「個人年金保険」は、将来のために計画的に老後資金を準備できる保険制度です。若い方であれば年金と聞いても、まだまだ先のことと思うかもしれませんが「個人年金保険」に加入することで、現在の生活にもメリットがあります。

本記事では、「個人年金保険」についてはもちろんのこと、「個人年金保険」の種類やメリット・デメリット、年代ごとの必要性や「個人年金保険料控除」の受け方についてもくわしくご紹介します。

  • 「個人年金保険」とは?

    「個人年金保険」についてご紹介します

「個人年金保険」とは?

「個人年金保険」とは、60歳や65歳といった一定の年齢まで保険料を支払い、積み立てられた年金原資を元に年金をもらう仕組みの保険のことです。

「個人年金保険」には主に「確定年金」「有期年金」「終身年金」3つの種類があります。

確定年金

1つ目の「確定年金」とは、年金受取人の生死に関わらず、5年、10年、15年、20年など、あらかじめ決められていた一定期間、確実に年金を受け取ることができる年金保険のことをいいます。

仮に受取人が受給期間中に亡くなったとしても、遺族が本人の代わりに残りの年金を受け取ります。その際は、年金受取期間に一定金額を年金として受け取る方法と、一時金として受け取る方法の2通りがあります。

有期年金

2つ目の「有期年金」とは、5年10年15年20年など年金支給期間が一定であるのは「確定年金」と同様ですが、年金受取人が生きている場合に限り、支給され続ける年金です。「確定年金」との違いは、年金が支給されている一定期間中に被保険者が亡くなった場合は、その時点で本人も遺族も年金が受給できなくなるという点です。

有期年金には保証期間があるものもあり、あらかじめ年金の受取期間を決めておけば、受給者が亡くなっても残りの保証期間に対応する年金か一時金を受け取ることができます。

終身年金

3つ目の「終身年金」とは、本人が生きている間はずっともらい続けることができる年金保険です。一般的には本人が亡くなった時点で打ち切られ、遺族は受給できない年金です。 

有期年金同様、保証期間があるものもあり、あらかじめ年金の受取保証期間を決めておけば、受給者が亡くなっても残りの保証期間に対応する年金か一時金を受け取ることができます。

「公的年金」との違いは?

「公的年金」と「個人年金」の違いをひとことで表すと、加入義務の有無です。日常生活を送る中で「国民年金」や「厚生年金」という言葉を聞くことがあるかもしれませんが、この「国民年金」や「厚生年金」が代表的な「公的年金」です。

「国民年金」は国民の義務として定められており、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は全員加入する必要があります。一方の「個人年金」は、保険会社が個人に対して販売する保険商品のひとつで、加入はあくまで任意です。将来に対する備えとして希望者のみが加入するものといえます。

  • 個人年金保険とiDeCoの違い

    「個人年金保険」には、主に3つの種類があります

個人年金保険とiDeCoの違い

「個人年金保険」と「iDeCo」、どちらも老後資金の積み立てとしての役割がある一方で、それぞれに違いがあります。ここでは「個人年金保険」と「iDeCo」それぞれのメリットとデメリットをご紹介します。

「個人年金保険」のメリット

「個人年金保険」のメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 個人年金保険料控除による所得税や住民税などの節税効果
  • 老後の生活資金を計画的に貯められること

「個人年金保険」のデメリット

「個人年金保険」のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • インフレ時にお金の価値が目減りするリスクがあること(受け取れる年金額が契約時に決まっているため、受け取り時の物価状況によっては少ない可能性があること)
  • 払込期間中に解約をすると元本割れする可能性があること

「iDeCo」のメリット

「iDeCo」のメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 毎月の掛け金が全額所得控除の対象となるため節税できること
  • 運用がうまくいけば将来もらえる額が増やせる可能性があること
  • 運用で増えた分は課税されないこと

「iDeCo」のデメリット

「iDeCo」のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 原則60歳になるまで積み立てたお金には手をつけられないこと
  • 加入者が運用のリスクを負うため、運用がうまくいかなければ損をするリスクもあること
  • 年代ごとの「個人年金保険」の必要性

    「個人年金」と「iDeCo」のメリット・デメリットをご紹介します

年代ごとの「個人年金保険」の必要性

老後の資金への考え方や価値観は、年代によって大きく異なるものです。ここでは、年代ごとの「個人年金保険」の必要性について解説していきます。

20代

20代の方にとって「個人年金保険」の必要性は、他の年代と比べると低いでしょう。その理由は、年金をもらうまでにまだ40年ほど時間があり、老後の貯蓄として資産形成をする方法が年金の他にたくさんあるからです。その方法とは具体的には、財形年金貯蓄や資産運用、企業年金、小規模企業共済などです。

