「いささか」はビジネスシーンなどで耳にする言葉ですが、意味や使い方がわからないという人は多いでしょう。言葉の意味を正しく理解していないと、会話の中で思わぬ誤解が生じたり、恥をかいてしまったりすることもあります。
この記事では、「いささか」という言葉の意味や使い方を解説。また、類語を例文とともにわかりやすく紹介していきます。
「いささか」とは
「いささか」の意味
「いささか」とは、「少し」「わずか」という意味の言葉です。数や量、ものの数や量、気持ちなど何かの程度が多くない状態、少なくわずかであることを表現する時に使われます。
「~ない」など打ち消しの言葉があとに続く場合には、「少しも」「まったく」という意味になるので、あわせて覚えておきましょう。
「いささか」は、やや古い言い回しの印象にも感じられますが、表現のひとつとして知っておくと、語彙力向上につながります。
「いささか」の漢字表記
「いささか」は漢字では「些か」または「聊か」と書きます。
ひらがなで「いささか」と表記されるのが一般的です。
古語での「いささか」の意味
「いささか」は、元々古語のひとつです。
古語としての「いささか」もまた、現代で使われる意味と同じように、「少し」「わずか」という意味と、打ち消しの言葉をあとに続けて「少しも」「まったく」という意味で使われます。
中学や高校の古典の授業で、なんとなく聞いた覚えのある人もいるかもしれません。
「いささか」の使い方・例文
「いささか」の使い方を例文で紹介します。言葉の意味とあわせて、正しい使い方を覚えておきましょう。
「いささか」を用いて謙遜する場合
「いささか」は、「少し」「わずか」という意味があるため、自分のことについて「大したことはない」というニュアンスで謙遜する時に使われることがあります。
A「君は物理学にすごく詳しいんだってね。」
B「いえ、学生時代に専攻していて、いささか勉強していたことがあるだけです。」
「いささか」を付けることで、かなり勉強していたとしても、自身の勉強量や努力をしていたことをひけらかさず、謙遜の表現になっています。
A「突然、北海道への出張をお願いして悪かったね。」
B「いえ、連絡をいただいた時はいささか驚きましたが、現地での作業がうまくいくように頑張ります。」
この場合の「いささか」は、本当はすごく驚いていたとしても、相手に対する気づかいから「いささか」を付けることで、「そんなに驚いていません、大丈夫ですよ」というニュアンスを表現しています。
「いささか」を用いて遠回しな表現をする場合
「いささか」を人に対して使うと、直接的な表現を避けて遠回しな伝え方にすることができます。
- トラブルが発生したことで、いささか大変な状況になったと聞きました。
- 彼の反省しない態度については、いささか問題であると感じています。
「いささか」を使うと、実際には大ごとであったとしても、相手に対する気づかいを含ませたり、表現を和らげたりする効果があります。
「いささか」を打ち消し表現とともに使う場合
「いささか」は、後ろに打ち消しの否定形を使うことで「少しも」「まったく」という意味になります。
- 彼がうちのチームに復帰できる見込みは、いささかもなかった。
- 来年にはうちの会社が倒産するかもしれないなんて、いささかも信じられない。
否定形を使った表現の変化形として、「いささかならず」という表現もあります。「いささかならず」は、量や程度が少しではないこと、つまり多いことや大いにそうであるという状態を意味します。
- いささかならず責任をとらなければならない。
「いささか」の変化形「いささかなりとも」
「いささか」を使う際の変化形の表現として、「いささかなりとも」という表現があり、意味は「少しでも」となります。
- 今度のプロジェクトに成功するためには、自分もいささかなりともチームに貢献したい。
「いささか」の類義語・言い換え表現
「いささか」という言葉は、元々古語であったことから堅苦しい印象もありますが、類語を覚えておけば、状況に合わせた使い分けが可能になります。例文とともに覚えておきましょう。
わずか
「わずか」は、数や量、程度や価値、時間などが少しであるという意味の言葉です。
- 締め切りまで残りわずかだった。
いくらか
「いくらか」は、あまり多くない数や量を意味します。
- 窓を開けたことで、いくらか部屋の空気がよくなった。
多少
「多少」は、量や程度が少しであるという意味がある言葉です。
- 今度の会議は多少早く終了できると思う。
多少には、ほかにも「多いことと少ないこと」という意味もあります。
- 変更点の多少にかかわらず、この資料は修正する予定だ。
少々・少し・少しばかり
「少々」「少し」「少しばかり」はいずれも、数量や程度が多くなく、わずかである状態を表し、「いささか」と同様の意味を持ちます。
- 新しいプロジェクトが発足すると知った時には、少々驚いた。
雀(すずめ)の涙
ごくわずかなもののたとえとして、「すずめの涙」という表現があります。
- ボーナスは、すずめの涙ほどしかなかった。
「いささか」の対義語
「いささか」の対義語と意味を、例文とともに紹介します。
とても
「とても」には、さまざまな意味がありますが、程度の度合いが普通を超えている状態を表現する時にも使われます。
- 今回のプロジェクトは、とても大きな成功を収めた。
非常に
「非常に」は、通常の状態ではないことを表し、程度が普通を超えている状態を意味します。
- 残業が続き、全員非常に疲れている。
たいそう
「たいそう」は、漢字では「大層」と書き、量や程度がはなはだしく普通の範囲を超えていることです。
- たいそうな量の書類が置かれている。
- この道具はたいそう評判がよく、みんなに人気だ。
大変
「大変」は、重大であること、程度が普通を超えて、著しい状態であることを意味します。
- 大変失礼いたしました。
大いに
「大いに」は、量や程度がたくさんであることを意味する表現です。
- 君が新しく加わることを、チームみんな大いに歓迎している。
「いささか」の英語表現
「いささか」の英語表現には、「a little」「somewhat」などがあります。
I'm a little nervous.
(いささか緊張している。)
I thought that was somewhat rude.
(いささか失礼な言い方だと思った。)
「いささか」の意味や使い方をマスターしよう
「いささか」とは、数や量、程度が少し、わずかであることを示す言葉です。打ち消しの否定表現とともに使えば、「少しも~ない」という意味になります。会話の中では、主に謙遜する時や、遠回しな表現をする時に使われる言葉です。
「いささか」はやや堅苦しい表現でもあるため、「少し」「わずか」などの類語とともに覚えておくといいでしょう。