新聞や書籍、ネット記事の最後に資料として使った書籍などを指して、「参照」という言葉が用いられることがあります。見かける機会が多い言葉ですので、大体の意味は知っていても、正確な意味は知らずに読んでいる人も多いでしょう。
そこで、この記事では「参照」という言葉の意味や成り立ち、使い方を解説。また、類語・関連語との違いや英語表現についても紹介します。
「参照(さんしょう)」の意味とは
「参照(さんしょう)」の意味は、「ほかのものと照らし合わせること」「引き比べて参考にすること」などです。
書籍などの資料を参考にしながら論文などを執筆する際に、参考にした資料を「参照資料」として資料名やページなどを表記載することがあります。
「参」「照」それぞれの意味
「参照」に使われている「参」には、「引き比べる」「調べる」という意味があり、訓読みは「まいる」です。
「照」の意味は「照らし合わせる」「見比べる」などで、訓読みには「てる」「てらす」などがあります。
2種類の似た意味を持つ漢字が一緒になって、「ほかのものと照らし合わせること」という意味を持つ「参照」という言葉になりました。
IT用語「参照渡し」とは
なお「参照」を使った言葉に、IT用語の「参照渡し」があります。
「参照渡し」とはコンピュータープログラムの中で、関数やプロシージャなどに渡す引数(パラメータ)として変数などを指定するときに、呼び出し先でも同じ実体を参照するよう渡す方式のことです。
渡された引数に変更を加えると、呼び出し元にも同じように反映されます。
「参照」の使い方と例文
「参照」という言葉は日常会話で使う機会はそう多くはないため、どう使えばいいのか戸惑ってしまう人も多いでしょう。
ここでは、「参照」はどのように使えばいいのか、具体的な使用例を紹介します。
「参照」の例文
・詳しくは、別紙資料をご参照ください
・過去20年間のデータを参照すると、人口減少が予測される
・いくつかの辞書を引いて言葉の意味を参照することで、やっと論文の意味が理解できた
・マニュアルを用意しておりますので、ご不明な点がありましたらご参照ください
・契約の詳細につきましては、こちらの資料をご参照いただきたく存じます
上記のように、資料などと照らし合わせる場合に、「参照」が使われます。
「参照」の誤用例
× お手元の資料をご参照してください
○ お手元の資料をご参照ください
○ お手元の資料をご参照いただきたく存じます
なお「参照」は、敬語として使う場合に間違いやすい表現でもあります。上記の誤用例にある「お(ご)~する」は、自分の動作を謙譲語にする表現のため、相手の動作に対して使用するのは間違いです。誤りに注意しながら使いましょう。
「参照」と類語・関連語との違い
「参照」には似た意味を持つ言葉がたくさんありますので、状況に合わせて使い分けましょう。ここでは、「参照」の代表的な類語と、「参照」との違いを紹介します。
「参考」と「参照」の違い
「参考」とは、「ほかの人の意見や事例、資料などと引き比べて、自分の考えを決める手がかりにすることや、その手がかり」という意味があり、「参照」と似た状況で使われます。
ただし「参考」は人の意見なども含め、幅広く手がかりにする際に使われることがありますが、「参照」の対象は主に文献やウェブのあるページや文章、グラフなど、明確に指定された情報というニュアンスがあります。
なお「参照」の場合も「参考」の場合も、他者のものを利用する場合は、出典を明記しましょう。
・マニュアルを用意しておりますので、ご不明な点がありましたら参考になさってください
・この書籍をレポート作成の参考文献とした
「引用」と「参照」の違い
「引用」には、「人の文章や文言を、自分の作成した文章や話などの中に引いて用いること」という意味があり、「用いる」に重きを置いた言葉です。
「参照」や「参考」の場合はある情報を基に、自分の文章で説明、要約をしますが、「引用」については、出典を明記の上、引用元の文章を、一言一句その通りに記述する必要があります。ただし制作物のうち、あくまで自分の文章が主体であり、引用はその中の一部である必要があるので、自分の文章より引用部分の割合が高いと不正利用と見なされる可能性があります。
・この書籍のP102をレポート作成のために引用した
「転載」と「参照」の違い
「転載」とは「すでに刊行された印刷物の文章や写真などを写し取って、ほかの刊行物に載せること」という意味です。この場合、「参照」や「参考」「引用」のように自分の文章がメインではなく、転載の部分がメインとなります。
他者のものを転載する場合は、出典の明記はもちろんのこと、基本的に著作権者の許諾が必要です。
・われわれの記事が無断で転載されているようなので、抗議しました
「照会」と「参照」の違い
「照会」とは、「問い合わせること」「あることと比べること」という意味を持ちます。「照会」は、公的な内容を問い合わせて調べる場合に用いられることが多いです。
「参照」も同じように問い合わせて参考にする状況で使われますが、対象は文献やウェブなどの文章である場合がほとんどです。
・A株式会社の住所が実在しているかどうか、役所に照会しました
「閲覧」と「参照」の違い
「閲覧」には「書物や新聞、書類・ウェブページなどの内容を調べながら読むこと」という意味があり、「読む」ことに重きを置いています。
「参照」には「読んで参考にする」という意味があり、「閲覧」とは少しニュアンスが異なる点に注意して使いましょう。
・レポート作成のヒントになりそうな文献を図書館で閲覧した
「確認」と「参照」の違い
「確認」には、「はっきり認めること。はっきり確かめること」という意味があり、「確かめる」ことに重きを置いています。
「参照」には「引き比べて参考にする」という意味があるので、「参考にする」という部分に重きを置いている点が「確認」との違いです。
・記載内容に間違いがないか、こちらをご確認いただけますか
「検索」と「参照」の違い
「検索」の意味は、「調べて探し出すこと」で、「探す」ことに重きを置いた言葉です。「参考にする」というニュアンスがある「参照」とは、使われる状況が少し異なります。
・専門用語の意味を知るために複数のサイトを検索した
「参照」の英語表現
ビジネスや日常生活の中で英語を使う機会があるなら、「参照」の英語表現も覚えておくと役立ちます。
ここでは、「参照」の代表的な英語表現を見ていきましょう。
reference
「reference」とは、「参照すること」「参考」などの意味がある名詞・形容詞です。「参照する」の英語表現として使われる機会がありますので、覚えておきましょう。
・He made reference to a user's manual.
(彼はユーザーズマニュアルを参照した)
・reference document
(参考文献)
consultation
「consultation」は「相談」という意味で知られている英語の名詞です。「参照」という意味も持ち合わせていますので、文書や書籍などを参考にする場合には、「consultation」を使うといいでしょう。
・consultation reason of document
(文書の参照理由)
「参照する」の英語表現は「refer」「compare with」「see」
「refer」は「言及する」という意味がある動詞ですが、「参照する」という意味も含んでいます。「compare with」は「比較する」という意味で使われますが、「参照する」の英語表現として使われることもまれにある表現です。
「see」は「見る」「確認する」などの意味がある英語の動詞ですが、「参照する」として使われることもあります。
「参照」とは照らし合わせて参考にすること
「参照」の意味は「照らし合わせて参考にすること」で、書籍やサイトなどを参考にするときに使われる言葉です。相手に参照してほしい場合には、「ご参照ください」という表現が使われます。
「参考」「引用」などの類語表現もいくつかありますので、違いを理解した上で使い分けましょう。