20代のうちから「個人年金保険」に入るメリットは、月額料金が安く抑えられることでしょう。

30代

30代になると老後のことを考え出す人が増えるかもしれません。20代よりは「個人年金保険」の必要性は高まりますが、結婚資金や子育て・教育資金準備の優先順位も高まります。家計状況によりますが、定年までまだまだ時間はあるので、「個人年金保険」よりは少額をコツコツ積み立てながら運用していく積立投資などで老後資金準備をしていくのもいいでしょう。

40代

40代は、60代まで残り20年弱で、まさに老後の準備をするべきときだといえます。受け取る金額をあらかじめ決められる「個人年金保険」に加入することで、老後資金としての安心感が高まります。

50代

50代の方で、まだ老後の資金が貯まっておらず、かつ「個人年金保険」にも加入されていないという方はなるべく急いで年金保険に加入することをおすすめします。

受給までの期間が短くなればなるほど保険料も高くなりますし、資産運用するにしてもリスクが大きくなります。

  • 「個人年金保険料控除」を受けるには?

    老後の資金への考え方や価値観は、年代によって大きく異なります

「個人年金保険料控除」を受けるには?

「個人年金保険」に加入し一定の条件を満たすと、「個人年金保険料控除」が受けられます。「個人年金保険料控除」とは、加入している「個人年金保険」に対して支払った年間の保険料額に応じて一定の金額を同年の所得から引くことができ、その分所得税や住民税を節税できる制度のことをいいます。

ここでは、「個人年金保険料控除」を受けるための条件や節税できる金額、上限などをご紹介します。

「個人年金保険料控除」の条件

「個人年金保険料控除」の条件は、加入している「個人年金保険」に「個人年金保険料税制適格特約」がついていることです。「個人年金保険料税制適格特約」をつけるための要件は以下の通りです。

  • 年金受取人が契約者またはその配偶者であること
  • 年金受取人が被保険者と同一であること
  • 保険料の払込期間が10年以上であること
  • 確定年金や有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であり、受取期間が10年以上であること

「個人年金保険料控除」でいくら戻る?

「個人年金保険料控除」で控除される金額について、まず所得税から見ていきましょう。ここでは2012年1月1日以後に契約した個人年金保険の場合について説明します。

年間支払保険料が2万円以下の場合は支払保険料全額が、2万円超から4万円以下の場合は、年間支払保険料の2分の1プラス1万円を控除できます。4万円超から8万円以下の場合は、年間支払保険料の4分の1プラス2万円、8万円超からは一律で4万円を控除できます。

一方で住民税の方は、年間支払保険料が1万2000円以下の場合は支払保険料全額が、1万2000円超から3万2000円以下の場合は、年間支払保険料の2分の1プラス6000円、3万2000円超から5万6000円以下の場合は年間支払保険料の4分の1プラス1万4000円が、5万6000円超からは、一律で2万8000円を控除できます。

「個人年金保険料控除」の上限は?

上記のように「個人年金保険料控除」には上限があります。所得税においては、年間支払保険料が8万円以上の場合は上限が4万円、住民税については、年間支払保険料が5万6000円以上で上限が2万8000円と定められています。

  • 個人年金保険と年末調整

    「個人年金保険料控除」には上限があります

個人年金保険と年末調整

「個人年金保険料控除」を受けるには、会社員の場合は、勤務先から受け取る「給与所得者の保険料控除申告書」と生命保険会社から発行される「生命保険料控除証明書」を、あわせて勤務先に提出することで、年末調整時に個人年金保険料控除を受けることができます。

これは個人年金保険料だけでなく、一般生命保険料、介護医療保険料の控除を申告するときも同様です。

  • 知っているとお得な「個人年金保険」

    「個人年金保険料控除」を受けるには会社に必要書類を提出します

知っているとお得な「個人年金保険」

「個人年金保険」は公的年金の他に老後の資産形成や節税を目的として任意で加入できる年金保険です。世代に応じて老後の備えに対する優先順位が変わってきますが、若いうちから将来を考えて少しずつ準備することはとても大切なことです。

20代、30代のうちは、他にも資産を形成する方法があるので、「個人年金保険」への加入を急ぐ必要はありませんが、メリットやデメリットを理解し、加入すべきかどうかを徐々に考え始めておくとよいでしょう。