ビジネス文書とは、連絡事項を伝えるために形式的に作成された文書のこと。研修会や懇親会実施のお知らせをするもの、見積もりや企画書を送付する際に添付するものなどがあります。

しかしこれらのビジネス文書は、書き方ひとつで相手の印象が左右されてしまうもの。著しくマナーから外れたものでは、「あの人は仕事ができない」と思われて信頼を失いかねません。基本的なマナーはぜひ押さえておきたいものです。

本記事ではビジネス文書の書き方をご紹介テンプレートもあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

  • ビジネス文書とは

    ビジネス文書の基本ルールをくわしく紹介します

ビジネス文書とは

ビジネス文書とは、情報共有を目的に形式的に作成される文書のこと。普段はメールやチャットでやり取りをしていても、大勢の人に一度に情報を共有するにはやはり形式的な文書を作る必要があります。

ビジネス文書には以下のようなものがあります。
- 社内規定の変更など、全社員に連絡事項を通知するもの
- 転勤や昇進などの辞令を通知するもの
- 見積書や企画書などを送付する際に、同封するもの
- 会議や研修会、懇親会の開催を案内するもの
- 長期休暇を顧客にお知らせするもの など

主な目的

ビジネス文書を作成する目的は、一度に大勢の人へ通知すること、また通知したという証拠を残すことです。「言った、言わない」や日付の聞き間違いなどのトラブルを防ぎ、情報を正確に記録することにあります。

ビジネス文書の種類

ビジネス文書は大きく3つの種類に分けられます。
- 社内文書
社員に広く情報を伝えるもの。スムーズに伝えられるよう、簡潔なものが求められる。
- 社外文書
顧客に向けて作成するもの。季節の挨拶文や正しい敬語など、一定のマナーが求められる。
- 社交文書
お祝い、お見舞い、招待状など、顧客に向けて作成するもの。より格式ばったものが求められる。

  • ビジネス文書とは

    目的に合致した種類のビジネス文書を作成することが大切です

ビジネス文書の書き方

ビジネス文書は、社内文書でも社外文書でも、正確性はもとより読みやすさが大切です。すっきりと分かりやすいビジネス文書を作れば、相手からの信頼も得ることができるはず。

ここではビジネス文書の書き方の基本的なポイントを見ていきます。

まず結論を伝える

ビジネス文書は、まず結論から書き始めましょう。ビジネスシーンでは会話もそうですが、まず結論から先に述べることが大切です。忙しい時間のなか、人によってはさっと目を通すだけということもあるかもしれません。言いたいことを端的に伝えることができれば、先方からの返事も早急にもらえる可能性が高まります。

構成は「5W3H」

ビジネス文書は5W3Hを意識した構成にしましょう。作成後に各項目を見ていけばチェックがスムーズに行えて、必要な要素が漏れていないかも見つけやすくなります。

5W3H 項目
When (いつ) 日付、曜日、時間帯、期間
Who (誰が) 主催者、参加の対象となる人など
Where (どこで) 場所
What (何を) 用件
Why (なぜ) 目的、理由
How (どうやって) 手段
How many (いくつ) 数量
How much (いくら) 価格

一文は短くし、要件は絞る

端的に用件を伝えるために、文章は短くしましょう。一般的に読みやすい文章は、一文40~60字だとされています。一文に言いたいことをいろいろと盛り込むのではなく、一文につき言いたいことは1つに絞ると端的な文章になります。

ビジネス文書の書き方のコツと注意点

数字などを用いて具体的に

報告書などを作成する際には、主観ではなく客観的に書くことが求められます。例えば業績を伝える際は「前年より大幅アップ」とするのではなく「前年比20%増」などと数字を用いて、できるだけ簡潔に表現することが大切です。

言葉遣いは統一するのがルール

ビジネス文書の言葉遣いは統一するのが基本的なルール。文体が不統一の不格好なものでは信頼の喪失につながってしまいます。一般的には「ですます調」を用いるようにしましょう。

また、気を付けたいのが敬語です。使い方を誤ったビジネス文書は、文書そのものの信ぴょう性が低くなってしまいます。文書作成後にはできるだけ、尊敬語と謙譲語を正しく使えているか確認する時間をとるようにしましょう。

箇条書きと段落を上手に使う

端的に伝えるときに役立つのが、箇条書きと段落分けです。セミナーやイベントなどの案内では、日時や場所、内容などを箇条書きにすれば一見して分かりやすくなります。

また、文書の内容が多くなってしまうときは段落をいくつかに分けましょう。文字がぎっしり詰まった文書は、見ただけで読む気が失せてしまいます。内容によって文章をまとめることで、理解度は一気に高まります。

A4用紙1枚にまとめる

ビジネス文書は、できるだけA4用紙1枚におさまるようにしましょう。スペースが限られることで内容もぐっとコンパクトになりますし、読み手としても忙しい時間のなかでざっと目を通すのにちょうどいい情報量になります。万が一、2枚以上になる場合には通し番号を忘れずに振りましょう。

読み手の立場で見返すのもマナー

忙しいときにこの文書を受け取ったらどう思うか、大切な情報を見つけやすいかなど、読み手の立場になって文書を見返すことも大切です。また、専門用語を使っても意味が通じるかどうかなど、読み手の知識についても考慮する必要があります。

