スマートフォンの前面に搭載されるフロントカメラを画面の下に埋め込んだ「アンダーディスプレイカメラ」は、ディスプレイ全面を表示領域として使うことができます。iPhoneに代表される画面上部の欠き取り「ノッチ」や、Androidスマートフォンの多くが採用する丸い穴型=「パンチホール」と異なり、アンダーディスプレイカメラを採用したスマートフォンは画面全体を表示エリアにすることができます。
アンダーディスプレイカメラを搭載したスマートフォンは、2020年秋にZTEが「AXON 20 5G」をグローバルで発売、日本では姉妹モデルである楽天モバイル「Rakuten BIG」が登場しています。この2機種はディスプレイをよく見るとカメラが埋め込まれたディスプレイ部分が四角い形状でうっすらと見え、またフロントカメラの画質もいま一つでした。しかし、AXON 30 5Gはディスプレイとカメラそれぞれをバージョンアップし、普通のスマートフォンに匹敵するフロントカメラ画質を実現しています。
AXON 30 5Gのアンダーディスプレイカメラ部分は、7層の構造とすることでディスプレイの下にカメラを埋め込んでいます。フロントカメラの上のディスプレイの密度は400ppiで、これはAXON 20 5Gの200ppiの倍。これによりカメラ部分がうっすらと見えないようになっています。
AXON 30 5Gで動画や写真を表示すると、フロントカメラが見えないメリットを存分に感じることができます。画面を遮るものがないため、コンテンツを見ているときの没入感も高まります。
そもそも数年前までスマートフォンのカメラは画面の外側にありましたが、2017年に発売されたiPhone Xが画面上部を大胆にカットしフロントカメラや顔認証センサーなどを配置するノッチを採用。その後Androidスマートフォンメーカー各社も追従しましたが、ノッチをより小さくしようとパンチホールや「水滴型」と呼ばれる小さいフロントカメラに取って代わりました。しかし小さいとはいえディスプレイに穴が開いているため動画を見ているときなど「肝心の部分が見えない」なんてこともありえたのです
ZTEはAXON 20 5G / Rakuten BIGでアンダーディスプレイカメラを実用化しましたが、AXON 30 5Gは完成度が高まっています。両者を比較してみると、AXON 20 5Gはディスプレイをちょっと傾けただけでもカメラ部分の存在がわかります。動画などを表示すると目立たないものの、白や淡い色合いの写真やSNSのタイムラインなどを表示すると、この部分が意外と目立ちます。それに対してAXON 30 5Gはディスプレイを傾けてもなかなかカメラの位置はわかりません。
フロントカメラ性能はAIの併用もあり大きく改善されました。AXON 20 5Gで撮影した自撮りは、全体的にピントが甘く感じられ明るさもやや暗め。また背景に光があるとにじんでしまうこともあります。スマートフォンの画面で見るくらいであれば気にならないかもしれませんが、顔の部分を拡大などするとかなり古い世代のフロントカメラかな、と思える画質です。
一方AXON 30 5Gは顔の色合いも自然でピントもあっており、しっかり明るく写っています。なおフロントカメラで撮影後は保存までに数秒かかることもありますが、これはAIによる画像処理が行われているからでしょう。AXON 30 5Gの自撮り写真を見る限り、アンダーディスプレイカメラは十分実用レベルに達していると言えるのではないでしょうか?
なおAXON 30 5Gでいくつか自撮りしてみると、背景の光りや明かりの状況によって画像全体の色合い影響が出るようです。このあたりはAI処理の精度を高めれば十分対応できでしょう。いずれにせよ画質そのものは問題ありません。
アンダーディスプレイカメラを搭載するスマートフォンは他にもシャオミの「MIX 4」があり、自撮り性能はAXON 30 5Gと同等のようです。一方サムスンの折り畳みスマートフォン「Galaxy Z Fold3 5G」もアンダーディスプレイカメラを搭載するものの、性能はZTEやシャオミと比べると一世代前であり、仕上がり画質はいま一つ。アンダーディスプレイカメラでは中国メーカーの技術が大きくリードしており、2022年は他のメーカーにも採用が広がるでしょう。