ASUSが今年の夏にリリースした6.67インチのスマートフォン「Zenfone 8 flip」。前モデルの「Zenfone 7」同様にアウトカメラが起き上がりインカメラにもなる可動式のフリップカメラを搭載している。Zenfoneシリーズのフラッグシップモデルでありハイエンドな性能をも併せ持つ。それと同時に登場した「Zenfone 8」は、カメラ以外はほぼ同等の性能を持ちつつ5.9型液晶を搭載するコンパクトなモデル。どちらもフリーSIMの5Gスマートフォンだ。
「Zenfone 8 flip」の主な仕様をおさらいしておこう。チップセットはQualcomm Snapdragon 888 5G、メモリが8GB、ストレージが256/128GBの2タイプ。SIMスロットはnanoSIM×2。液晶が6.67インチAMOLED(2,400×1,080ドット)でリフレッシュレートが90Hz対応、フリップによりカメラがイン/アウト併用で64MP(広角)、12MP(超広角)、8MP(望遠)、サイズが約165×77.2×9.6mmで重量が約230g。SIMはnanoSIM×2となる。バッテリー容量が5,000mAhでmicroSDメモリーカードスロットも備える。端子はUSB Type-C。
「Zenfone 8」の仕様は、チップセットはflipと同じQualcomm Snapdragon 888 5G、メモリが16/8GBの2タイプで、ストレージが256/128GBの2タイプ。SIMスロットはnanoSIM×2。液晶が5.9インチAMOLED(2,400×1,080ドット)でリフレッシュレートが120Hz対応、アウトカメラが64MP(広角)、12MP(超広角)、パンチホール式インカメラが12MP、サイズが約148×68.5×8.9mmで重量が約169g。SIMはnanoSIM×2となる。そしてさらに、IP65/IP68の防水・防塵機能、ZenFoneシリーズ初となるおサイフケータイ機能、3.5mmイヤホンジャックを備える。バッテリー容量は4,000mAh。端子はUSB Type-C。
フリップカメラによる撮影の多彩さがポイントの「Zenfone 8 flip」
Zenfone 8 flipのカメラは、前モデル「Zenfone 7」のように背面からカメラユニットが起き上がってインカメラとして機能させるフリップ形式。そのためフロント面にはカメラがなく、全体がスクリーンになっており6.67インチという大画面を実現している。指紋センサーもディスプレーに内蔵しており、パンチ穴やノッチといった邪魔なものがなく映像に集中できる。またフリップの開閉は音量ボタンなどで角度を自由に選べるため、セルフィーだけではなく対象に背部を直面させずとも撮りやすい向きでの撮影が可能だ。ただ、カメラが起き上がる速度が気になるところであろう。起動に時間がかかるのではシャッターチャンスを逃してしまう。以下に起動と、ボリュームボタンでの角度調節の様子を動画でお見せしよう。
カメラはAIによる補正機能も持つ。3眼のレンズは64MPの広角、12MPの超広角、8MPの望遠という構成でアプリ内で切り替えられる。作例として、歩道橋の上から撮影を行なった。カメラのデフォルトモードは広角となる。
さらに、AI補正を利用して夜景を撮影した。
また、カメラを自動的に動かして180度のパノラマ写真を撮る「オートパノラマ」モードも利用できる。セルフィーを高画質で撮るというだけに収まらず、可動するカメラを活用する機能を豊富に備えている。普通のスマートフォンだとパノラマ撮影は自分で動かさねばならないが、Zenfone 8 flipならカメラ部分が回転して自動的に撮影してくれる。
ただし、気になるのは可動部分は壊れる可能性が高まるという事実である。これはどんな機械も逃れることはできない宿命だ。そこでASUSは、開閉を行なうステッピングモーターの耐久性を30万回開閉しても壊れないよう50%も高めている。これならば、安心してフリップしまくれるだろう。
