JR九州は23日、利用状況などを勘案して駅体制の見直しを行い、2022年3月12日以降、29駅において駅係員が終日不在とするほか、48駅においてきっぷの販売窓口を廃止し、その他の駅もきっぷの販売窓口営業時間の短縮など実施すると発表した。
少子高齢化の進行と人口減少に加え、将来の労働力不足、激甚化する自然災害など、鉄道を取り巻く環境は非常に厳しい状況にある。新型コロナウイルス感染症の影響で鉄道利用が減少し、ウェブ会議やテレワークの普及に伴う生活様式の変容等により、2021年度の鉄道旅客運輸収入は会社発足以来最低であった2020年度に次ぐ低水準に。今後も以前のような水準には戻らないものと想定しているという。
JR九州では、安全を確保しつつ業務運営の効率化に向けた取組みを進めながら、新たな技術を取り入れるなどにより、長期的な交通ネットワーク維持に取り組んでいくとのこと。2022年3月12日からの駅体制では、利用状況などを勘案し、29駅において駅係員が終日不在となるほか、48駅できっぷ販売窓口を廃止する。
県庁所在地駅をはじめ、エリアの中核を担う駅については、きっぷ販売窓口の営業時間を7~21時とし、福北都市圏の駅や新幹線・特急列車が停車する一部の駅等については7時30分から19時までとする。その他の駅のきっぷ販売窓口の営業時間は、利用状況などを勘案して7時30分から15時まで、もしくは7時30分から12時までなどとなる。各駅の営業時間について、近日中に駅頭ポスターで案内する予定。営業時間外も駅設置の券売機できっぷの購入は可能とのこと。
駅体制に則した案内・手伝いの体制として、ホームへの進入・進出時の安全確認は乗務員が行った上で運行し、駅のホームや改札口に録画カメラを導入することで、利用者の安全を遠隔で見守るという。列車がホームに進入する際、列車接近警報装置(放送と電光掲示)等により、列車接近の注意喚起が行われる。
販売体制においても、自動改札機にタッチするだけで通過できるICカード「SUGOCA」の利用促進、「みどりの窓口」で購入していた指定席券やクレジットカードでの支払いが可能な指定席券売機の充実、きっぷを受け取らずに新幹線に乗車できる「EXサービス」の導入、「PayPay」のQRコード決済機能を活用した特急券の実証実験の実施(門司港・行橋~博多間の特急列車が対象)、一部エリアでの「スマホ定期券」サービスの試験導入など実施する。
きっぷを購入しやすいようにルールの見直しも行う。福岡市内または北九州市内の駅係員が終日不在となる駅や、一部時間帯に駅係員が不在の駅、インターネットで予約したきっぷが受け取れない駅から乗車する際、利用者がこれらの市内発のきっぷを購入できないため、利用当日に最寄りの販売窓口がある駅まで列車に乗車する場合、その運賃(IC乗車券も対象)はきっぷを購入した際に払戻しを行うルールに変更される。ルール改正日は2022年1月を予定し、対象はJR九州の改札口に限られる(JR西日本の小倉駅・博多駅では取り扱われない)。自動改札機や指定席券売機には投入せず、改札口の係員に申し出る必要がある。
体の不自由な人に安心して利用してもらう取組みとして、駅係員が終日不在となる駅や時間帯によって係員が不在となる駅にて、介助スタッフが駅に赴き、乗降の手伝いを行う。当日でも基本的に対応可能だが、スムーズに案内するために事前連絡をしてほしいとのこと。事前に係員による乗降の手伝いを申し込めるように、新たにウェブ受付窓口を2022年夏頃に開設予定。2022年2月以降、香椎線にて乗務員による体の不自由な利用者の乗降の手伝いを試験的に開始する。
JR九州ではバリアフリー設備の整備や係員による応対にも取り組んでおり、駅のバリアフリー化については国の基本方針に則り、利用が1日3,000人以上の駅、利用が1日2,000人以上かつ自治体が定める基本構想の生活関連施設に位置づけられた駅を対象に、国や沿線自治体の協力を得ながら積極的に進めているとのこと。