情報弱者とは、情報を手に入れたり利用したりすることが困難な人を意味する言葉です。
本記事では、情報弱者とはどのような人を指すのか、その特徴について解説します。
気付かないうちに、自分自身が情報弱者に該当しているというパターンもあり得ますので、この記事で紹介する、そこから抜け出すための対策も参考にしてみててください。
情報弱者とは?
情報弱者のもとの意味は、「環境が整備されていないことで、情報を手に入れたり利用したりするのが困難な人」のことです。
しかし現在では、情報を検索して洗い出す能力やそのための知見が不足していたり、そもそも情報機器に関する理解が浅いためにうまく使いこなせなかったりする人のことも情報弱者と呼ぶことがあります。
インターネット上では「情弱」と略される
インターネット上では、情報弱者を省略した「情弱(じょうじゃく)」という言葉も使われています。
本来の「情報を得る機会が少ない人」としての意味合いもありますが、一般的な知識がない人や、話についていけていない人などをややばかにした表現として使うケースもあります。
情報弱者とデジタルデバイドとの違い
情報弱者の関連語として挙げられるのが「デジタルデバイド」です。昨今ニュースや新聞で見聞きする機会が増えている言葉のひとつで、身体的・社会的条件から情報を活用できる人とできない人の間で生まれる格差のことを指します。
デジタルデバイドは情報格差の言い換え表現であり、いわゆる情報強者と情報弱者との格差を意味する言葉です。
なぜ情報弱者が生まれるのか? 格差の主な原因
同じ日本に住んでいるのに、情報弱者とそうでない人との格差はどうして生じるのでしょうか? 理由としては、外的要因と内的要因の2つに分けることができます。
まず外的要因には、住んでいる場所が山奥や離島などで電波が届かず情報へのアクセスが難しいことが挙げられます。
そして内的要因は、情報の受け手である人自身の問題です。何かしらの障害を抱えていることやお金がなくてスマホ・PCを持てず、操作が困難であることがあてはまります。
こういった情報に関する悩みや問題が日に日に積み重なることで、情報格差が生じてしまうのです。
日本における情報弱者の特徴
情報弱者とは、具体的にどのような人を指すのでしょうか。ここでは、日本における情報弱者の特徴を5つに分けて解説します。
高齢者
日本の情報入手の方法は主に新聞やTVが中心でしたが、現代ではパソコンやスマートフォンへ変化してきています。日々最新機器が登場してアップデートされ、高齢者の中には「ついていけない」と諦めてしまう人もいるようです。また、そもそもデバイス自体を所有していないという人も少なくありません。
一方で、通信機器を持っている人の中にも、知りたい情報に行きつくまでの検索方法がわからないなど、うまく使いこなせないという人も多くいることが考えられます。
外国人
外国人も、日本では情報弱者になり得ます。仮に、旅行中の外国人が何かしらのトラブルに巻き込まれた場合、日本語が話せなければ情報入手もスムーズにいかない可能性があるからです。
新型コロナウイルス感染症が流行する前の2019年には、海外から年間約3,000万人以上の旅行者が日本に訪れ、在留外国人も増加傾向にありました。日本に滞在する外国人にとっては、言語の違いや文化の壁が情報入手のハードルを上げてしまう要因といえるでしょう。
障害者
障害者の場合、一人ひとりが抱える問題によって情報にアクセスする難易度が変わります。内閣府の障害者基本法でも、各々が情報を入手しやすいデバイスの開発とその活用方法を課題として挙げています。
今は情報を得たとしても、何かに活用したり他人に伝えたりすることが困難な人が多いというのが現状とされています。
貧困層
貧困が原因で情報弱者になるケースもあります。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によると、国内のスマホ普及率は2021年4月時点で92.8%。
ほとんどの人が情報をスマホから入手している中で、お金がなくて所持できない人は情報を得る窓口が狭まってしまい、ITリテラシーを身につけられないといった問題を抱えているのも事実です。
また、デジタルでの情報入手を学習する機会がないことで、今後も情報弱者のスパイラルは続いてしまうでしょう。
地方在住者
都市部と地方を比較すると、情報へのアクセスは都市部のほうが有利といえます。特に過疎化が進み、電話回線やインターネット通信などの普及が十分でない地域では、情報弱者になりうる可能性があります。
情報弱者のデメリット
