流通総額が20倍以上、利用者数は10倍以上

サービスとしては、まだ完璧な状態ではないものの、出店者が簡単に出品できて売り上げを拡大できるなど、これまでは販路がなかった人たちに、クックパッドマート上で販路を提供できるように流通や出荷方法などを同社なりに創意工夫することで着実に進化していると、川原田氏は手応えを口にする。

こうした取り組みのおかげとともにコロナ禍もあいまり、2020年の1年間でクックパッドマートの流通総額は20倍以上、利用者数は10倍以上に増加している。また、サービス開始当初(2018年9月時点)は東急東横線・学芸大学駅前の2か所に専用の冷蔵庫を設置して小規模でスタートしたが、現在(2021年9月時点)では東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の約550か所以上に拡大している。

立ち上げ時は3人のみだったクックパッドマートに携わる従業員数は、現在では50人以上(正社員、契約社員含む)となっている。当初は生産者からは「売れないから撤退します」ということもあったというが、現在ではそうした生産者も商品の見直しなどを行った結果、売上を伸ばすようになり、クックパッドマートの可能性を信じて「一緒に大きくしていこう」と声を掛けてくれているという。

さらに、クックパッドマート独自の出品管理ページや独自のラベルシールの活用など、梱包・出荷を簡素化するとともにフィードバック機能で消費者の反応も見える化している点も出店者はメリットとして感じているようだ。

  • 出店者側のメリット

    出店者側のメリット

クックパッドマートで出品される農産物や海産物は、基本的に関東圏内の生産者が市場に出荷しているものが並ぶ。少量多品種を生産する生産者が多いものの、こうした形態はスーパーでの流通が難しいことから、地産地消という観点からも双方にメリットがあるほか、仲卸の出店者もいるため地方産物も手にすることができる。

地産地消という点では、横浜市をはじめとした自治体や鉄道事業者と連携して、地域活性化や生産者の直売をサポートする取り組みなどを行っている。

より広範な人が利用できるプラットフォームへ

では、生産者や仲卸の人たちに関する“食のDX”という観点では、どのような影響を与えているのだろうか。

この点について尋ねてみると、川原田氏は「設備投資や特別なスキルを必要とせずにコンシューマ向けに販路を拡大できることはメリットが大きく、商品登録などは簡単にWeb上で可能なため従来にはない体験ではないかと思います」と説明する。

そして、サービスに関する今後の方向性について同氏は「現在、サービスに登録している出店者は700超のため、今後も拡大できればと考えています。最近では、さまざまなネット販売やインスタグラムなどを活用して、加工品を販売している作り手さんもいます。クックパッドマートとしても、より広範な作り手の人が利用できるプラットフォームを目指しています」と展望を述べている。

  • すでに出店者は700を超えている

    すでに出店者は700を超えている

ただ、出荷方法や販売方法をはじめ、現状のモデルでは日々出荷できる人や在庫を多く持つ人に優位性があるため、こうした点は是正していく必要がある。

そのため、蓄積した販売データの活用、独自流通や販売方法のさらなる拡充などサービスを進化させ、食品を販売するならクックパッドマートが一番に思い浮かぶようにしていきたいと川原田氏は語っている。

そろそろ年の瀬も迫り、2022年を迎える。年末・新年に家庭での食事を盛り上げるためにも、クックパッドマートで新鮮な食材を購入することも1つの手なのかもしれない。