フリップとはまた別の機能だが、カメラには文書などの撮影に最適な「ドキュメントモード」も備えている。これは、書類や雑誌の記事を切り抜いたうえ歪み補正し、さらにPDFに変換までしてくれるというもの。カメラをメモ代わりにする人には嬉しいところだ。
そのほかのカメラの機能としては、手前の商品にピントを合わせて動画撮影が行なえる「商品レビューモード」。カメラが自動的に被写体を追従して撮影する「モーショントラッキング」なども備えている。
防水・防塵に加えておサイフケータイにも対応した「Zenfone 8」
Zenfone 8は背面カメラが可動するといったギミックはないオーソドックスなタイプだ。とはいえ、IP65/IP68基準の防水・防塵機能やおサイフケータイに対応するなど日本国内での利用に便利なモデルとなっている。
ディスプレーは5.9インチで、インカメラとして左上にパンチ穴を備えているので画面占有率は十分に高い。それでいて全体が比較的コンパクトな仕上がりになっており、片手で持ちやすくそのまま操作することが容易だ。しかも、画面下部をスワイプすることでディスプレーの表示範囲を狭くし片手での操作性を高める「片手モード」を備えている。この表示範囲は自分の使いやすいサイズに自由に設定が可能だ。
加えて、3.5mmオーディオジャックを備えているのもZenfone 8の特徴。筆者も含めてワイヤードがいいという人はいまだ多いので、こうした選択肢がとれるのはうれしいところだ。
背面の2眼レンズは64MPの広角と12MPの超広角になっており、カメラアプリ内で自由に切り替えられる。画角と画質を違いを使いこなしてほしい。さらにはAIによる補正で十分な映像が得られる。
試しに夜の街をZenfone 8 flipと同様にAIによる補正込みで撮影してみた。
flipと同様に書類などを撮影すると歪みを補正しPDF化まで行なえるドキュメントーモードも備えている。
両モデルの違いはカメラとサイズだけ?
Zenfone 8 flipとZenfone 8の差異を、ひと目でわかるよう以下に箇条書きでまとめてみた。
- Zenfone 8 flip
- リップカメラの搭載
- フリップカメラによるディスプレーの全面映像化
- 望遠まで含めた3眼レンズ
- 防水・防塵機能なし
- おサイフケータイはNFCのみ
- microSDメモリーカードスロットの搭載
- 3.5mmイヤホンジャックはなし
- バッテリー容量は5,000mAh
- Zenfone 8
- パンチホールによるインカメラ
- 広角と超広角の2眼レンズ
- 防水・防塵機能搭載
- おサイフケータイはNFC/Felica搭載
- microSDメモリーカードスロットはなし
- 3.5mmイヤホンジャック搭載
- バッテリー容量は4,000mAh
フリップカメラによる多彩な撮影を楽しむZenfone 8 flipと、防水・防塵に加えておサイフケータイを備えた利便性の高いオーソドックスなZenfone 8といったところだろう。
ベンチマークでスペックをチェック
最後に3つのベンチマークで各モデルのスペックをチェックしていく。使用するのは、「Geekbench」、「3DMark」の「Wild Life Extreme」と「Wild Life Extreme Stress Test」、「GFXBench」。
Zenfone 8 flipはどのベンチマークにおいても高水準となっている。ただし、Snapdragon 888搭載ということでストレステストでは熱がやや気になる。
Zenfone 8もチップセットは同じなので、ほぼ同じスコアが出ている。ストレステストでの温度上昇も同様。
性能はほぼ同じ! カメラの使い勝手で選ぼう
ベンチマークからも性能面で両機の差異がほとんどないことはおわかりいただけただろう。そうなると、防塵・防水、おサイフケータイ機能、イヤホンジャックの有無、本体のサイズといった違いを踏まえつつ、どちらを選ぶのかの決め手はフリップカメラになるはず。一般的なハイスペックスマートフォンを求めるなら、Zenfone 8は十分以上にその希望を満たしてくれる買って損はないモデルだろう。だが、それに加えて「面白み」も求めるなら、Zenfone 8 flipを選ぶべきだ。