそ要チェックです!

  • 多忙な人こそ、自転車でスマートに脱メタボ!(2)

●教えていただく先生
立命館大学 スポーツ健康科学部
医学博士 家光素行 教授
筑波大学大学院医学研究科博士課程で博士(医学)を取得。「生活習慣病およびサルコペニアに対する運動効果と機序の解明」が主なテーマ。運動効果のメカニズムをDNA、遺伝子、細胞、組織、個体までを統合的に解析し、科学的根拠に基づいたトレーニング方法の開発を目指している。

■前編「多忙な人こそ、自転車でスマートに脱メタボ!(1)」はこちら

――メタボ対策になる運動とはどのくらいを目安にすればいいのでしょう?

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」では、今より10分多く、毎日からだを動かすこと(+10;プラス・テン)が推奨されています。仮に1日6,000歩程度歩いている人なら、さらにプラス・テン(+10分)で約1,000歩の歩数を増やすという計算ですね。プラス・テンはウォーキングなどの運動だけでなく、家事でも良いとされています。生活の中でできるだけ身体を動かすことを意識することが大切で、ビジネスマンなら通勤時間や仕事中の移動に歩行などの運動を取り入れることが一番の方法です。

――運動の強さはどうなのでしょう? やはり強いレベルの方がいいのでしょうか*?

長い時間、高強度で運動を行う方が、より効果が高いのは間違いないです。しかし、運動習慣のない人がいきなり高強度の運動を取り入れるのは現実的ではないでしょうし、継続できない要因になりますよね。脂肪を落とすことを目的とするなら中強度で充分。電車の時間に間に合わせようと早歩きして少し息が上がるという経験は誰にもあると思いますが、あのレベルで良いのです。また、2人でジョギングしながら会話できる程度のレベルの運動強度で十分ですね。最近の研究で一度にまとまった時間を確保して運動するのも、少しずつ何度かに分けて運動するのも、どちらでも運動効果が得られることがわかってきています。

――え? 20分以上運動しないと脂肪燃焼につながらないと思っていました!

そういう説が一般化していたようですが、実はそうでもないのです。たとえ10分の距離でも歩いた方がいいですし、運動した分は効果が加算されていきます。短い距離だから「ムダだ」と思わず、少しの時間でも運動につなげて足し算していきましょう。1日や1週間単位で運動の合計時間がどれだけあったかを確認するのがいいですね。

――それなら忙しい人でも運動しようと思えます。自転車で移動する時間も充分な運動になりますね。

自転車運動は水中運動と同様に、膝や腰への負担が少ないおすすめの運動法です。水中運動ならプールに行かないとできませんが、自転車はどこでもできますし、自転車を持っていれば基本的にタダでできます。ビジネスマンなど、毎日忙しい状況にある人が通勤や移動手段として用いれば、運動の時間をわざわざ設定しなくてもいいため、運動を継続できる大事なポイントとなります。また、太っている人は膝や腰の痛みを抱えているケースが多いので、メタボを解消するにはウォーキングよりも自転車運動の方が取り入れやすいでしょう。さらに、自転車運動をおすすめするには、もう一つ大きな理由があるのです。

――膝や腰に負担が少ない以外に、自転車にはどんなメリットがあるのですか?

多くの自転車には変速機が付いていますよね。これには運動強度を変えられるという重要な働きがあります。体調や路面状況に合わせて強度を変えられるということは、ツラさを軽減できる、つまりは運動のモチベーションを維持することにつながりやすいのです。さらに強度を上げ下げしながら走ることは、インターバルトレーニングと同様の脂肪燃焼の効率を上げることが期待できます。高めの強度で数分、次に強度を下げて数分、というように強弱のリズムをつけて走るのもいいでしょう。

――運動は飽きないように長く続けることが大切なのですね。

そうです。体脂肪が落ちたり、血液の数値が改善されるまでに時間がかかりますし、個人差もあります。まずは2〜3ヵ月を目安に続けて、体重や体脂肪などの変化を見てください。自転車やウォーキング、ジョギングを組み合わせて行うのも飽きないための工夫になります。最近は女性が痩せている傾向にありますが、筋肉量が少ないとエネルギー消費が少なくなるため、年を取ってから太りやすくなったり糖尿病や動脈硬化になる可能性があります。見た目だけでなく、体の中から美しさを維持するためにも、適切な身体づくりが必要です。

――メタボ解消だけでなく、美しい身体づくりのためにも体の中のケアが必要なんですね。将来を見据えて運動を意識することが大切だと感じました。先生、ありがとうございました。

■前編「多忙な人こそ、自転車でスマートに脱メタボ!(1)」はこちら

※この記事は「Cyclingood(サイクリングッド)」掲載「多忙な人こそ、自転車でスマートに脱メタボ!(2)」より転載しています。