健康への関心が高まる中、日常的に身につけて身体の情報を収集できるスマートウォッチへの関心も高まっている。今回紹介する「Amazfit GTR 3」は、歩数や運動だけでなく、睡眠や血中酸素濃度など、様々な身体情報を、24時間取得し続けられるスマートウォッチだ。使い勝手をレポートしよう。
クラシカルなデザインの大画面スマートウォッチ
Amazfitはスマートフォンシェア世界4位の中国・小米(シャオミ)のパートナー企業で、ウェアラブルデバイスを製造・販売しているZepp Health Corporation (中国国内向けブランド名は華米科技) が、2015年から展開しているスマートデバイスのブランドだ。今回紹介する「Amazfit GTR 3」(以下GTR3)は、同社の主力製品であるスマートウォッチの中でも、10月12日に発売されたばかりの新製品だ。
GTR3は新製品3機種「GTR 3 Pro」「GTR 3」「GTS」の中ではミドルレンジに相当する。価格は3万4,800円だ。本体サイズは45.8×45.8×10.8mm、重さは32g(ストラップ除く)。ボディ素材はアルミニウム合金で、ボディカラーはサンダーブラックとムーンライトグレーの2色。5ATMの防水性能を持つため、雨やシャワー程度であれば着けたままでも問題ない。
本体にはGPSが搭載されており、位置情報はGTR3単体で取得できるが、Wi-Fiやセルラー機能はないので、ネットへの接続はスマートフォンが必要になる。スマートフォンとの接続はBluetooth経由となる。また基本的な設定などをスマートフォン用の「Zepp」アプリで行うのは、同社のスマートデバイスと共通だ。
文字盤は直径1.39インチ(約35.3mm)の円形AMOLEDディスプレイを搭載。画面の解像度は326ppiで、大画面と相まって、小さめの文字でも読みやすい。また、明るさは1,000nitとかなり明るく、直射日光下でもかなり見やすい。
文字盤は100種類以上が用意されており、前モデルと比べて、新たに15種類のアニメーション文字盤も追加されている。標準では10秒程度で画面がオフになり、文字盤を覗き込むように手首を上げると表示されるようになっているが、後述する「Zepp」アプリで「スクリーンオフ表示」の「有効状態」を「終日」に設定すると、常時表示状態に変わる。なお、常時表示に設定すると、画面全体がオフにはならないが、一定の時間で、アナログ時計であれば秒針やインデックスが消え、分針と時針だけが表示されるようにして画面の変化を極力少なくし、節電する仕組みだ。
本体右側には上にクラウン(リューズ)が、下にボタンが用意されている(本体の設定で180度回転した場合はクラウンが左下側になる)。クラウンを押すとアプリの一覧が表示され、回すことで一覧を上下に移動できる。ここでメニューから目的のアプリが見つかったら、もう一度クラウンを押せばアプリを起動できる…とよかったのだが、実際には文字盤表示に戻ってしまう。つまり、クラウンの押下はメニューと文字盤の行き来しかサポートしておらず、アプリの選択やアプリ内でのメニュー選択は画面をタップして行うことになる。画面が大きいのでタッチ操作自体はしやすいが、ここは(Apple Watch風に)クラウンを押すことで選択もできると、より直感的だったと思う。下のボタンはあらかじめ設定しておいたアプリのショートカットボタンとなっているので、よく使うものを設定しておきたい。
バンドは取り付け幅22mmのものが付属する。素材は抗菌タイプのシリコン製で、汗などに強く、丸洗いできるので清潔に利用できるのはうれしい。バンドはいわゆるクイックレバー/クイックリリースと呼ばれるタイプで、時計本体とバンドをつなぐバネ棒にレバーが付いており、レバーを引くことで容易に着脱・交換できる。
本体裏面には血中酸素濃度や心拍数を取得するための光学式センサー「6PD BioTracker PPG 3.0」と、充電用の端子が装備されている。充電端子は極性があるようで、充電器に内蔵した磁石で正しい方向を必ず向くようになる。なお、充電時間は約2時間と短いが、バッテリーは標準的な使用で公称21日、ハードな使用でも10日間、GPSを連続稼働させていても35時間も持つという。
実際に満充電状態から数日間使ってみたが、血中酸素と心拍数のモニタリングを24時間に設定し、睡眠中の呼吸監視も行うなど、電力をかなり使う設定にして、ほぼ24時間着けっぱなしのままで丸6日経過した時点で残バッテリー量は25%あったので、ハードな使用で10日間という公称値はかなり信頼できる数値だ。実際、一回の充電でほぼ1週間は使えると考えておいていいだろう。特にヘルスケア関連のデータ取得が強みの機種なので、装着したままで長期間使えるのは大変心強い点だ。
アプリの動作は軽快
