敗者復活戦の決勝は佐藤康―郷田に
渡辺明棋王への挑戦権を争う第47期棋王戦(主催・共同通信社)の挑戦者決定トーナメント、勝者組決勝の永瀬拓矢王座―佐藤康光九段戦と敗者復活戦1回戦の郷田真隆九段―豊島将之九段戦が行われました。
永瀬―佐藤戦は後手番の佐藤九段が振り飛車の出だしを匂わせますが、なかなか飛車を動かしません。場合によっては相居飛車のまま戦う可能性もあったのでしょう。佐藤九段が中飛車に振ったのは20手目の局面ですが、すでに前例がなくなっています。
中盤、永瀬王座が▲5六歩を角取りに歩を打って、△2二角と引かせてから▲6五歩と角交換に出たのが好手順でした。後手から△8八角成▲同玉を交換に応じるのはやむを得ないところですが、先手は▲5六歩を実質ゼロ手で指せた計算です。駒の損得が生じたわけではありませんが、以下はお互い盤の左辺で向き合う玉の上部を先手が制圧する展開になって、永瀬王座がリードを奪いました。
■永瀬王座が快勝で挑戦者決定戦進出
先手の優位を決定づけたのは89手目の▲3四飛でしょうか。飛車と後手の銀を刺し違える一着ですが、△3四同金に対して▲4三角と飛車金取りに打てます。以下△5一歩▲5二角成△同歩▲3一飛と王手金取りが決まった局面は、佐藤九段をしても受けが難しくなっています。それでも後手は入玉を目指して頑張りますが、129手目の▲3四飛成で万事休す。95手目に打たれた王手金取りから30数手後に金を取った手がそのまま後手玉の死命を制しました。勝利した永瀬王座は第43期以来の挑戦者決定戦進出です。
■決断の端攻めが好判断で郷田九段が制勝
郷田―豊島戦は郷田九段の先手で相矢倉に。中盤は豊島九段が先攻しますが、それを逆用する▲7四歩△同飛▲8三角がうまい順でした。これで先手は馬を作れることが確定し、対して後手はその馬で攻め駒を責められるので、忙しくなっています。以下は後手陣に竜を作った郷田九段がリードしますが、豊島九段もその竜に当たりをかけて頑張ります。ですが竜当たりに構わず▲1四桂と端から寄せに出たのが好判断でした。一目は先手の駒が足らなさそうですが、郷田九段は少ない駒でも攻めが続くことを見切っていたのでしょうか。最後は▲1三歩と歩の裏から垂らしたのが好手で、後手玉をがんじがらめにしました。こうなっては豊島九段と言えども粘りようがありません。以下いくばくもなく投了となりました。
棋王戦はベスト4以上は2敗失格のシステム。敗者戦を勝利した郷田九段は次戦、挑戦者決定戦進出を懸けて佐藤九段と対戦し、勝った方が永瀬王座との挑戦者決定戦二番勝負を戦います。佐藤―郷田戦は今期の棋王戦トーナメント準決勝以来の再戦です。この時は佐藤九段が勝っていますが、今度は果たしてどうなるでしょうか。
相崎修司(将棋情報局)