レクサスはミドルサイズのプレミアムSUV「NX」をフルモデルチェンジした。注目すべきは、新たに追加となった電動モデル。具体的にはプラグインハイブリッド車(PHEV)がレクサス初登場となるのだが、全車種を電気自動車(EV)にすると宣言したレクサスの未来を占ううえでも重要なクルマだ。どんな走りなのか、試乗してきた。

  • レクサスの新型「NX」

    レクサスが2021年10月7日に発表した新型「NX」(本稿の写真は撮影:原アキラ)

新型NXは「次世代レクサス」の第1弾という位置づけ。世界中のさまざまなユーザーのライフスタイルに寄り添うことを目指し、電動化、デザイン、走りといったクルマの根幹となる部分を全面的に刷新した。

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    試乗のベースとなったのは長野県にあるテラス蓼科リゾート&スパ。早朝から丸1日、みっちりと試乗するプログラムであったため、前日の夜遅く現地入りしたのだが、クルマを降りた途端、頭上に「ビューンッ」とデッカイ流れ星が。この日は鹿の群れが現れたりもしたそうだ。ホテルのすぐ脇には、日本屈指のワインディングであるビーナスラインが。こうした場所で試乗会を開催するのだから、レクサスは新型「NX」の出来栄えに相当な自信を持っているに違いない

レクサス初のPHEVはどんなシステム?

最初に乗ったのが、電動化の象徴となるレクサス初のPHEVモデル「NX 450h+」だ。パワートレインは最高出力185PS、最大トルク228Nmの2.5L直列4気筒エンジンに、182PS/270Nmのフロントモーターと54PS/121Nmのリアモーターを組み合わせた「E-Four AWD」(電気式四輪駆動)。システム最高出力は309PSと強力だ。駆動用のリチウムイオン電池は容量51Ah、96セル、総電圧355.2V、電力量18.1kWhとこちらもハイパワー。フル充電にすると、電気だけで88kmを走行可能とのことだ。

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    試乗車のグレードは「バージョンL」(714万円)で、ボディカラーは「ソニッククロム」

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  • ブラック&リッチクリームの内装色は全く新規のカラーだ

パワーコントロールユニット(PCU)は、ハイブリッド用に内蔵されていたDC/DCコンバーターを別体化して後席下に配置したり、昇圧コンバーターを追加したりすることで高出力化と小型化を達成。ユニットをトランスアクスルの真上に搭載することが可能になったという。

普通充電にかかる時間は200V/16Aで5時間半、100V/16Aで33時間。充電ポートは車体後部右側にある。ヴィークルパワコネクターを使用すれば、同じポートでAC外部給電システムによる外部給電が可能。車内にはアクセサリーコンセントも付いていた。

こうした基本的なハード面は、同じプラットフォーム(TNGAのGA-K)を使うトヨタ自動車「RAV4 PHV」と同じだが、新型NXにはレクサスらしい工夫がしっかりと盛り込まれていた。

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    新型「NX」にはレクサスらしい工夫が盛りだくさん!

クルマの電動化でドアまで改良?

乗り込む際にすぐ気がついたのは、ドアの開閉がとてもスムーズだということ。ドアハンドルを握ると裏側にある電動スイッチを自然に押すことができるので、そのまま引っ張ればワンアクションで軽く静かにドアが開く。内側もドアハンドルを握る位置にスイッチが設けてあり、親指を当てながらドアを押せば簡単に開けることができる。

これは「e-ラッチ」という電子制御のドア開閉システムで、レクサス初採用となる。滑らかに動く日本の障子をイメージしたそうだが、普段よく使う部分に新たなアイデアを盛り込んでくれるのは嬉しい。バッテリーがなくなっても、手動で開閉できるリリースハンドルがあるので安心だ。

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    ドアにスイッチが付いて開閉がスムーズに

ヘッドアップディプレー(HUD)も進化が著しい。ドライバーがどのステアリングスイッチに触れているかを検出し、フロントガラスにガイドを表示する「タッチトレーサーオペレーション」式だ。視線を前方の道路に向けたまま各種セッティングが行えるので、ACC(追従運転)の起動など、走行中の作業を安全に行うことができる。

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  • どのステアリングスイッチを操作しているかを検知し、HUDにガイドを表示

走りについては、乗り出した時点でバッテリー残量が航続距離10km分まで減っていたので、デフォルトの「EVモード」で山道を登り始めると、すぐ空っぽになってしまった。ただ、別のクルマを借りるためUターンして坂を下っていくと、回生によって航続距離が1km、2kmと増えていく様子が頼もしく、駐車場に戻った時点では5kmまで回復していた。

