ヤマハ発動機の最新モデル「YZF-R7」の国内販売が、ついに正式発表となった。2021年5月の海外発表から約半年。この一報は、ヤマハファンにとってビッグなクリスマスプレゼントとなったに違いない。いったいどんなバイクなのか、一足先に試乗してきた。
YFZ-Rシリーズの新顔はサーキット初心者も安心?
「YZF-Rシリーズ」はピュアスポーツを探求するヤマハが出したひとつの回答だ。ここに新顔として「YZF-R7」が加わる。ヤマハは同名の車種を1999年に500台限定で販売しているが、そちらはレース用のホモロゲーションモデルだった。今回の新型はモデルチェンジではなく、ブランニューモデルといって差し支えないだろう。
カラーバリエーションは「ヤマハブラック×マットダークグレーメタリック6」と「ディープパープリッシュブルーメタリックC×マットブルーメタリック3」の2種類。特別な仕様として、ヤマハのレース参戦60周年を記念した限定色のアニバーサリーモデルもラインアップする。
YZF-RシリーズらしいSS(スーパースポーツ)然としたアグレッシブなデザインのYZF-R7だが、その位置付けはエントリーモデルとハイスペックモデルの中間だ。
「YZF-R1」や「YZF-R6」のような大型SSは、サーキット走行を前提に作り込んでいくと公道走行を楽しみきれなくなる。ヤマハによれば、エントリークラスの「YZF-R3」や「YZF-R25」に乗っているユーザーの中には、そうした大型SSに対して「扱いきれるかな」と不安を抱いている一方で、自身の現状については「SSを楽しみきれていないのでは」との不満を感じている人もいるそうだ。
「YZF-R7」はSSユーザーの不安と不満に対応する“ちょうどいいモデル”を目指したという。GB統括部スポーツGの兎田潤一氏は、「次のステップに進むための中間バランスを目指して作り込んだ」とする。特にこだわったのが、若年ライダーであっても思い切り楽しめる十分な性能を持たせることだった。
「MT-07」との共用部品をブラッシュアップ
ここからは「YZF-R7」の特徴を確認していきたい。
YZF-R7は「MT-07」とコンポーネントを共用しているが、当然ながら、MT-07を単純にフルカウル化しただけのモデルではない。
まずは、フロントフォークのオフセット。MT-07が40mmであるのに対し、YZF-R7は35mmと5mm小さくなっている。これによりトレール量が増し、直進安定性が向上している。
アンダーブラケット形状は最適化解析による高剛性化を図った。フロントだけ剛性を上げるとバランスが崩れてしまうため、車両中央にはフレーム上下を結ぶセンターブレースを追加。リアアームピボット回りの剛性も向上させた結果、前後ねじり剛性はそれぞれ約20%アップしている。
スポーツ走行に適したライディングポジションを目指し、シート高は835mmに変更(MT-07は805mm)。着座位置の移動を考慮し、シート後段の座面は外側まで広く取り、よりスポーツ走行に適した形状とした。
最後はスタイリングだが、YZF-R7のポイントは、機能とデザインを両立させることにより、現行YZF-Rシリーズの中で最もスリムな車体に仕上がっているところだ。
ヘッドランプはダクト内に収納し、カウルデザインのすっきりとした顔回りを印象付けている。アルミ素材を採用したアンダーカウルはスリム化だけでなく、ほかのSSと比べても遜色のないバンク角53度の確保にも寄与しているそうだ。
「YZF-R7」に試乗!
試乗してみた印象では、ライディングポジションはYZF-R3、YZF-R25あたりと比べると低くてスポーティーだが、YZF-R6などと比べればアップめで乗りやすい。
YZF-R1など本格SSの場合、一度コーナーで失敗してしまうと「そこまで」という感じになってしまい、立て直すのがなかなか難しいものだが、YZF-R7はトルクがあるため、失敗したところからでもリカバリーがきくように感じた。ワインディングでも実感できそうな美点だ。
そして何より、車体が軽いため疲れにくい。サーキット走行は30分~45分を1日で2~3セットこなすケースが多いというが、YZF-R7は経験の浅い初心者ライダーにとって格好の相棒になりそうだ。
これ1台あれば、街中からサーキットまで幅広く楽しめそうなYZF-R7。大型自動二輪免許を取得して最初に乗る1台に選択するのもいいかもしれない。