「ごねる」とは、不平や文句をぶつぶつ言ったり、思い通りにならないことになかなか従わなかったりするときに使われる言葉です。しかし、「ごねる」の元の意味は、現在使われているような意味ではありません。
本記事では、「ごねる」の本来の意味や語源について解説します。また、「ごねる」の使い方についても例文で説明しますので、参考にしてください。
「ごねる」の意味
「ごねる」とは、不平不満をいうことや、くどくど文句を垂らすことです。いつまでも文句を言っていたり、いろんな不満を言ったりすることを「ごねる」と表現できます。
また、「ごねる」には「死ぬ」「くたばる」という意味もあります。現在はこの意味で使われることはほとんどありませんが、昔の書物などではこちらの意味で使用されていました。
「ごねる」の本来の意味
先述したとおり、「ごねる」の本来の意味は「死ぬ」「くたばる」です。しかし、この意味で使われていたのは主に江戸時代であり、昭和ごろから現在の意味で使われるようになりました。
「ごねる」の語源
「ごねる」の語源として考えられているものには、「御涅槃(ごねはん)」や「死ぬる」があります。
「御涅槃(ごねはん)」とは、煩悩をなくした悟りの境地や安楽の境地のことで、これの動詞形が「ごねる」だといわれています。
また、「死ぬる」という言葉の使い方はあまりよくないとされ、「四(し)」ではなく「五(ご)」を使うようになり、「ごぬる→ごねる」になったとも考えられています。
「こねる」が変化した形が現在の意味
「ごねる」はさまざまな言葉の変化形だと考えられていますが、「こねる」の変化形だともいわれています。「こねる」には、無理なことをいって人を困らせるという意味があり、これが転じて「ごねる」になったとされています。
現代でいえば、「駄々をこねる」と使う場合に、「ごねる」と同じような意味合いを持つことを考えると、納得がいくのではないでしょうか。
「ごねる」は方言?
「ごねる」を普段使わない人からすると方言かと思うかもしれません。しかし「ごねる」は方言ではなく、全国的に普及している言葉です。
ただし、香川県高松市では方言として「しくじる・失敗する」という意味で「ごねる」が使われることがあるようです。高松に行ったときには、どちらの意味で使っているか判断が難しいかもしれません。
「ごねる」の類語
「ごねる」の意味が把握できたところで、類語について解説します。「ごねる」と似ている言葉を把握しておけば意味が想像しやすくなるだけでなく、適切な場面で正しく言葉を選ぶことができるでしょう。
不満がる(ふまんがる)
「不満がる」は、不満という言葉が入っているので容易に想像できるかもしれませんが、不平不満をいうことや不満を表現することを意味します。
不満に思っていることや、不快に感じていることを、表情や行動で表現する場合に使います。
苦情をいう
「苦情をいう」も「不満がる」とほぼ同じ意味で、苦情や不快に思っていることを表すという意味をもつ表現です。愚痴を言ったり不快感を示したりする場合に使います。
ぼやく
「ぼやく」は、ぶつぶつ文句を言ったり泣き言を言ったりするという意味です。不満や不快な気持ちになったときに小声で文句をいう様子や、苦しいことに対して泣き言をもらしている様子があてはまります。
「ごねる」の使い方と例文
「ごねる」の正しい使い方を例文とともに紹介しますので、実際に使うシーンを想像してみましょう。
「これ以上はごねることができない」
散々文句を言った後に用いている例です。「これ以上はごねることができないと判断したので、身を引いた」など、ごねても何も変わらなかった、ごねた結果何も得られなかったという場合に適しています。
「子どもがごねてねだっていた」
街中でほしいものが手に入らず泣いたりすねたりしている子どもを見かけたことがあるでしょう。「ごねる」は、このような場面にも使える表現です。
買ってほしいものを買ってくれない、食べたいものを食べられないといった場合に、駄々をこねている様子を表します。
「こいつごねたか」(盛衰記)
かつて「ごねる」が「死ぬ・くたばる」という意味で使われていた代表的な書物に『盛衰記』があります。「こいつごねたか」という一説があり、これは「こいつくたばったか・こいつ死んだか」という意味です。
現代ではほとんど使われない表現ですので、参考までに覚えておくといいでしょう。
「ごねる」の英語表現
「ごねる」を英語で表現する場合は、「文句をいう」「苦情」を意味する英単語を使いましょう。
「complain」は「不平をいう」「愚痴をこぼす」といった意味の動詞です。泣き言を言ったり訴えたりするという意味も含んでいるため、幅広いシーンで使用できるでしょう。
「sound off」は「意見や不平などをはっきりいう」という意味があります。「はっきり」「大声」といったニュアンスを含むため、ぼそぼそとつぶやくようなシーンにはあまり適さない表現といえます。
「ごねる」の意味は本来の意味から変化してきた
「ごねる」は不平をもらしたり、くどくど文句を言ったりする状態を意味しますが、本来の意味は「くたばる」「死ぬ」という意味で使われていました。現代になるにつれて、言葉と意味が変化してきたと考えられています。
「ごねる」の類語には、不平不満をいうことや不快感を表する言葉があたります。似たような意味の言葉を把握して、シーンによって使い分けられるようにしておきましょう。