「あしからず」とは、「気を悪くしないでほしい」という意味の言葉です。メールや手紙など、ビジネスシーンで目にする機会が多く、文末に書かれていると丁寧な印象のある表現といえます。
本記事では、「あしからず」の正しい意味や使い方を例文とともにわかりやすく解説します。また「あしからず」の言い換え表現も紹介しますので、参考にしてください。
「あしからず」の意味
「あしからず」の漢字表記は「悪しからず」です。古語である「悪し(あし)」の未然形「悪しから」に、打ち消しの助動詞「ず」を足したもので、実際に書く場合は基本的にひらがな表記が用いられます。
「あしからず」は「悪く思わないでほしい」、「気を悪くしないでほしい」との意味を込めて使用されます。断りを入れる相手に対して、不快感を与えないようにする目的で用いられる表現方法のひとつととらえましょう。
「あしからず」の使い方
「あしからず」は要望を受け入れるのが困難なときに使う
「あしからず」を使用するシーンとしては、相手の意向に添う返答ができないときに使います。「あしからず」は残念で申し訳ない気持ちを伝えるのに有効な言葉です。
将来的に相手に対して迷惑をかける可能性がある場合も「あしからず」が使われます。事前に断りを入れておきたい事柄があるときは、文章内で「あしからず」を使用するといいでしょう。
相手が目上の場合は「あしからず」を使わない
ビジネスにおいて、目上の相手に「あしからず」を用いることに対して、中には大変無礼と感じる人もいます。たとえ自分が申し訳なく思っている場合であっても、たったひとこと「あしからず」を用いたことで失礼とされてしまうこともあります。
したがって、「あしからず」は目上の人へのメールや手紙には極力使わないほうが賢明です。
また、「あしからず」を単独で文末に使用するのも避けましょう。「あしからず」で言い切る形だと、上から目線にも似た威圧的な印象を持たれてしまうこともあります。
相手に不快感を与えないためにも、後ろには「ご了承ください」や「ご容赦ください」などと付け加えるのが適切です。
・来週の会議は出席できない見込みです。あしからずご了承ください。
・〇〇様のご期待には添えかねます。あしからずご容赦ください。
「あしからず」の例文
「あしからず」の使い方は、後ろに伝えたい気持ちを付け加える形が一般的です。
あしからずご了承ください
「あしからずご了承ください」は、「あしからず」を用いた文章の中でも多くみられる表現です。
「あしからず」の後ろに「ご了承ください」とつけるのは、これから起こるできごとを対象とした文章のときで、「このできごとをどうか悪く受け取らず、納得していただきたいです」との意味が込められています。
・こちらの商品は数に限りがございます。売り切れの際はあしからずご了承ください。
・悪天候の際は中止となる場合がございます。あしからずご了承ください。
あしからずご容赦ください
「あしからずご容赦ください」も、「あしからず」の使い方としては定番の表現です。「起こってしまったできごとですが、どうか悪く思わず大目にみてください」の意味で使われます。
「ご容赦ください」は、すでに起こったできごとを対象とした文章で用いるため、「ご了承ください」と混同しないように注意しましょう。
・注文が殺到しており、お届け完了まで1~2か月を要する見込みです。あしからずご容赦ください。
・先日は会議を欠席し申し訳ございませんでした。あしからずご容赦ください。
「あしからず」への返し方
ビジネスでは「あしからず」を使った手紙、またはメールが届くことがあります。返事の書き方にも特徴がありますので理解しておきましょう。
「あしからず」を使うのは、手紙やメールを受け取った相手が気分を害していないか心配になったときが多いです。気にしないでほしいと伝えるためにも、以下のような丁寧な返信を心がけましょう。
・どうぞお気になさらないでください。
・全く気にしておりません。
「あしからず」の類語・言い換え
「あしからず」を使う際、目上の人へのメールや手紙には、失礼のないよう「あしからず」の代わりとなる類語を用いたいところですよね。
ここでは、ビジネスにふさわしい「あしからず」の言い換え表現を紹介します。
恐れ入りますが
「恐れ入りますが」は、文章の頭に使用することで「あしからず」と同じ気持ちを表すことができます。
・現在移動中で手が離せない状況です。恐れ入りますが、後ほど折り返しご連絡してもよろしいでしょうか。
申し訳ございませんが
「あしからず」の代わりに「申し訳ございませんが」「申し訳ありませんが」と表現しても問題ありません。
・その日は出張の予定があり対応できません。申し訳ございませんがご容赦ください。
恐縮でございますが
「恐縮でございますが」は、希望に添えないことを申し訳なく思うときには使用できます。「恐縮ですが」と短縮した形でも問題ありません。
・大変恐縮ですが、次回以降ご一緒できれば幸いです。
何卒・どうか
「何卒」や「どうか」も「あしからず」と似た意味の言葉です。文頭などに置いて使用します。
・想定を上回る需要により、販売を一時停止いたします。何卒ご容赦ください。
お含みおきください
「お含みおきください」は「あしからず」と違い、文末で使用される言葉です。「物事を心に留めてほしい」という意味を持ちます。
・明日以降にご予約いただくお客様に関しましては、お届けが約2か月遅れますことをお含みおきください。
せっかくですが
「せっかくですが」には、「~してくれたのにもかかわらず」の意味があります。丁寧な文章を作成するときは、頭に「せっかくですが」や「せっかくのお話ですが」などとつけるのが好ましいでしょう。
・せっかくのお話ですが、この案件を期日内に完成させることは難しく存じます。
「あしからず」の英語表現
「あしからず」の英語表現は「don't get me wrong(, but) ……」または「I'm sorry」となります。「don't get me wrong(, but) ……」は「誤解しないでいただきたいのですが」の意味です。
・I may say this and that, but don't get me wrong.
(あれこれと口を出すかもしれないが、誤解しないでほしい。)
「I'm sorry」や「excuse me」でも「すみません = あしからず」として使用できます。文脈を考慮しながら使い分けるといいでしょう。
・I am not going to be able to attend the meeting next week. Sorry about that.
(来週の会議には参加できそうにありません。あしからず。)
・Due to an urgent matter, I will not be able to attend the meeting, please excuse me.
(急用のため会議は欠席します、あしからず。)
「あしからず」の意味や使い方を理解しましょう
「あしからず」は「気を悪くしないでほしい」との意味合いで使われる言葉のひとつです。
後ろに「ご容赦ください」「ご了承ください」などをつけて使用するのが一般的であり、言い切る形で用いるのは目上の人に対して失礼にあたります。より丁寧に表現にする場合は「恐れ入りますが」「恐縮でございますが」といった類語に置き換えて使うのが適切でしょう。