みりんの”使いどころ”が分からない……若い世代ほど、そう答える傾向が強いようだ。コロナ禍で自炊の機会が増えた今、業界大手のキング醸造では若い世代に向け、SNSなどを通じて「みりん」の魅力を広める取り組みを続けている。

  • みりん、料理酒をはじめ酒類全般を取り扱うキング醸造の取り組み

    みりん、料理酒をはじめ酒類全般を取り扱うキング醸造の取り組みを取材した

若い人に知ってもらうためには

キング醸造は兵庫県加古郡に本社を構える、創業から120年あまりの歴史ある老舗企業。本みりん、新味料、料理酒などの醸造調味料だけでなく、清酒、リキュール、焼酎、ワインなどの酒類全般を製造・販売している。都内で開催されたメディア説明会で、キング醸造の竹山慎一郎氏は「コロナ禍により家庭内で料理を始める人が増えました」と笑顔を見せた。家庭向け基礎調味料の市場は、ここ数年の売上が好調。同社では、一般家庭に自炊が定着しつつあると見ている。

  • キング醸造 マーケティング開発部の竹山慎一郎氏

    キング醸造 マーケティング開発部の竹山慎一郎氏

キング醸造では2021年2月に新ブランド「ORYZAE JOY」(オリゼージョイ)を立ち上げた。日本酒、みりんなどを造る過程で生じる醸造粕(酒粕、みりん粕)を加工した製品が好評だ。「粕は時間が経つと発酵してしまうので、日持ちが悪い。そこでパウダー化して長持ちさせ、青汁、ラテ、スイーツに生まれ変わらせました」と竹山氏。キング醸造では昔から、廃棄物を出さずに原材料を有効活用するSDGsの取り組みに積極的だと話す。

  • 新ブランド「ORYZAE JOY」では、青汁、ラテ、スイーツといった製品を展開

    新ブランド「ORYZAE JOY」では、青汁、ラテ、スイーツといった製品を展開。2021年11月から新商品「お豆グラノーラ」も発売した

さて、自炊人口が増えたことを歓迎しつつも、同社では若い人にみりんを啓蒙する活動を欠かさない。「みりんって何のために使うの」「料理酒ってどのタイミングで使うの」といった疑問にメーカーが答えなければ、そのうち「なくても良いじゃない」となる危機感がある、と竹山氏はいう。では若い世代にみりんの魅力を知ってもらうには、どうしたら良いか。そこで料理の楽しみ方を知ってもらおうと、2021年1月に「日の出自炊女子部」を立ち上げた。日の出みりんブランドの調味料、料理のレシピなどを参加者の元に送り、できた料理をInstagramで拡散してもらおうという試みだ。

企画を担当した、日の出ホールディングス アドコミュニケーション部の浅間桃子氏は「コロナ禍により、対面による料理教室が開催できなくなりました。そこで、いまの時代にあったやり方を考えました。第1期、第2期ともに300名ずつ参加いただきました」と説明する。参加者からは「横のつながりができ、料理のモチベーションも上がった」といった声が寄せられている。

  • 日の出自炊女子部の投稿

    日の出自炊女子部の投稿は1675件にのぼった(12月14日現在)

ちなみに12月14日時点で、のべ1675件の投稿があったとのこと。そこで気になる第3期だが、企画名を「日の出自炊部」にあらため、男性からも参加者を募る。

応募期間は2021年12月27日~2022年1月23日まで、応募条件は料理初心者の方、商品を使用した料理を作り、その料理の写真をInstagram上に投稿可能な方、などとなっている。

このほか日の出みりんのホームページでは、日の出みりん・料理酒の効果と使い方のほか、とっておきのレシピなども紹介。例えば旬の話題として、クリスマス~年末年始のごちそうを手軽に作れるレシピ、簡単おせち、おもちアレンジ、果ては「リメイクおせち」と題して、煮しめ、栗きんとん、黒豆など、残ったおせちを豪華にリメイクする方法まで紹介している。

  • ごちそうメニュー、簡単おせち、リメイクおせち、おもちアレンジなどのレシピを紹介

    ホームページでは、ごちそうメニュー、簡単おせち、リメイクおせち、おもちアレンジなどのレシピを紹介。本みりん、新味料、料理酒などの使い方も自然と身につく

みりんを飲み比べてみた!

メディア説明会では、みりん風調味料、本みりん、みりんタイプの(利き酒ならぬ)利きみりんに挑戦する機会があった。竹山氏は「本みりんは元々、飲用のお酒でした。現在弊社が販売している日の出本みりんはアルコール度数が13.5%以上14.5%未満となっています。上品な甘さ、うまみがあり、味の浸透を良くします。てり、つやをつけ、煮崩れを防止し、生臭みを消す効果もあります」と説明する。酒税がかかるため、ほかの定番調味料と比べると価格が高い場合が多いとのこと。

  • 利きみりんに挑戦

    筆者も利きみりんに挑戦した

キング醸造が1960年に開発したのが、みりん風調味料(新味料)。当時の法律では酒類を取り扱えなかったスーパーに向けて、本みりんの代替として販売できるようアルコール度数を1%未満におさえつつ、甘み、うまみ、てり、つや効果を持たせたものだ。

「もうちょっと甘みが欲しい、といったときに味の調整がしやすい。料理初心者にもオススメです。小さなお子さんの食べる料理にも使える。加熱しない料理、タレやドレッシングにも、また火を使いたくない真夏の料理にも最適です」と竹山氏。

みりんタイプは本みりん同様にアルコールが含まれますが、塩分があるために酒類からは外され、酒税がかからないのがポイント。どちらかと言うと業務用として作られたもので、スーパーの店頭に多く並ぶようになったのは、この10~15年だという。

「店頭売価ではお手頃価格なことが多いです。でも塩分が添加されていることを知らないで使うと、料理が全然、違うものになってしまうので注意してください」(竹山氏)

そこで実際に飲み比べてみた。匂いに大きな差はないが、色は透明に近いものから黄色が濃いものまで違いがはっきりしている。まず、みりんタイプは塩分が強いため、すぐに分かった。とてもしょっぱい。次に、本みりんは日本酒に近かった。甘さとコクがある。仮に、料理屋でコレを日本酒として出されたら「珍しいな」とは思いつつも飲み続けられそうだ。

最後に、みりん風は甘く、アルコール分を感じなかった。3種類とも非常に個性的で、特徴をよく理解したうえで料理に合わせて使いこなすことが肝心だと知った。キング醸造ではすべての種類のみりんを揃えており、竹山氏は「お客様の使う環境、状況に最適なみりんをお薦めできるのが私たちの強みです」と話していた。

  • 本みりんは、もち米、米こうじ、醸造アルコールを原材料としている

    本みりんは、もち米、米こうじ、醸造アルコールを原材料としている