日本語が母国語であれば、パソコンやスマートフォンで日本語入力を行っているだろう。ユニークで特異なこの入力システムには「ユーザー辞書」が用意されていることが多く、この機能を使って入力速度を引き上げるというライフハックが知られている。想像の翼を広げて、このライフハックをさらに推し進めて見たい。ユーザ辞書という本来の目的を超えた活用方法が得られるかもしれない。

日本語対応のキーボードは数千文字分の巨大サイズ?

日本語の表記にはひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、数字、記号などが使われる。どのくらいの数の文字が使われるのかは状況によって違うが、例えば「JIS X 0208 - 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合」で規定されているのが6,879文字、「JIS X 0213 - 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合」が11,233文字だ。結構多い。

ミニマムに考えても、平成22年内閣告示第2号の常用漢字が2,136文字だ。これにひらがな、カタカナ、数字、記号、アルファベット等々を加えて2,500文字くらい欲しい。これをキーボードで入力しようとした場合、シンプルに考えると、2,500個くらいキーがあればよいことになる。これは現実不可能な数だ。

2,500個くらいのキーによるダイレクト入力は不可能に近いので、パソコンやスマートフォンでは「日本語入力システム」と呼ばれる仕組みを使ってソフトウェア的に日本語を入力する方法が取られることが多い。特に、ひらがなを入力したあとに漢字や記号などが混じった文へ変換する「かな漢字変換システム」が使われるのが一般的だ(なお、それ以外の入力方法もある)。

現実を作る 「かな漢字変換システム」

日本で売っているパソコンであれば、キーボードからの入力にはアルファベットを使用する「ローマ字入力」か、ひらがなを使用する「かな入力」のどちらかが使われることが多い。

多くのケースで使われているのはローマ字入力だ。かな入力は覚えなければならないキーの数が多く、ブラインドタッチに到達するまでに訓練が必要だ。覚えるキーが少なく、比較的ブラインドタッチに到達しやすいローマ字入力が主流という状況だ。

このため、パソコンで一般的な日本語入力方法は、「アルファベットキーの打鍵」→「ローマ字」→「ひらがな」→「漢字・記号まじりの文」となる。変換ミスがあれば修正もする。直接アルファベットを入力するだけの英語などの自然言語と比べると、かなり複雑な入力方法のように見える。

しかし、である。かな漢字変換システムという、この特異でユニークな機能は、入力の高速化という点においてかなり魅力的なシステムでもあるのだ。変換というフェーズにカスタマイズを加えることで、直接入力では得ることが難しい高速入力が可能になる。

ライフハック「単語の登録」

かな漢字変換システムでは、ユーザーが自分の単語を登録する機能が用意されていることが多い。これはシステムが使っている辞書に登録されていない名詞や動詞を登録するというもので、かな漢字変換をスムーズに行うために提供されている。

人名、固有名詞、組織名、専門用語などは標準の辞書には記載されていないことも多い。こういった単語をあとから登録しておくと、かな漢字を変換する際にかな漢字変換システムがうまく変換してくれるようになる。

  • Windows 11 日本語IMEの単語登録

    Windows 11 日本語IMEの単語登録

この機能を利用して、単語ではなく、定型文や住所、メールアドレス、入力しにくい文字列などを登録するのがよく行われているライフハックだ。この方法は簡単であり、入力方法も通常のかな漢字変換の範囲内だし、ともかく便利だ。多かれ少なかれ、このライフハックを実施している方は多いのではないだろうか。