10万円越えのいわゆる「高級炊飯器」は、加熱方法や内釜などメーカーごとに個性があります。ここでは、タイガー魔法瓶の土鍋圧力IHジャー炊飯器「〈炊きたて〉土鍋ご泡火ほうび炊き」シリーズの最新モデル「JPL-G100」を自宅でじっくり試して、使い勝手や美味しさについてお届けします。〈炊きたて〉土鍋ご泡火ほうび炊きシリーズは、名前にもあるように「本物の土鍋」を内釜に使っている人気シリーズです。

  • 我が家で試用したのはミネラルブラックの本体。光の当たり方によってチャーコールグレーのような色にも見えるマット塗装です

  • ミネラルブラック色(写真左)と、爽やかなエクリュホワイト色(写真右)

液晶タッチパネルでわかりやすい操作性

JPL-G100は5.5合タイプの圧力IH炊飯器。本体サイズはW29×D35.1×H22cmと標準的ですが、曲線を使った柔らかな見た目で圧迫感がなく、比較的コンパクトに見えます。一方、本体は7.4kgと少々重めです。

  • 個人的に気に入っているのが真横から見たデザイン。かまどを彷彿とさせるお椀型で丸みあるデザイン。つや消し塗装と相まって高級感ある見た目

JPL-G100の特徴は、内釜に使われている「本土鍋」。三重県四日市市の「萬古焼(ばんこやき)」という本物の土鍋です。土鍋は割れやすそうで不安……という人もいますが、萬古焼は一般的な土鍋より2倍割れにくいという素材。しかも、メーカーによる5年間の割れ保証もついているので、万が一のときも安心です。

ただし、内釜だけで重さは約1.1kg(実測値)となかなか。高級炊飯器の多くは蓄熱性や熱伝導性を重視して重たい内釜を採用しているため、1.1kgというのは高級炊飯器としては「ものすごく重い」部類ではありません。とはいえ、炊飯を準備するときは水と米が加わるので、1.5kgくらいになります。素材の特性上しかたないのですが、もう少し軽くなってほしいのも正直なところ。

  • 土鍋製なので、金属製の内釜と比較すると厚みがあります。手で触ると、金属と比較して柔らかく温かみがあるまさに土鍋素材

  • 内側はフッ素コーティング。「土鍋は使用後にごはん粒がくっつくのでは?」という心配はなし。写真は使用後の写真ですが、ごはん粒がこびりついていません

本体デザインで気に入ったのは大きめの液晶パネル。JPL-G100の液晶パネルはタッチ式になっており、ボタンでメニューをタッチすると、必要なメニューだけが表示されます。最近の炊飯器は機能も多いため、この「必要なメニューだけ表示」というのはなかなか便利なんです。

  • メニューに触れると必要な項目だけ表示し、音声での読み上げもある液晶タッチパネル。明るくて視認性がよく、とても使いやすかったです

高級モデルならではの炊き上がり! 土鍋ならではの「おこげ」も作れる

炊飯器で気になるのはやっぱりごはんの美味しさ。新モデルJPL-G100は、70銘柄のお米に合わせて炊飯する「銘柄巧み炊きわけ」機能を搭載しています。我が家では普段よく利用する「コシヒカリ」のほか、「きぬひかり」と「青天の霹靂(へきれき)」を2合ずつ炊いてみました。

  • 銘柄指定では、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「ゆめびりか」「つや姫」「あきたこまち」「にこまる」をボタンで選択可能

  • ほかの64銘柄は取扱説明書を見て番号を入力する必要があります。一度設定すれば次回からは銘柄が記憶されるのですが、新しい銘柄を試すたびに取説が必要なのはちょっと面倒。入力した番号の銘柄は音声で読み上げてくれるので、入力する番号を間違える心配はありません

  • お米の銘柄によって硬さや食感が違います

タイガー魔法瓶によると、土鍋は蓄熱性が高いほか、表面に細かな凹凸がある点が炊飯に適した理由。この凹凸が沸騰時に細やかな泡を作り、お米を包んで保護。お米のデンプンを閉じ込めて甘みのあるごはんに炊き上げます。

実際に炊飯してみると、コシヒカリは普段よりモチッとした食感で、甘みを強く感じました。きぬひかりはコシヒカリよりシャキッとしていて、さわやかな香りが強調されている印象。初めて食べた青天の霹靂は、ふっくらとした粒立ちのよさと弾力が特徴的です。味や香りのクセが強すぎないので、おかずに合うごはんではないでしょうか。

コシヒカリときぬひかりは普段もよく利用するのですが、我が家の日常的な炊飯と比べて、JPL-G100で炊いたごはんは食感や味、香りの特徴が強調されているように感じます。ただ、銘柄の特徴を出すためか、銘柄ごとに「もっちり」や「しゃっきり」といった食感や火加減を自分で調整できないのはちょっと残念です。