  • ビジネス文書の書き方

    ポイントを踏まえれば読みやすく簡潔なビジネス文書が作成できるはずです

ビジネス文書のテンプレート

ビジネス文書は形式的なものが多いので、テンプレート(ひな形)に沿って作成するとよいでしょう。ここでは社内文書と社外文書のテンプレートを紹介します。

社内文書

社内文書は事務連絡が主なので、シンプルかつ端的な書き方が求められます。

  • ビジネス文書の構成

    ビジネス文書のテンプレート1

1.文書番号
「総務部第59号」など、発信する部署名と通し番号を付ければ管理がしやすくなりますが、必要のない場合もあります。会社の規定に沿いましょう。

2.発信日
ビジネス文書では発信日が不可欠です。元号を使うのが一般的とされていますが、決まったルールはありません。社内の規定に沿って和暦または西暦、月日の順番に記しましょう。

3.あて先(対象者)
複数の社員が対象なら「社員各位」と記します。個人宛の場合は「部署名」「役職名」「氏名」の順に書きます。役職はくれぐれも間違わないように注意が必要です。

4.発信者(差出人)
「部署名」「氏名」の順に書きます。必要に応じて電話番号やメールアドレスを記載しておけば、問い合わせがある時もスムーズに応対できます。

5.件名、本文、記書き
「セミナー開催のご案内」「書類送付のお知らせ」など、わかりやすい件名を中央揃えで記します。
その下に本文を書きます。「下記のとおりセミナーを実施しますので、対象者は必ず受講してください」など、できるだけ簡潔にすることが大切です。
本文の下には中央揃えで「記」として、日時や場所、会費などの費用を箇条書きにして記します。

6.補足事項
補足事項がある場合はここに記します。「なお、欠席の場合は▲月▲日までに●●へ申し出てください」などの形式で書きましょう。

7.締めくくりの「以上」
共有事項はここまでという目印の「以上」を付けましょう。文書はここで終わることが読み手へも伝わりやすくなります。

8.担当者(発信者と違う場合)
文書の発信者と、文書に書かれた内容の担当者が違うことはよくあります。最後に、担当者の部署名、名前、電話番号やメールアドレスなどを記載しておきましょう。問い合わせ対応もスムーズになります。

社外文書

社外文書は内容に不備がないか、敬語に誤りがないかを念入りにチェックしましょう。

  • ビジネス文書の構成

    ビジネス文書のテンプレート2

1.発信日
表記は和歴または西暦で書きましょう。

2.あて先(対象者)
個人宛の場合は「会社名」「部署名」「役職名」「氏名」の順とし、最後に敬称をつけます。会社名は「株式会社」が前に付くのか後に付くのかなどを間違えないようにします。相手が個人に特定されない場合は「お客様各位」「株式会社●●御中」などとします。

3.発信者(差出人)
「会社名」「部署名」「氏名」の順に記載します。必要に応じて、社印を押印したり、会社の所在地や電話番号、メールアドレスなどを書いたりします。

4.件名、本文、記書き
本文は「前文」「主文」「末文」の順に書いていきます。

  • 前文
    「拝啓」「前略」などの「頭語」から始め、「時候の挨拶」「感謝の挨拶」と続けます。なお、「頭語」には必ず末文に「結語」が必要となります。具体的な例文は次の章でお伝えします。
  • 主文
    「さて、このたび新商品発表会を開催することとなりました。」のように用件を簡潔にまとめます。
  • 末文
    「拝啓」には「敬具」、「前略」には「草々」などの「結語」を右詰めにします。

5.記書き
開催日時や会場の案内などを箇条書きにして明記します。最後に「以上」と右詰めで表記します。

  • ビジネス文書の構成

    テンプレートを参考にすれば誰でもビジネス文書は作成できます

ビジネス文書に役立つ例文

社外文書の書き出しには、簡単とはいえ「時候の挨拶」や「感謝の挨拶」が必要となります。ここではその代表的な例をご紹介します。

ビジネス文書の挨拶文

挨拶文は定型句のものが多いので、覚えておくと便利です。

・時候の挨拶の例
「陽春の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。」
「晩夏の候、皆様におかれましてはますますご清祥のことと存じます。」

・感謝の挨拶の例
「平素は格別のご高配を賜りまして、心よりお礼申し上げます。」
「ひとかたならぬご厚意に、厚く御礼申し上げます。」

ビジネス文書の結び

前述したとおり、頭語にはかならず結語が必要になります。

・拝啓/敬具
・前略/草々
・謹啓/敬具 など

こちらも、パターンを覚えておくとよいでしょう。

  • ビジネス文書とビジネスメールの違い

    書き出しの定型句は覚えておくと便利です

ビジネス文書は正確に、端的に

ビジネス文書は、忙しくしている読み手にいかに正確に情報を伝えられるかが重要です。だらだらと回りくどく書いていると、読んでもらえず情報が正確に共有されません。

正確に、端的に作成するためのポイントをいくつかご紹介しましたが、テンプレートを使ってしまうのも手です。そして作成後には念入りに内容をチェックしましょう。とくに会社名や役職名、名前などの間違いは絶対に避けたいもの。

今回ご紹介した時候の挨拶などは、ビジネスメールでも活用できます。この機会に覚えて、ビジネスパーソンとしての知識を備えましょう。