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    下り坂ではしっかりと回生が働き、バッテリー残量が回復していった

PHEVモデルらしい走りをもう少し味わうために用意してもらったのは、「ヒートブルーコントラストレイヤリング」というボディカラーの「Fスポーツ」グレードだ。こちらはまだ50km分ほどバッテリーが残っていたので、距離を気にせず電気の走りを楽しむことができた。

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  • 「NX 450h+」の「Fスポーツ」グレードは738万円

ビーナスラインの上り坂は結構な傾斜だが、力強く静かなEVモードでの走行感は絶品だった。AWDなので後輪から押し出される感じがちゃんと伝わってきて、2,010kgの重い車体でもグイグイと加速していく。Fスポーツは車体前後にパフォーマンスダンパーを装着しているので、ノーマルよりもボディのしなりや微振動をいち早く吸収してくれる。コーナーや荒れた路面でも姿勢が一定しているので、まことに気持ちがいい。

減衰力可変のAVSショックアブソーバーも効果抜群。このあたりは、愛知県下山に新設したテストコースで鍛え上げた成果が表れているのだろう。最近のトヨタ車は「走りが変わった」とよくいわれるけれど、新型NXの走りはさらに一歩先に進んだようだ。

Fスポーツはメーターやステアリングホイールに専用品を使用。シートもスポーツ走行時にぴたりと体を支えるハイバックの専用形状となっている。山道を走るなら、このシートが一押しだ。

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    「Fスポーツ」のシートは専用形状。ステアリングホイールやメーターも専用品だ

もうひとつの電動モデルは?

もう1台の電動モデルはハイブリッド車(HV)の「350h」だ。こちらは、PHEVモデルよりわずかに強力な190PS/243Nmの2.5L直4エンジンに、182PS/270Nmのフロントモーターを(FF)を組み合わせる。AWDではリアに54PS/121Nmのモーターが追加となる。ただし、システム最高出力はPHEVより低い243PSの設定。乗ったのはFFの「バージョンL」だ。

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    新型「NX」のHV「350h」。「バージョンL」はFFが608万円、AWDが635万円

PHEVモデルではバタバタと試乗したため、エクステリアをゆっくり眺める時間がなかった。改めて詳細に見てみると、新型NXは次世代レクサスの第1弾といいながらも、デザインは基本的にキープコンセプトといった感じだ。ボディは全長4,660mm、全幅1,865mm、全高1,660mmで、初代に比べて全長と全幅が+20mm、全高が+15mmとなっている。ホイールベースは30mm伸びて2,690mmになった。

特徴的なスピンドルグリルはメッキの枠がなくなった。エンジンフードが先端まで伸びて、グリル面はその下側から垂直に立ったスタイルに。ヘッドランプはL字型のデイタイムランニングライトとの一体型になった。

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    スピンドルグリルはメッキの枠がなくなった

サイドはタイヤの直径が20mm大きくなったことと、リアのキックアップ(下側にすぼまるデザイン)を強調することによって、前後のオーバーハングが初代よりも短くなったように見え、かなりバランスが良くなった。全体的にはエッジーな塊感がより強調されたような形状だ。

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    エッジ―な塊感を強調したサイド

リチウムイオンバッテリーの容量が4.3Ahと小さいため、走りについは通常のHVモデルと同じで、アクセルを踏み込んでいくとエンジンが始動し、それをモーターが補助するといった具合。「THSⅡ」のHVシステムは加速時にエンジンのラバーバンドフィールがなるべく出ない設定に進化しているとはいえ、PHEVに比べると走行中の電動感は薄れ、そのかわりにエンジンの存在感が増してくるのは、まあ当然か。エンジン出力が少しだけアップしているのはそうした理由からだ。

車体はPHEVに比べて250kgも軽い1,760kgなので、きつい登りでも軽々とクリアする。路面の荒れたところではリアの足回りが少し跳ねる感覚が伝わってくるけれども、それは450h+と比較すればというレベルであり、全体的には静かで乗り心地のいいクルマである。

試乗車は「ブレージングカーネリアンコントラストレイヤリング」という長い名前のボディカラーを身にまとっていた。レクサスらしい鮮やかなカラーが信州の山並みに映えて美しく、魅力的だった。

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    「ブレージングカーネリアンコントラストレイヤリング」の新型「NX」