情報弱者であることが決して悪いわけではありません。中には「情報なんて必要ない!」「わからないことがあれば、家族や友人に聞くから大丈夫」といった意見もあるでしょう。しかし、そこには見逃せないリスクもあります。
ここからは、正しく情報を扱えないことで起こるデメリットを3つ紹介します。
お金に関するトラブル
大きな問題のひとつとして、金銭面でのトラブルが挙げられます。最近でいうとFXや株購入、投資などがいい例です。「あっという間に100万円稼げる!」という広告をみて、お金をつぎ込んだものの気付けば赤字になっていた……というケースも発生しています。
せっかく情報を得ても、正しく活用できず誤った情報に踊らされてしまうと、最終的に金銭面で大きな損害を受けることがあります。
病気や命にかかわる問題
情報を入手できなかったことで、命にかかわる問題に発展するケースもあります。日本は災害国とも呼ばれるほど、毎年のように地震や台風、水害などが発生しています。
いざというときに正しい情報を適切に入手しなければ、命を落としかねません。情報を知っている人と、知らない人とでは、とる行動も違ってくるでしょう。
気付かずに被害者・加害者にもなり得る
情報の扱い方が不得意な人は、人に騙される可能性も高いといえます。オレオレ詐欺や、架空請求、インターネット広告で収入を得るアフィリエイトで騙されるなど、どれだけ注意喚起をしても被害に遭う人が一定数いるのも事実です。
また、知らないうちに被害者ではなく加害者の立場になっていたというケースもあり得ます。情報弱者であるために、人に被害を与える側になる可能性もあるということです。
情報弱者にならないための対策
情報弱者かた抜け出すため、またならないために今すぐできる対策を4つ紹介します。まずは、意識するところからはじめてみましょう。
ニュースで情報チェック
はじめやすいアクションとしては、まず毎日ニュースをみることです。スマートフォンには、無料のニュースアプリや、見出しのみで簡単に読めるものが数多くあります。
ほかにも知りたい情報やわからない言葉が出てきたら、すぐに調べるくせをつけると良いでしょう。
大事なのは情報に対して受け身にならず、自分から入手しにいく姿勢を持つことで、習慣になるまで根気強く続けることが大切です。
行政の活用
行政を活用して情報を得ることは、特に高齢者や障害者におすすめです。自治体ごとに情報弱者を対象としたサポート体制を整えて、独自のコミュニティを強化しつつあります。
2021年5月には総務省が情報弱者がデジタル化から取り残されないように、スマートフォンやマイナンバーカードの使い方を教える「デジタル活用支援員」の配置を発表。2025年までに1,000万人の高齢者に向けてスマホ操作などを教える講習会を行うことを目指すとしています。
こういった行政の取り組みは、信頼性も高いため積極的に利用していきましょう。
情報を多角的に考える
SNSを利用していると、人の意見に左右されてしまうこともあるでしょう。
特にTwitterやInstagramのフォロワー数やYouTubeの登録者が多い人の影響力は図り知れません。このような情報に振り回されてしまわないよう、しっかり自分の考えを持つことが大事になってきます。
SNSをいっそのこといろいろな人の意見を参考にする場として、物事のメリット・デメリットを自分なりに判断するなど、上手に活用してみてはいかがでしょうか。
情報源が正しいかどうかを疑う
せっかく情報を入手しても、間違った情報では意味がありません。情報には、一次情報・二次情報・三次情報があります。
一次情報とは、公的機関や自らの実体験によって得られた最も信頼できる情報のことをいい、二次情報は一次情報をもとにした第二の情報や人から聞いたものを指します。三次情報は、情報源が明らかではなく、ウソか本当かわからない情報のことを意味します。
このように、情報源が本当に信頼できるものかどうか疑うことも重要です。
情報弱者の英語表現
情報弱者は英語で「Information poor」と表現することができます。ちなみに、反対語である情報強者は「information rich」です。
また、情報弱者の関連語として情報格差を意味する「デジタルデバイド」は、英語で「digital divide」となります。
情報弱者を抜け出して生活レベルを向上させよう
「情報弱者=悪いこと」では、決してありません。スマホ・PCなどのデバイスを持っていなくても、幸せに暮らすことはできます。
しかしデジタル化がますます進んでいる中、リスク回避のためにも最低限の情報を得るツールは用意しておきたいものです。
情報が価値となる現代、常にアンテナを張って正しい情報を得る力を身につけましょう。