薬がテープ・シールタイプに進化中!?

薬局やドラッグストアで、貼る薬を見たことがありますか?

例えば夏の嫌な蚊対策。定番のスプレー、液体タイプに混じって、テープ・シールタイプの虫よけも見かけるようになりました。さされてからは、かゆみ止めが頼りになります。かゆみが消えて、跡も残りにくいのです。

  • 急用で探したところ子ども用しかなかったが良く効いた 写真:筆者

調べると、虫よけ・虫さされだけでなく、咳止めなど、多様な貼る薬が市販されているみたい。軽いし、水もいらないし、これってとっても便利なのでは? 医師で医学博士の木村至信先生(キムシノ氏)に聞きました。

子どもだけでなく多忙な医療関係者にも

――医療は日進月歩ですが、薬も知らぬ間に進化しているんですね。

キムシノ氏: 貼るタイプの薬は、内服より効き方はゆっくりになりますが、持続効果があります。それ以外にもメリットは多く、例えば胃に負担がないことも。また、お子さんだけでなく、ものを飲み込みにくくなった高齢者でも、貼り薬だと使いやすいです。

――仕事が忙しい人にもよさそうです。

キムシノ氏: 仕事が不規則で、定期的に薬を飲むのが難しい方にもお勧めできます。更年期障害の治療をしている医療関係者は、なかなか薬を飲めないため、貼る薬を使っている例が少なくありません。

貼る薬のデメリット、副作用は?

――使いやすい、胃が荒れないなど、いいことずくめのようですが、デメリットや注意点はありますか?

キムシノ氏: 処方薬は、大きく分けると、ガーゼや不織布型と粘着テープ型の2通りです。粘着テープ型はズレにくいのですが、剥がす時に肌を傷めやすいという欠点もあります。肌が弱いとかぶれることがあるので、「貼り直す時は場所を変えること」「優しく剥がすこと」をお伝えしています。ただ、保湿剤を同時に処方すると、ほとんどの方が問題なく使用できるようです。

――どうやって処方してもらえばいいのでしょう?

キムシノ氏: 診察の時に、「いつもの薬でなく、貼るタイプの薬があれば使ってみたいです」と聞いてみてはいかがでしょうか。

――それにしても、皮膚から成分が浸透するなんて不思議ですね。

キムシノ氏: 貼る薬には、貼った場所に効くタイプと、貼った場所から成分が吸収され全身に効くタイプがあります。後者は、貼った場所の皮膚から毛穴や汗腺などを通って血中に取り込まれ、全身を循環しながら患部に働きかけるという仕組みです。

貼る薬でQOL(生活の質)が上がる!?

――いろいろな貼る薬があるようですね。先生が注目しているものを教えてください。

キムシノ氏: ヒトの免疫機能により体内にできる「抗体」を利用した「抗体医薬品」に注目しています。筋肉痛や関節痛、頻尿、更年期障害、高血圧の貼り薬、気管支を広げる薬、心臓の血管を広げる薬、認知症の進行を遅らせる薬などがあります。

一例を挙げると、ユニークな名前の久光製薬「アレサガ」というアレルギー性鼻炎は小さくて貼りやすいですが眠気が出るので、内服薬を増やしたくない高齢者や飲み薬が苦手なお子さんに、寝る前に貼るようにお伝えして処方することがあります」。

  • 画像提供:久光製薬

――市販薬も充実しています。「口内炎で外食が楽しめなかった」という話を聞いたことがあり、口内炎の治療テープが気になっています。先生のお勧め市販薬はなんでしょう?

キムシノ氏: 痛い、かゆい……でも触らない方がいい口内炎などってストレスです。塗る薬がありますが、ボソボソして味もきつめ。その点、貼る薬なら患部をしっかりカバーしてくれます。

市販薬では、第一三共ヘルスケアの「トラフルダイレクト」が貼りやすく、色も目立たないと、患者さんから聞きました。これ、処方薬も作っているメーカーなので、成分は折り紙付きです。

また、コロナ禍では、咳もはばかられます。自律神経やメンタルなども影響し、「咳をしちゃいけない時ほど咳が出る」というのもあるあるです。そういう時は、貼る咳止め薬があると安心です。胸にペタっと貼ればOK。飲むタイプの咳止めは便秘しやすいなどの副作用もあり、合わない人もいますが、貼る薬なら安心です。

  • 画像提供:第一三共ヘルスケア

――生活スタイルを邪魔しない、胃腸に優しい、時間を選ばないなんてすごいですね。

キムシノ氏: 錠剤や粉などの内服薬はある意味、開発の「最初の段階」の形です。進化するとチュアブルなどの水なしで飲める薬、子ども用ドライシロップ、そして貼る薬へと進化します。貼る薬が増えるのは、技術の進歩なんです! いつでも使えて、胃腸への影響を気にせず済む貼る薬は、もっと広がると思います。頻尿治療のテープ剤もあり、このおかげで映画や旅行に行けるようになった方もいるんですよ。

取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)

横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。