米Twitterは11月29日(現地時間)、Jack Dorsey氏の最高経営責任者(CEO)退任と、最高技術責任者(CTO)を務めていたParag Agrawal氏のCEO就任を発表した。Dorsey氏は2022年の株主総会までの任期が終了したら取締役からも退く。同社はまた、取締役会長にBret Taylor氏(Salesforce最高執行責任者)を指名した。
Dorsey氏は、Evan Williams氏、Biz Stone氏と共にTwitterを設立。2006年3月21日のDorsey氏が投稿した「just setting up my twttr」というツイートがTwitter初の公開ツイートと言われている。2007年にCEOに就任したが、急速に利用が拡大する過程でサービスが不安定になり、インフラ強化を巡ってWilliams氏との間に溝が生じ、2008年に取締役会の要請によってCEOを退任した。
その後Twitterはユーザーを増やすものの、収益化で苦戦し、SNSの競争でFacebookのリードを許した。長期的な成長が見通せず株価が低迷する中、2015年にDorsey氏が暫定CEOに就任した。同氏は決済サービス/オンライン決済システムを提供するSquareを成功させており、SquareのCEOとの兼務を疑問視する声が取締役会で上がり、CEO探しが続けられたものの、最終的にDorsey氏が正式CEOに選ばれた。
創業メンバーのCEO復帰によって、当時悪化していた開発者コミュニティとの関係を含めエコシステムが安定。エンドユーザーの利用を促進する新機能の提供、利用者基盤の拡大が収益の向上につながるプラス循環への見通しが徐々に開けてきた。
Dorsey氏の2度目のCEO在任期には、米国でフェイクニュースが社会問題化した。Twitterにも批判の目が向けられたが、前回の米大統領選挙において「暴力を煽動する可能性」を理由にトランプ前大統領の個人アカウントを凍結させるなど、Twitterは迅速に対応。ソーシャルメディア大手の社会的な影響力、誹謗中傷やプライバシー侵害、広告を主な収益源とするリスクなどを危ぶむ声は絶えないが、強い逆風にさらされているFacebookに比べてTwitterは情報発信ツールとしての価値を示せており、著名人や政治家、企業などの発信に幅広く利用されている。
新CEOのAgrawal氏は、2011年に広告担当のエンジニアとしてTwitterに入社、2018年にCTOに就任した。CTOとして、コンシューマ向けと収益向けの両面で一貫した機械学習とAIの活用を推進。その成果がサービスに現れ始めており、例えば、不適切な投稿をすばやく特定して優先的に審査するTwitterのスピードが近年評価されている。
Dorsey氏が復帰してからTwiterは安定した成長を継続しているものの、収益拡大については引き続き投資家からの圧力を受けている。今年2月に、2023年の年間売上高を2020年から倍増させる野心的な成長戦略を発表、その柱である広告事業の強化策などを相次いで打ち出している。創業者のCEO退任で牽引力は弱まるが、事業運営という面でDorsey氏はその経営手腕が投資家から疑問視されることがあり、Agrawal氏のCEO就任で収益拡大策の実行力が高まると期待されている。29日のNYSE市場でTwitter株は一時的に約10%上昇し、その後下降している。
2007〜2008年のCEO在任を取締役会からの要請で退任したDorsey氏は、今回の退任について「私の決断であり、私の責任であることを全ての人に伝えたい」と述べている。会長に就任せず、Twitterから離れることについては、Twitterが創業者から引き継がれる時期を迎えたためとしており、それを円滑に進めるために影響力を残さないように退任する。
また、Agrawal氏を新CEOに選んだのは全てのTwitterユーザーのためだとしている。「このチームには大きな野心と可能性があります。考えてみてください。Parag(Agrawal氏)はTwitterに深い関心を持つエンジニアとしてここでスタートし、そんな彼が今ではCEOです。それ1つだけでも私は誇りに思います。Twitterと共に過ごし、何が必要かを知っているParagは、このエネルギーを最大限に活用できるでしょう」とDorsey氏は述べている。