「卑屈」とは必要以上に自分を下げることを指します。ビジネスにおいて「卑屈」な言動は、相手の感情を逆なでする場合もあるので注意が必要です。自分をへりくだる意味では「謙虚」と似ていますが、ニュアンスが異なります。
本記事では、卑屈の意味や使い方、類語や対義語について解説します。また、ビジネスシーンで役立つ英語表現も紹介します。さらに、卑屈と言われてしまうよう言動、治し方なども紹介するので、参考にしてみてください。
卑屈とは
「卑屈」の読み方は「ひくつ」。いじける様子や必要以上に自分を下げる言動を表す言葉です。「軽蔑する」という意味を持つ「卑」と「くじける」という意味を持つ「屈」の漢字から成り立っています。
「軽蔑」は相手に対する感情を表す際に使用しますが、卑屈は「自分で自分を軽蔑する」という意味。「くじける」は勢いや意欲がそがれた状態を指しており、自分のことが嫌いで好きになれないという様子です。
自己肯定感が低く、殻に閉じこもっているような状態を想像するとわかりやすいでしょう。
卑屈の使い方と例文
卑屈は、人の言動と性質を表すときに使用する言葉です。使い方として例文をいくつか紹介します。
- 彼は、仕事で失敗して卑屈になっている。
- 新人のA君は卑屈な言動が多く、同僚から距離を置かれている。
- そのような卑屈な考え方では、新規案件は任せられない。
- 彼女の卑屈な性格は、本人が意識しない限り治ることはないだろう。
卑屈の類語
卑屈と似ている言葉には「卑下」「自虐」「狡猾」などがあります。それぞれの意味と例文を紹介していきます。
卑下(ひげ)
「卑下」は自らを劣ったものとして卑しめることを表す言葉です。自分の能力やスキルを自身で否定し、人よりも劣っていると思ったり話したりします。
<例文>
・彼はいつも「僕にはそんなことはできない」と自分を卑下する。
自分をへりくだっている様子は「卑屈」と似ていますが、必要以上にへりくだっているわけではありません。
自虐(じぎゃく)
「自虐」は自分自身を傷つけて虐げるという意味を持つ言葉です。「自虐」は「自虐ネタ」と、ポジティブなニュアンスを含めて使用することもあります。
<例文>
・彼女は明るい性格でみんなを自虐ネタで笑わせてくれる。
主に自分の容姿や性格をさげすんで笑いに変えるような人のことを指すときに使います。
狡猾(こうかつ)
「狡猾」は、ずるかしこい、悪賢いという意味を持つ言葉です。正々堂々とせず、陰湿な言動をすることが卑屈と似ています。
<例文>
・彼は狡猾な手段で周囲の人間を味方につけた。
狡猾な人はターゲットにわからないように攻撃をする悪賢さをもっています。ずるい行動を悪いことだと思っていません。
卑屈と謙虚の違い
「謙虚」は、卑屈の類語でもありますが、控えめな態度や様子を表す言葉で「卑屈」とはニュアンスが異なります。自分が前に出すぎず、相手を立てる様子であることから、ひとりよがりな感情が優先しがちな「卑屈」とは意味が異なります。
自分をへりくだって相手の意見を素直に受け入れる「謙虚さ」は、好感を持たれることが多く、他人からの評価が高いのが特徴です。
卑屈の対義語
「卑屈」の対義語には「傲慢」「尊大」「高飛車」などがあります。それぞれの意味について解説していきます。
傲慢(ごうまん)
「傲慢」は他人を見下すような態度を表した言葉です。自分の意見を一切聞かず、認めない傲慢な態度はビジネスシーンにおいて信用を失うので気をつけましょう。
尊大(そんだい)
「尊大」は偉そうな態度を表している言葉です。「尊大な方だ」と聞くと、器が大きく寛大なイメージを持つ人もいますが、そうではありません。自分が上に立ち、相手を見下しているときに使用するため、褒め言葉として使用しないようにしましょう。
高飛車(たかびしゃ)
「高飛車」は相手に対して高圧的な態度をとることを表している言葉です。対面でなくてもメールやチャットでの言い回しで高飛車と思われることもあります。普段から態度や言い回しなどに気をつけましょう。
卑屈な言動と治し方
自分では謙虚な対応をしていると思っていても、実は相手に「卑屈な人」と思われ、不快な印象を抱かせてしまっていることもあるかもしれません。「卑屈な人」の言動と治し方について解説します。
マイナスな言葉が口癖
卑屈な人は、何かにつけてマイナスな言葉を発してしまうことがあります。自信を持てない言葉が多い人は、最初から自信がないわけではなく、何かの出来事がきっかけでそうなってしまった場合も考えられます。一度失敗して卑屈になると、そこから挑戦する意欲はなかなか出てこないもの。自信を取りもどすには周囲のサポートが必要です。
「どうせ…」「でも」「私なんか…」、など、卑屈な言葉が口癖になっているなと感じたときは、小さな成功体験を積んで自信を取り戻しましょう。
ハードルを下げて予防線を張る
卑屈な人は失敗を恐れ、何かに挑戦する前からハードルを下げてしまうことがあります。本当はできることでも「いやいや無理むり! 」と予防線を張り、拒否してしまうのです。素直になって、周囲に助けを求めてみたりするといいでしょう。
他人の考えや価値観を受け付けない
卑屈な人は自分に自信が持てないため、他人から褒められても素直に喜べません。褒め言葉を言われても「皮肉なのでは?」と不安感を抱きます。
褒められたら褒められるほど、どうしていいのかわからなくり、「自分下げ」の言動で自分を守ろうとします。ひねくれた考えで物事を見てしまうと他人の考えや価値観を素直に受け入れることができません。
もし自分が周囲に対して疑心暗鬼になっているなら、ありのままの自分を受け入れて「謙虚」な姿勢で対応できるように努めましょう。
卑屈の英語表現
卑屈の英語表現には「Servile」「Subservient」「Obsequious」があります。ビジネスシーンで英語を使う機会のある方は、それぞれのニュアンスの違いを理解して使ってみましょう。
Servile
「Servile」は奴隷のような、盲従的な、独創性のないといった意味を持つ英単語です。卑屈なほど服従するというニュアンスで使用します。
<例文>
He had become a servile flatterer who desperately wanted a job.
彼はどうしても仕事が欲しくて卑しいおべっかを使うような人になってしまった。
Subservient
「Subservient」は卑屈、ぺこぺこしているといった意味を持つ英単語です。「subserviently」で副詞となり「へこへこ」と表現します。
<例文>
The boss is always subservient to that customer.
上司はあの顧客に対していつもぺこぺこしている。
Obsequious
「Obsequious」は媚びへつらうような、追従的なといった意味をもつ英単語です。
<例文>
He always has an obsequious smile for his boss.
彼はいつも上司に対してこびへつらうような笑い方をする
卑屈な人にならないように気を付けよう
仕事でミスを連発すると「卑屈」になりがちです。「卑屈」な言動が増えてしまうと、周囲の人を嫌な気分にさせてしまうことも。卑屈な思考から抜け出せず、ネガティブなループに陥っていると感じたときは、自分の弱さを認めることが「卑屈」な自分から抜け出す第一歩になるかもしれません。
弱さを認めることは、自己成長にもつながります。本記事を参考に、卑屈な言動を控えて謙虚な人を目指してみてはいかがでしょうか。