GTR 3は独自の省電力設計OS「Zepp OS」を採用している。ちなみに、香港の調査会社Counterpoint Researchによると、Zepp OSはスマートウォッチのOS別シェアで世界4位と、実はGoogleのWear OS by Googleよりもシェアが高いとのこと。
メニューまわりの操作はハードウェアの部で紹介したように、クラウンとショートカットボタン、タッチ操作で行う。これに加えて、画面を上から下にスワイプするとダッシュボードが、下から上にスワイプすると通知類が表示され、左右にスワイプするとアプリ画面の切り替え表示になる。
アプリ類は心拍数や血中酸素濃度の計測などヘルスケア関連のもの、運動の記録などスポーツ関連のもの、天気や音楽、アラーム、カレンダーなどデータ閲覧系のものが用意されており、音声アシスタントとしてAmazonのAlexaを採用している。また、標準のものに加えて11種類のアプリが用意されており、Zeppアプリ内のApp Storeから追加インストールできる。ただしApp Storeと言っても実際にサードパーティ製アプリが用意されているわけではなく、アプリの開発キットも公開されていないようなので、現時点では単に追加アプリ置き場という感じだ。早くサードパーティにも公開されることを期待したい。
また、盤面もアプリ内で選択・ダウンロードして時計本体と同期させてインストールする形になっているが、こちらもユーザーが独自の文字盤を作成できるようになることを期待したい。
アプリの動作自体はかなり軽快で、操作がもたつくなどしてストレスを感じる場面はほとんどなかった。この辺りは独自OSを採用する強みといえるだろう。
身体情報やスポーツの動作を取得
スマートウォッチの役割として、内蔵するモーションセンサーや生体情報センサー類を使った活動計としての機能もある。GTR 3もこうしたジャンルについてはかなり重視しており、充実した機能が用意されている。
スポーツ関連では、モーションセンサーや心拍計、血中酸素計などを駆使して消費カロリーなどのデータを記録してくれる。対応する競技の数は実に150種類以上と、前モデルであるGTR 2シリーズとくらべて60種類以上も増えている。
どんなスポーツが登録されているのだろうかと思って見てみたが、例えば格闘技なら柔道と柔術が別に分かれて登録されているほか、球技ではセパタクロー(東南アジアの足でボールを扱うバレーボールに似た競技)やペロタ(スペイン・バスク地方のスカッシュに似た競技)といったややマイナーな競技、さらにはeスポーツや、チェスなどのボード/カードゲームまで登録されている。競技ごとにモーションが違ったりするので、それぞれに合わせてカロリー消費などの計算を変えているのだろう。
標準ではクラウン下のショートカットボタンに運動アシスタントが登録されているので、ここから競技を選んで「GO」ボタンを押せば記録が開始される。また、ランニング、ウォーキング、サイクリング、水泳など8種類のスポーツについては、運動を開始すると動きを認識して記録を開始するスマート認識機能がある。記録しやすさについてはかなり高いレベルになっていると感じられた。
ヘルスケア機能については、前述した「6PD BioTracker PPG 3.0」を使って血中酸素濃度や心拍数などを記録できる。基本的にはZeppアプリの「健康モニタリング」設定で各項目の「モニタリング」機能をオンにしておくと、自動で記録してくれる。自動測定のほかでは、「ワンタップで測定」アプリを使えば、45秒程度で心拍数、血中酸素、ストレス、呼吸数の4項目を即座に測定可能だ。
記録されたデータはスマートウォッチ上でも見られるが、基本的にはZeppアプリ上の「ホームページ」タブで確認する。今回特に注目したいのは「睡眠」で、GTR 3を着けたまま寝ていると、動きから睡眠の深さなどを計測してくれるほか、ベータ版ではあるが、睡眠中の呼吸停止なども検出してくれる。睡眠の質や時間を管理するのに便利だが、記録は夜間(22時〜7時くらい)に寝たものだと自動で識別して記録してくれるのに、昼間の仮眠については、20分以上の仮眠は記録されるはずにもかかわらず、筆者が試した範囲ではうまくいかなかった。この辺りは手動でも記録できるようになると、さらに価値が高まるだろう。
新型コロナウイルスの影響もあって、健康志向の高まりからスマートウォッチへの注目も高まっており、日本市場では年間200万台以上が販売されているという。Amazfit GTR 3は長時間利用可能なバッテリー性能と軽快なレスポンス、充実したヘルスケア機能、多彩なスポーツに対応した活動計などを備えており、ビジネスシーンなどで着けていて違和感のないデザインもあわせ持つ、総合力の高いスマートウォッチだ。これからスマートウォッチデビューしてみたい、あるいは安価なスマートウォッチからステップアップしたいという人で、特にヘルスケアやスポーツの記録を重視しているのなら、候補に入れて欲しい1台だ。