「昨今のコロナ禍」など、昨今という言葉は日常で多く使用される言葉です。しかし、具体的にいつからを指すときに使えるのかと聞かれると悩んでしまう人もいるでしょう。本記事では、昨今のくわしい意味や類語・言い換え表現とのニュアンスの違いを紹介します。さらに、例文を交えた正しい使い方や英語表現なども紹介します。

  • 昨今とは?

    昨今についてくわしく解説していきます

「昨今」とはいつを意味する?

まずは昨今の意味や、いつからいつまでを指すのかなどを紹介していきます。

昨今は現在に近い過去から現在までを表す

昨今とは、「きのうきょう」「きょうこのごろ」「ちかごろ」のような、現在に近い過去から現在までを漠然と表現する意味の言葉です。

「昨」は、むかし、過ぎ去った日などの過去を意味する言葉。昨今のほか、昨年や昨秋などと使います。「今」は、現在という意味です。このふたつの言葉が組み合わさり、過去から現在までという意味を持つ昨今となります。

昨今の指す期間とは

現在に近い過去から現在までを指す言葉である昨今。ここで気になるのが、具体的にいつからの期間を指して使えるのかという点ではないでしょうか。

実は、昨今に「いつから」という明確な定義はありません。比較的、現在に近い過去から現在までの期間を漠然と表現する言葉なのです。

「花曇りの昨今、いかがお過ごしでしょうか」と、「昨今の若者言葉について研究する」では印象が異なるように、文脈によって対象となる期間は変わってきます。この場合、前者は1ヶ月前後の印象で、後者は数年単位の印象を抱く人が多いでしょう。このように、昨今という言葉は幅広い期間を対象にして使うことができます。

読み方は「さっこん」

「昨今」の読み方は「さっこん」です。「昨年」や「昨日」などと同じ感覚で「さくこん」と呼んでしまいそうですが、「昨今」の場合は「さっこん」と読むので、注意してください。

  • 昨今とは?

    昨今は「いつから」とは明確に決まっていません

「昨今」の使い方と例文

ここでは、例文を交えて昨今の使い方を紹介します。

昨今の日本では・昨今においては

昨今は、最近の社会風潮について語るときに使うことができます。「昨今の日本では」「昨今においては」などの表現で使用されるケースが多いでしょう。

【例文】
「昨今の日本では、正社員と契約社員の待遇の格差が問題視されています」
「昨今においては、恋愛に興味を持てない若者が増えているようです」

昨今の状況を鑑みて・昨今のコロナ禍・昨今の情勢

社会情勢や業界動向などを語る際にも昨今はよく使われます。「昨今の状況を鑑みて」「昨今のコロナ禍で」や「昨今の情勢では」といった表現が可能です。

【例文】
「昨今の状況を鑑みて、今回の展示会は中止とします」
「昨今のコロナ禍で店舗数が大幅に減少した」
「昨今の業界を取り巻く環境は決して楽観視できません」
「昨今の情勢を受けて、改革に踏み切った」

昨今を使うシーンとは?

昨今という言葉は、日常会話ではあまり使用しません。「昨今の仕事は忙しいね」や「昨今、調子が悪い日が続いていて……」といった使い方を、近しい人との会話で耳にすることはないでしょう。基本的には、本や書類などの文章やオフィシャルな場で使われる表現です。プレゼンテーションや政治家の演説など、人前で話すようなシーンにおいても使用されます。

  • 昨今の使い方と例文

    昨今は文書やオフィシャルな場で使う表現です

「昨今」の類語・言い換え表現

昨今には、似た意味を持つ類語がいくつかあります。それぞれ細かいニュアンスの違いがあるので、その点に注意して使い分けましょう。

最近

「最近」は、「少し前から現在までの間」を表し、昨今と似た印象を受ける言葉です。しかし、昨今ほど幅広い時期を指す印象はなく、長くても数か月程度を指す場合に用いるのが一般的ではないでしょうか。

また、昨今はオフィシャルな場で使用する硬い表現なのに対して、最近は日常会話でも使いやすい言葉です。

今日

「今日」は、「きょう」と読むときは「今すごしている、この日」を指しますが、「こんにち」と読む場合は「今の時代、現在」という意味でも使うことができます。

「今日の世界情勢」「今日では」のように使用でき、昨今と厳密な区別はありません。しかし、今日のほうが幅広いニュアンスを持つ言葉とされています。

近年

「近年」は「最近の数年間」という意味で、「現在から近い、過去の数年間」を指す言葉です。「近年の冬はあまり寒くない」は、「ここ数年の冬はあまり寒くない」といった意味になります。

昨今と意味も使い方も似ていますが、昨今のほうが対象となる期間が狭いといえるでしょう。昨今は年単位の過去を指す場合でも、「思い出せる範囲」で使用する傾向があります。「過去5年ほど」など長い期間を表現するときは「近年」で表したほうが無難でしょう。

  • 昨今の類語

    昨今の類語は最近、今日、近年などあります

「昨今」の対義語

昨今には明確な対義語はありません。ここでは、昨今とは違い過去を表す際に使う言葉をいくつか紹介します。

かつて

「かつて」は、「過去のある時期」を意味し、「ある過去から過去の期間」を指す言葉です。昨今は過去から現在までを指すのに対して、かつては過去のみを指します。

いにしえ

「過ぎ去った月日」「過ぎ去った古い時代」「昔」といった意味を持つ「いにしえ」。かつて、のように日常生活で使う機会はあまりないですが、過去を表す言葉として使うことができます。趣を感じられる文章を書きたいときなどに、「いにしえの時」「いにしえの古代遺跡観光」というように使ってみるといいでしょう。

昔時

昔時は「せきじ」と読みます。日常で頻繁に使う言葉ではないので、馴染みがない人も多いかもしれません。昔時は「むかし」「いにしえ」などの意味があり、過去を表す言葉として使うことができます。

  • 昨今の対義語

    昨今には明確な対義語はありません

「昨今」の英語表現

昨今を英語で表現するときは「nowadays 」が適しています。また「these days」「recently」なども昨今に近い単語といえるでしょう。

例えば、「昨今の若者は車に乗らない」ならば「Nowadays, young people don't drive a car.」と表現します。

  • 昨今の英語表現

    昨今の英語表現は「nowadays」「these days」「recently」などがあります

昨今をという言葉をビジネスシーンで正しく使おう

昨今は、「少し前から現在まで」を指すときに使う言葉です。いつからのことを指すか、という明確な定義はないので、1か月程度の短い期間から数年間のような長い期間まで、幅広い期間を対象に使うことができます。

また、昨今と同じような意味を持つ言葉がいくつかありますが、それぞれニュアンスが少し異なります。用いるときには、本記事で解説した内容を参考に上手く使い分けることが大切です。

昨今はビジネスシーンでよく使う表現なので、この機会に意味や正しい使い方を覚えておきましょう。