  • 「きぬひかり」の炊き上がり。一粒一粒がツヤツヤしていてシャキッと存在を主張していますね。次の日にチャーハンを作ったら、パラパラになりやすくて粒立ちのよさを実感しました

土鍋のごはんは「おこげ」が楽しみという人もいるでしょう。そんなおこげ派には、銘柄指定をせず「火かげん」を中あるいは強にするメニューが用意されています。火加減のほか、「しゃっきり」「もっちり」といった食感も5段階から選択可能です。

「火加減:強」と「しゃっきり」で3合のごはんを炊飯したところ、しっかりおこげがついていました。少し粘り気がある食感で、「美味しい!」と絶賛する人もいれば、「歯にくっつくのがちょっと……」という人もいて、好みが分かれました。個人的には、おこげを作るとごはん全体に香ばしくて食欲をそそる香りがつく点が気に入っています。

  • 「火加減:強」のおこげ。ごはんに香ばしさが加わり、食欲がふつふつ!

  • フツーの白いごはんのおこげは少し粘り気があって好き嫌いが分かれましたが、炊き込みごはんのおこげは満場一致で美味! 我が家の試食会では奪い合い。醤油を加えているためか、おこげの食感は固めで、味も食感もすばらしい出来でした。このおこげの美味しさは土鍋のおかげかも

少量炊きや長時間保温など、便利な機能も盛りだくさん

JPL-G100は、少量炊きが美味しくできるのも魅力。「一合料亭炊き専用 内ふた」という付属品があり、このフタを使うことで0.5合や1合のお米を美味しく炊飯できるのです。

5.5合炊きの炊飯器で0.5合や1合のお米を炊くと、内釜の空き空間が大きすぎて熱が均一に伝わりません(1升炊きでも同じ)。このため、お米の甘みや旨みが損なわれたり、一部がベちょっとしたごはんになったりと、はっきりいってマズくなることが多いのです。JPL-G100はこの問題を、別パーツのフタによって釜内の空間を狭くし、解決しています。試しに1合を炊いてみたところ、確かに少量炊きとは思えない美味しさ。一粒一粒しっかりとしています。

  • フタをすることで0.5合や1合を美味しく炊飯。1合はだいたい2膳分なので、夫婦2人暮らしなら毎回炊きたてのご飯を楽しめますね

  • 内釜に「一合料亭炊き専用 内ふた」を乗せた状態

  • 一合炊きしたご飯をよそったところ。少量炊きはベちょっとした部分ができがちなのですが、ご飯が一粒一粒、立っているのがわかります

JPL-G100は保温機能にも注目です。湿度センサーを内蔵しており、「ハリつやポンプ」が湿度に合わせて外気を取り込み、熱と蒸気を放出して保温ごはんに最適な湿度を保ちます。このため、長時間保温してもごはんの香りや色が変化しにくいとのこと。

実際に24時間の保温をしてみたところ、ツヤが減って少しぬか臭いかな? とは感じますが、特に食べにくいと感じるほどではありませんでした。24時間経過しても、一般的な炊飯器で3~4時間保温したくらいの劣化という印象です。我が家は長時間保温した独特のニオイが嫌で、毎回残ったごはんは冷凍していますが、これなら朝と夜のごはんを一気に炊いて保温しても問題ないと感じました。

  • 本体に何時間保温したかが表示されます。最大24時間保温し、その後は24の文字が点滅します

  • 24時間保温したご飯をよそったところ。保温特有の香りはあり、白さも落ちていますが「保温してから数時間たったかな?」くらいの違い

  • 内釜の湿度を最適に保つ保温がキモ

土鍋ごはんの美味しさに銘柄米の魅力をプラス

タイガーの土鍋ご泡火ほうび炊きシリーズは、もともと土鍋ごはん派に人気がありました。新モデルのJPL-G100は銘柄炊きの種類が従来モデルの50種類から70種類に増えたうえ、銘柄の特徴をより際立たせた炊飯ができている印象です。さらに、保温機能も進化して、長時間保温がより美味しくなっています。

毎日の炊飯では内釜がちょっと重いのが気になりますが、炊いたごはんを食べると「この美味しいごはんのためにがんばるか」という気にも。「一合料亭炊き」で少量ごはんも美味しく炊けるので、少人数の家庭やごはんを食べる量が少ない家庭は、普段は「一合料亭炊き」、お客さんが来るときは3合以上のごはんを炊くといった使い方をして、ごはんを余らせずいつでも炊きたてを楽しめるのもうれしいところです。

  • 日々のお手入れで洗う必要があるのは、内釜と内ぶたのみ

  • メディア向けの試食会から。美味しいごはんと、(良い意味での)一汁一菜を堪能しました(編集林)