お笑いコンビ・ぺこぱによるテレビ朝日のバラエティ番組『ぺこぱポジティブNEWS』(毎週水曜26:41~※関東ローカル、TVer、TELASAで見逃し配信あり)では、8日と15日の2週にわたり、ロンドンブーツ1号2号の田村淳が手掛ける「遺書を動画で遺すサービス」を取り上げている。
慶應義塾大学大学院で「死者との対話」を研究した淳が手掛ける、遺書を動画で遺すサービス「ITAKOTO」に迫る特別編。前編ではまず体験してみようと、松陰寺太勇が妻、相方のシュウペイへの遺書を撮影することに。アプリに登録する際の「名前を入力してください。死亡時の確認に使用される場合があります」というアナウンスに思わず「死亡時って……僕が死んだときっていう意味ですよね。急に重くなってきたな」とはじめは戸惑いを見せた松陰寺だったが、妻への遺書撮影前には「ちゃんと話したい」「言葉に詰まったときに芸人になって逃げないように」と下書きからスタート。
ゲスト出演の伊集院光も「真面目だね」と感嘆の声を漏らしていたが、番組公式Twitterでも「奥様への遺書は松井さん(松陰寺の本名)として、シュウペイさんへは松陰寺太勇として、衣装もメイクも変えていました」と明かされており、松陰寺が番組の枠を超えて本気で遺書と向き合ったことが分かる。
相方への遺書は、ぺこぱ初舞台の地であるお笑い系ライブハウス「中野Studio twl」で撮影された。「コンビを組んでくれたこと、そしてテレビに出られるようになるまで11年、12年かかったが、解散しようとかやめようとか言わなかったことへの感謝を伝えたい」と意気込んでいた松陰寺。撮影後は「遺書の存在が忘れられてもいいくらい、これからいろんな出来事や思い出をアップデートしていって、この先を充実させていきたい」とシュウペイとの“これから”への思いを新たにしたよう。「『どう死ぬか』は『どう生きるか』なんじゃないか」と提言していた通り、遺書を遺したことで「生きる」ことへの夢が膨らんだ様子を見せた。
番組では、松陰寺の遺書の内容は一切公開されない。慣例に従うなら、妻はともかく相方宛の遺書はつまびらかにされ、反応を捉えながら涙を誘う映像が出来上がっていたのではないだろうか。撮れ高満載であろう遺書動画を何も言わずに公開しなかったところに、番組の矜持が感じられた。
15日放送の後編では、淳が「ITAKOTO」を立ち上げたきっかけである母とのエピソードを語る。母は淳が20歳になったとき「私にこの先何かあっても、延命治療は絶対しないで。そして私はこのことをあなたに年に1回伝える」と告げたという。
母の行動を「子どもたちに死に方を伝えながら自分がどう生きたいかを確認していた」と分析する淳。淳の母が遺した実際の「遺書動画」も、特別に公開される。淳は初めて動画を見たとき「思っていた遺書じゃない」「本当にこれが遺書?」と思わず確認したというが、前代未聞の遺書を前に視聴者も同じ感想を抱くかもしれない。しかし淳はこの遺書動画についても、母の秘められた思いを熱く解読していく。
見た者が「死」について前向きに考え、言葉にしたくなる特別編。前編のスタジオではジャニーズJr./HiHi Jetsの高橋優斗が、ジャニー喜多川さんのお葬式で弔事を読んだというエピソードを語り、「作った言葉は使いたくなかった。自分の心の中から出てきた言葉を言えたので、最後にちゃんとジャニーさんへメッセージを届けられたかなという気持ちになれた」と振り返った。SNSでも「いつの間にか泣いてた」「想像以上に上質なドキュメンタリーだった」という感想はもちろん、「家族を大事にしなきゃ」「私もやってみようと思った」とポジティブな輪が広がっている。