凌駕という言葉は、「前年度の売り上げを凌駕する」などの表現でビジネスにおいてもしばしば用いられる表現です。字面からしてなんとなくすごそうなイメージのある言葉ですが、実際にどんな意味なのかを正確に説明できる人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、「凌駕する」の意味や類語、対義語、英語表現を説明します。
「凌駕する」の読み方・意味
「凌駕する」の読み方
「凌駕する」は「りょうがする」と読みます。
「凌駕する」の意味
凌駕とは、他のものに比べてとりわけ優れている様子を示す表現です。
「凌」は「しのぐ」と読み、「ある基準となるものより上位にある」「他者を圧倒する」などの意味を持ちます。「駕」は「駕籠(かご)」の駕であり乗り物を表す漢字ですが、凌と同じく「超える」「他より上位にある」という意味も持っています。
つまり、「凌駕する」とは「他者を超える」「他のものを上回る」という意味です。
「凌駕する」の使い方・例文
凌駕は「ある比較対象に比べて遥かに優れている」という意味を持つため、使用する際には、必ず「〇〇を凌駕する」と比較対象を明らかにするようにしましょう。
- 今年度の水産部門の売り上げは、前年度をはるかに凌駕している
- 彼の交渉能力は先輩すら凌駕している
- 当社の製品は品質の高さにおいて他社を凌駕している
「凌駕する」の類語
「他者をしのいで上に立つ」という意味の凌駕には、いくつもの類語があります。使い分けることでニュアンスの差をつけたり、より読みやすく、伝わりやすい表現に書き換えたりできるようになるため、それぞれの違いや意味を知っておきましょう。
右に出る者はいない
「右に出る者はいない」とは「その人より優れた能力の人がいない」という意味です。昔の日本では、右側に位置する人のほうが優れた人という決まりがあったため、それに由来しています。
ちなみにこの「右側」とは、上の立場の人のほうから見た場合の位置関係になるため、並んでいる本人たちからすれば左側になります。ちなみに「右に出る者がいない」とも表記されます。
上回る
「上回る」とは「ある基準となる数量や程度を超えている」という意味です。「昨年を上回る人手」など、使う際には凌駕同様に「何を超えているのか」を示す必要があります。
ただし、上回るの場合は凌駕のように大きな差をつけている必要はなく、単に基準となるものを超えていれば使用可能です。
一騎当千
「一騎当千」とは、「1,000人の敵に相当するほどの強さを持っている1人の騎兵」という本来の意味から転じ、「人並みはずれた能力や経験などを持ち合わせた人」という意味も持ち合わせています。
当代無双
「当代無双」とは「現代、あるいはその時代において並ぶものがいないほど優れている」という意味です。「当代」が現在の世の中、もしくはある時代のこと、「無双」が「並ぶものがいない、比べるものがない」ことを指します。
特定の分野において圧倒的な強さや能力を誇り、太刀打ちできるような人が全くいない状態の表現です。
傑出
「傑出」とは「多くのものの中でとりわけて優れている」という意味です。「学者として傑出している」「傑出した作品」など、人・モノのどちらの評価にも使えます。
圧倒
「圧倒」とは「相手よりかけ離れて優れた力を持っていること」の意味です。その力でもって相手を威圧したり、押さえつけたりする様子も表します
「優れた力を持っていること」が元来の意味です。そのため、「圧倒的な弱さ」など、劣っていることに対して圧倒(的)を使うのは誤用になるため注意しましょう。
「凌駕する」の対義語
凌駕の対義語は「比べるものの能力や数値に比べて劣っている」という慣用句や熟語になります。具体的にみていきましょう。
引けを取る
「引けを取る」とは「負けること、あるいは劣ること」という意味です。「後れを取る」と同意の表現です。
そのままの形で「劣っている」という意味でも使われますが、多くの場合「〇〇には引けを取らない」と否定形で使用されます。
下回る
「下回る」の意味は「ある基準となる数量や程度より下になること」。「上回る」と対になる言葉でもあり、単に基準となるものより下であれば使用可能です。
牛糞馬涎(ぎゅうふんばせん)
「牛糞馬涎」とは「非常に劣っているものや取るに足りないもの」を表します。漢字の通り、牛の糞と馬のよだれのことを指します。
低劣
「低劣」とは「程度が低いことやその様子」という意味です。物事の質についても、人の性格や能力についても使用します。
何かと比較して劣っているという必要はないため、「低劣なテレビ番組」のように主観に基づいて使える表現です。
「凌駕する」の英語表現
「凌駕している」を英語で直訳するなら「超えている・上回る」という意味のsurpassやexceedを使うとよいでしょう。より簡単に表現したいならbe superior toも使えます。
「取り立てて他者に差をつけて優れている」という意味を強めたいのであれば、「be far superior to」など強調表現をつけて表現しましょう。「はるかに凌駕している」というニュアンスにすることが可能です。
- We have developed a product that exceeds other products in terms of cost performance. (コストパフォーマンスの面で、他の製品を凌駕する製品を開発しました)
「凌駕する」の意味や使い方をマスターしよう
凌駕という言葉は、ある比較対象に対して「とても優れている」「はるかに超えている」というプラスの意味で用いられます。「何かと比較して」という意味を内包しているため、使う際には「~に対して」「~に比べて」と比較対象を入れるようにしましょう。
ビジネスの場でも性能比較などで使いやすい言葉であり、「とても優れている」というよりも「はるかに凌駕している」と表現したほうがより理知的なイメージを与えられます。類語との違いも押さえて、語彙に加えていきましょう。