デジタルの力で顧客に働く喜びを提供していく - リコー

続いて、注力領域「エンタープライズ企業」「通信事業者」「政府・自治体」の最新事例の紹介が行われた。「エンタープライズ企業」の事例は、リコー 理事 デジタル戦略部 基盤開発統括センター 所長を務める小林 一則氏が説明を行った。リコーは経営戦略として、「デジタルサービス会社」への変革を掲げているが、同氏はリコーの変革を技術面からリードする立場にある。

  • リコー 理事 デジタル戦略部 基盤開発統括センター 所長 小林 一則氏

経営戦略を具現化したサービスの一つに、今年7月にローンチした「仕事のAI」の「RICOH 品質分析サービス Standard for 食品業」がある。同サービスは、顧客の声を同社独自の自然言語処理を行うAIが分析し、重要な情報を自動で抽出して、業務効率化や経営のリスク低減を支援する。

小林氏はリコーが進めている社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)についても語った。同氏は、「自社のDXについて検討を始めた2019年はDXについてさまざまな議論があり、混乱していました。そこで、『リコーなりのDXを定めましょう』と社長に言いました。これにより、『EMPOWERING DIGITAL WORKPLASCES』をDXのスローガンにしようということになりました」と説明した。

リコーグループは顧客に提供する価値を「EMPOWERING DIGITAL WORKPLASCES」と定義しており、あらゆる現場ではたらく人に生み出す力を提供することを目指している。「お客さまに働くに喜びを提供するには、私たち自身が変わらなければいけない。ハッピーではない社員がお客さまにハッピーを届けることができません」と小林氏。

そして、小林氏も「攻めと守りの両方を実践することが大事」と話した。「当社の100年近い歴史はずっと変化の連続でした。変化していないように見えること、変化をバランシングさせてマネージングしていくことが大事です」(小林)

リコーは今年、クラウドシフトに力を入れており、オンプレミスにあるシステムの半分程度をクラウドに移行する計画とのことだ。

VMwareとともに5Gのビジネスモデル構築を - NTTドコモ

「通信事業者」の事例は、NTTドコモ 執行役員 5G・IoTビジネス部長を務める坪谷寿一氏が説明した。NTTドコモは5G技術検証環境に直結したクラウド基盤「ドコモ5Gオープンクラウド」を提供しているが、その基盤に、「VMware vSphere」や「VMware vSAN」が採用されている。また、MEC(Multi-access Edge Computing)の特徴を持つクラウドサービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」などを支えるクラウド基盤には「VMware Cloud Foundation on VxRail」が採用されている。

  • NTTドコモ 執行役員 5G・IoTビジネス部長 坪谷寿一氏

同社は地域における人材・技術の交流の場として、「ドコモ 5G DX スクエア」を全国各地に展開し、5Gを体験できる環境を提供している。坪谷氏は、ドコモ 5G DX スクエアについて、「エンタープライズにおけるドコモショップみたいな場。共創の場を全国に広げて、社会に新しい付加価値を提供していきたい」と語った。

坪谷氏は5Gの前期のソリューションについて、受注が400を超えていることを明かし、日本で着実に5Gソリューションが導入されつつあることを示した。こうした中、同社は5G市場のターゲットとして、「医療」「建設」「XR」「映像」に注目しているという。「医療においては、リモート診察の可能性を感じています。建設業界では、施工現場のマシンの遠隔操作など、5G関連の受注が増えています」と小林氏。

坪谷氏は「MEC、AIで培ってきたアプリケーションは5Gで生かせる資産。5Gは産業構造のイネーブラーとなる強力なテクノロジーです。単純にVMwareのプラットフォームを実装するだけでなく、ヴイエムウェアと共にビジネスモデルをつくっていきたい。ヴイエムウェアにはさまざまなアプリケーションの連携で培ってきたネットワークを5G時代のMECにマッシュアップさせてもらいたい。コラボレーションにポテンシャルを感じています」と話していた。

北海道を課題だけでなく、デジタルの先進地に - 北海道庁

「政府・自治体」の事例は、北海道知事の鈴木直道氏が説明を行った。ヴイエムウェアは今年3月、日本国内の自治体・行政機関に向けたセキュリティおよびデジタル人材育成への支援体制を強化すること、その取り組みの第一弾として、北海道庁と連携協定を締結したことを発表していた。

  • 北海道知事 鈴木直道氏

鈴木氏は、「北海道は全国よりも、人口減少や過疎化が進んでおり、課題先進地といえる。そこで、デジタルを活用することで、新たな強みに転換して、活力ある北海道にしていきたい。北海道はデジタルの活用でも先進地になる、その高いポテンシャルがあると考えている」と語った。

その具体的な取り組みとして、デジタル技術を活用した「無人トラクター」の運行やドローンを活用した農薬や肥料の散布などのスマート農業が紹介された。岩見沢市では、無人トラクターが公道を走っており、5Gを活用し遠隔地から運転制御が行われているという。

鈴木氏は同庁の課題解決の取り組みも紹介した。同庁では、サービス向上と業務効率化を目指し、さまざまな施策を講じている。例えば、働き化を変えていくため、全職員がテレワークをできる環境を整備、来年度から 全職員がいつでもどこでも働くことが可能になる。「都道府県単位で1.8万台の携帯電話を導入するのは初の取り組み。テザリングを使って職場のPCをどこでも使えるようにする。テレワーク環境ではセキュリティが重要だが、この部分をヴイエムウェアに技術提供してもらっている」(同氏)

そして、鈴木氏は「現在、デジタル人材の育成・確保が重要な課題となっている。ヴイエムウェアには新たな展開をお願いしたい」と、山中氏に呼びかけた。

これに対し、山中氏は「われわれとしては2つの施策を提供できる。1つはデジタルのリテラシーをあげていくための勉強会を開催すること。これにより、デジタルの持つ力を感じてもらいたい。もう1つは、エコシステムの構築を支援すること。われわれは、5Gを展開する通信事業者、DXソリューションを提供するパートナーと付き合いがある。地場企業との協力を前提に、エコシステム構築を支援していきたい」と返した。