山崎ワールドの飛車回りから一気に端を攻略

藤井聡太竜王への挑戦権を争う第35期竜王戦(主催:読売新聞社)のランキング戦1組、山崎隆之八段―佐々木勇気七段戦が12月8日に関西将棋会館で行われました。結果は77手で山崎八段が勝利し、2回戦へ進出。敗れた佐々木七段は出場者決定戦へ回ります。

■2つのトーナメント

衝撃的だった藤井聡太新竜王の誕生からわずかひと月が経過しようという頃ですが、来期の挑戦者を決める熾烈な争いはすでに始まっています。最高ランクのランキング戦1組は16人のトーナメント。うち5人が決勝トーナメントに進出し、4人が降級する仕組みになっています。まずは強豪ぞろいのランキング戦のトーナメントを勝ち抜いた後に、各組の決勝進出者が集う決勝トーナメントに優勝すると藤井聡太竜王への挑戦権獲得となります。挑戦権を得るためには2つのトーナメントを制する必要があるのが竜王戦です。

■端の攻防を制した山崎八段が快勝

本局は山崎八段の先手番で相掛かりに進みました。中盤で2筋の飛車を▲8九飛と転回したのが山崎八段ならではの構想というべきでしょうか。対して佐々木七段も△9三桂と跳ね、以下▲9五歩△同歩▲同香△8六歩から一気に決戦となります。山崎八段はさらに▲9九飛と飛車を一マス寄せて端の突破を図りました。以下の▲7五角と、角と銀を刺し違えたのが好手で、△7五同飛に▲9三香不成と進んだ局面は9筋突破が確実で、かつ駒割りも角と銀桂の二枚換えで先手の駒得になっています。佐々木七段は懸命にアヤを求めますが、夕食休憩の再開直後に指された▲8四角が決め手で、この手を見た佐々木七段が投げました。投了の局面はまだ後手玉が詰むわけではありませんが、どうやっても後手の駒損が広がるばかりなので、逆転は難しいという判断でしょう。

今期が4期連続、通算10期目の1組となる山崎八段。過去の竜王戦における最高実績は第25期の挑戦者決定戦三番勝負進出です。前期は決勝トーナメントの初戦で藤井竜王に敗れていますが、最高峰の舞台におけるリベンジを目指して、まずは好スタートを切りました。

相崎修司(将棋情報局)

好スタートを切った山崎八段
好スタートを切った山崎八段