エネルギーがフリーで使える社会を目指しエネルギーサービス事業を展開するLooopが、埼玉県さいたま市の浦和美園において「エネプラザ」を用いたスマートホーム・コミュニティ街区を運開した。「エネプラザ」は、スマートシティのための分散型エネルギーマネジメントシステムで、「令和3年度気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞している。浦和美園のエネプラザ街区は同社にとって初の取り組みとなり、メディアに街区が公開された。
電気の地産地消「エネプラザ」とは?
エネプラザと浦和美園の街区について、Looop電力事業本部企画開発部エネマネ企画課課長の荒井綾希子氏が解説。
現在、多くの地域では遠方で発電した電気を長い電線や配電線を用いて消費者へ届ける「集中型電力システム」が主流となっている。集中型の場合、大型発電所の停止が広域停電につながったり、再エネの接続に制約が発生したりすることがある。
浦和美園のエネプラザで導入されているのは、分割されたコミュニティ単位で電力の需給バランスを取り、その場で作った電気を地産地消していく「分散型電力システム」。太陽光パネルなどで創出した発電をコミュニティ内で消費することにより、遠方から送電されてくる系統電力への依存をきわめて少なくすることができる。また、大型発電所など上位系統が停電した場合でもコミュニティで自立して稼働。レジリエンスかつ脱炭素を担保したスマートホーム・コミュニティ街区となっている。
「エネプラザ」では、街区の中のエネルギー供給、シェア、マネジメントのすべてをLooopが担うシステムで、安定供給(Energy security)、環境性(Environment)、経済性(Economic efficiency)と安全性(Safety)といったより高度な3E+Sを構築。
無限の地域資源を循環させ安定した持続可能なエネルギー供給を行い、既存の系統電力へ負荷をかけずに再エネを導入し、CO2削減など環境へも配慮する。さらに街区内で電力を消費するため送電ロスなどが少なく、自家消費率を最大化させる制御を行う。系統停電時にはマイクログリッドが自動運転し、電力供給を継続する安全性も確保している。
一般的に太陽光発電の電力を各戸で単独消費する場合、再エネ自給率は30%ほど、蓄電池を導入しても50%ほどにとどまる。エネプラザ街区内の再エネ自給率は、60%超の実現を期待できるという。
浦和美園の街区は52区画51世帯。1区画が大型蓄電池やEV(電気自動車)などのチャージエリアとなっている。
2019年9月に環境省の平成31年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金へさいたま市とLooopが共同申請し採択された。51戸すべてに太陽光パネルが設置され、発電した電気はチャージエリアに集約され、各家庭に配電される。配電網などは共有のフットステップに埋没させており、電柱などは設置されていない。
また、ハイブリット給湯器がすべての家庭に設置されており、電気消費の大きい給湯は太陽光発電の余剰が発生するタイミングで沸き上げる独自の自立制御を実施し、電気料金を抑える。各家庭の電気料金は、太陽光発電の余剰に合わせて従量料金単価を変動させるダイナミックプライシング料金メニュー「みその再エネ電気」となっており、各戸に設置するデバイスにて、翌日の単価や電気使用量を表示できるようになっている。
料金メニューは3段階になっており、基本料金は2,500円。太陽光発電量よりも使用量が高い場合は30円/kwh、発電量と使用量が同程度であれば25円/kwh、発電量よりも使用量が少ない場合は20円/kwhとなっている。
翌日の料金単価はデバイスで確認できるため、発電量の多いタイミングに電力消費行動をとるように行動変容を促していく。また、街区に系統から供給される電力も、非化石証書を活用するため、街区の電力消費は実質的に再エネ100%を達成する。
今回は51戸での導入となったが、エネプラザを最大限に活用できるコミュニティの大きさについては今後も検討を重ねていき、全国のさまざまな地域で展開していきたいとしている。現状としては補助金があって成立する部分が大きいが、コミュニティに工場など企業を加えるなど、いろいろな形を検討してコスト面の改善を進めていく。現在、エネプラザ導入について、すでにいくつかの自治体などと交渉中とのこと。
浦和美園の街区は、2021年12月中旬に入居を開始。2022年春ごろには51戸すべての入居が完了する予定という。