俳優の山田裕貴がこのほど、都内で行われたフジテレビ系スペシャルドラマ『志村けんとドリフの大爆笑物語』(27日21:00~)の会見に出席し、志村けんさんを演じる苦労を明かした。
志村さんの半生を、福田雄一氏の脚本・演出で描く同ドラマ。山田は「どれだけ皆さんの頭の中、心の中にある志村さんに近づけるのかということを、本当にずっと考えながら、しゃべり方やコントのテンポや間や、いろんなことに気を配りました」と明かし、「放送の日、『ドリフが蘇ったんじゃないか』と思ってもらえるようなドラマになればいいな。そして、コロナで志村さんは亡くなってしまって、このコロナ禍という世界になって苦しんでいる人たちがたくさんいると思うんですけど、そういう人たちの苦しみみたいなものも、その日思いっきり笑いで吹き飛ばせるようなドラマになればいいなと思いながら、いろんな思いで志村けんさんを生きることを気をつけました」と意識したことを語った。
志村さんを演じるに当たり、山田は仲良くしているお笑い芸人・初恋タローから、志村さんの遺した言葉がたくさん書かれている本を「これ、お守りのように持っておいて」と渡されたそう。山田は「僕、本当にお笑いが大好きで、芸人さんをすごいリスペクトしてるんですけど、その本に載ってる言葉を見て、『ちょっと自分が思ってることと一緒なのかもしれない』っていうことが見つかるだけで、志村さんに近づけていってるような気がして、初恋タローさんにものすごく感謝したいと思います(笑)」と、今回大きな支えとなったようだ。
印象に残るシーンは、ザ・ドリフターズ役のメンバーで演じたコントシーン。「(実際のドリフの映像を見て)『このタイミングでこの配置なんだ』というのをみんなであらかた頭に入れて、『長さん(=いかりや長介さん)に水ぶっかけるのは志村さん3回ね、加藤茶さん2回ね』とか、そういうことも話し合いながらやったことで、もちろん本物にはなれないですけど、皆さんの記憶や心の中に触れるような、蘇るような映像をお届けできるのではないかと」と、手応えを感じた。
特に、加藤茶役の勝地涼とのシーンは、加藤&志村さんが当時アドリブでやっていたことを、台本に文字起こしし、それをアドリブに見せる芝居をするという難しい演技を求められただけに、「一緒にやってた勝地さんには、本当に助けていただきました」と感謝。
その勝地は「本当に空き時間にいっぱい練習したりして、あの日が本当に懐かしいです。全部終わったときに、レフリーが勝者を発表するときのように、自然と山田くんの手をつかんで挙げてたんですよ。それくらい、山田くんの頑張りに助けられました。なぜそこまで一緒に練習できるようになったかと言うと、最初の衣装合わせが終わって楽屋に戻ろうとしたら、廊下まで響き渡る(山田の)声が聴こえてきて、どうやらコントのセリフを練習してるわけですよ。その熱量に引っ張られるように、(当時は)“はじめまして”だったんですけど、楽屋をノックもしないで開けちゃって、『やってるね! やる?』って加藤茶さんみたいになって(笑)。その日もすごい練習しましたし、そこから自然に毎日、撮影の合間もずっと一緒に練習しましたし、残っても練習して、濃密な時間を過ごせたなというのはすごく印象に残ってます」と回想。
その上で、「コントって生ものだと思いますし、撮影も本番一発で撮っていくというのが結構あったので、いい緊張感と、でも楽しまなきゃいけない、でもなんか楽しいっていう、すごい興奮するような撮影だったのを覚えています」と振り返った。
山田の今回の役に対する入れ込みようは、高木ブー役の加治将樹いわく「福田監督から聞いた話なんですけど、コントの練習をやる初日の山田裕貴の目がバッキバキだったって! それで福田さんが『怖かったよ』というところから始まって、撮影に行くたびに日々テンポが良くなっていく姿を僕らは見てるんですけど、それが本当にカッコよかったです」とのこと。
そうした努力もあり、撮影の現場では、山田に志村さんが憑依したような姿が目撃されていた。
「あるコントでダチョウ倶楽部の肥後(克広)さんがいるシーンがありまして、僕がカメラの裏をずっとウロウロしてたんですよ。それは、『どういう表情にしよう』『どういう動きにしよう』『どういうテンポにしよう』みたいな、いろんなことを考えながら、目バッキバキにしながら歩いてたんですね。そしたら肥後さんがスタッフさんを介して、『ああやってたよ、志村さんも』って教えてくれたそうなんです。僕が考えてることとは違うと思うんですけど、『(志村さんも)本当に寡黙にカメラの後ろをウロウロしながら考えてたから、安心していいんだよ』っていうのを言ってくれたという話を聞きました」(山田)
撮影期間中は、「家に帰って缶ビールを飲みながら、『こうやってお笑いのことを考えてたから、志村さんはお酒が好きだったのかな』とか、ちょっとでも理解できたような気がして」と、シンパシーを感じる瞬間があったそう。
さらに、「毎日ドリフのDVDを流して、それ以外の映像は見ない日々を自分がやっていたのを今思うと、『大丈夫か! おい!』って思うんですけど、(志村さんも)ものすごくストイックにコントに向けて『何が面白いか』っていうことを考え抜いて、考え抜いて、こうやって日々生きてたのかなと思ったりしました。そういった自分の集中する感覚が、もしかしたら(志村さんに)近づけていたのかなって思うし、肥後さんの言葉を頂いて安心しました」といい、「もしかしたら自分が(志村さん役に)選ばれた理由ってそういうところにあるのかもしれないな、と気づけました」と捉えたことを明かした。